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おまけの話
おまけの話 サアラ
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料理長の娘クローディリアはシャノアの王子ヨークラウデンに見初められ、王子の即位後、王妃となった。平民の彼女が簡単に王妃になれるわけもなく、当然周囲の反対があり、愛人にとか、側室の末席にとか王子は説得されても、これだけは譲らなかった。
クローディリアを正室として迎える条件として、有力貴族の娘を側室に持つことを、宰相は身命を賭してでも飲んでいただきますと詰め寄り、ヨークラウデンに認めさせた。
魔力第一主義のこの国で、シャノア中で一番魔力を持つ次代の王ヨークラウデンに力で敵うものはいない。だが、ヨークは穏やかな気性で、争いを好まず、無理を押すと俺を残して雲隠れしてしまうだろう。いや、実際何度か出奔したのだ。探し出して説教して……泣かれるともう、敵わない………
体裁を整えるためにクローディリアはソウジュ家の養女となり、婚姻を結ぶ。
側室と枕を交わすのは気が進まない様だったが、宰相との約束と、貴族の娘の初夜の見届け役として娘の兄が側に控えていたので、誤魔化すことも出来なかったらしい。義理の兄の前で……なんて………うわぁ……ヨークに同情したよ。俺だったら出来ねえわ。王子じゃなくて良かったと思ったわ。あ、クローディリアの見届けはなかったよ。ヨークが絶対に許さなかったからからね。それに、そんな事したら、うちの料理長が黙っていないからね。
一方的にクローディリアをライバル視し、ヨークに気に入られようとがんばる側室ちゃんは、クローディリアより先に子を成したくて、あの手この手で頑張っていた。まあ、見ていてちょっと可哀想だったね。だって、クローディリアとヨークはお互いに愛し合っているのが周りにもよくわかったからね。だからといって、俺にも粉かけてくる側室ちゃんにはまいったよ。
クローディリアの懐妊。ほぼ同じ頃の側室ちゃんの懐妊。いやぁ、ヨークも側室ちゃんと、やることやっていたんだね~と思ったわ。クローディリアは気にしていないのかな?
予言のことは、聞いたことあったよ。でも、百年も昔の事で、もう誰も気にしていないと思っていた。神殿長がそれを言い始めるまでは。月の無い夜?なにそれって、思ったわ。
王妃の奇行が伝わったのは、ソウジュ家に戻っていた時。産み月に入り、万全の体制で出産するはずだったが、死産のショックで王子の亡骸と共に王宮の塔にこもったと連絡が入った。急いで城に向かう。近寄ったら飛び降りると叫ぶ王妃の説得を引き受けた。遠くから話掛けつつ、ゆっくり近づく。なんとか、俺だけ入る事を許可してもらう。窓から見える姿は遠目にもわかる意思のある瞳。すでに侍女が一人、身の回りを任され塔に入っている。彼女が扉を開け俺を中に入れた。
彼女の話は驚くものだった。秘密にするよう約束させられ、すべてを聞き終えた時クロードのこの先を考え、胸が痛かった。
クローディリアに双子の姉がいると話には聞いていた。だが、彼女が強大な魔力ゆえ隣国に逃れていたとは、他にも同じように魔力無しの者も隣国で暮らしているとは、知らなかった。昔から、両国境の村で助けあっていたとは……
説明を終え、放心状態のふりをした王妃を連れて、ぐるぐるに布を巻いた塊を王子の亡骸と見せかけて俺が抱え、塔を出る。ヨークには本当の事を打ち明けたが表向きは、王子は死産、クローディリアは心神耗弱のため、王妃を降りて王宮を出た事になった。静かな湖の側の屋敷にクローディリアは移り、王の情けで側室の肩書きは残されたことにして、その後登城することもなく、ゆっくり過ごしている。まあ、俺とこっそり入れ替わって、変装したヨークが彼女の元を訪れているがな……だが、子を再び授かるとは……絶対秘密なんだけどな!
原因不明の病でヨークが倒れた。第一王子のカンデの成人が近く、成人の儀と時を同じくし、即位した。当時の俺は知らなかったが、彼は王になるとすぐに、裏でクロードを探すように指示していた。なぜ、クロードの存在を知っていたのか不明だが、父を治す薬師はおらず、伝え聞いたクロードの治癒の力に希望を託したのだろう。
神殿の関係者が不穏な行動をしている。あの、クローディリアの出産前に忘れ去られていた予言を持ち出したのは神殿長であった。流言飛語を広め、不安を煽り、結果的に死産であったことは僥倖であるような口ぶりで、後に真相を知った俺は腸が煮えくり返ったぞ。……その神殿の関係者が、隣国にいるクロードを狙った。複数で大気に渦を起こす大魔術だったそうだ。事前に国境近くの神殿で待ち伏せしていた信者達を捕縛し、騎士団はクロードを助ける手筈であったが、その前に自力で渦から脱出し、クロードは護衛とともに王都へ向かう。
王都で治癒の力を使う技を練習し、ヨークは小康状態に。既に王位は退いているため、静養先は山の連なる辺鄙な場所が選ばれた。しかし、美しい湖があり、過去に王族の保養地として使われたこともあり、観光地としても名を知られている。ヨークは少人数の従者と護衛を連れて、辺り一帯を治める若き辺境伯の、大きな屋敷へ向かった。
一方、カンデ王はクロードにシャノア国内で王族として、統治に携わる仕事をしないか?と提案した。だが彼は生まれ育った国に友人と共に帰りたいと言った。そこで、クロードの希望と国交を結ぶ両得の、隣国の姫との縁談を進める。クロードにしても、正式に話を進めることによって、王女に釣り合う身分を手に入れる事ができるという訳だ。
時々、ソウジュ家に、クレッセリアが訪ねて来る。初めて顔を合わせた時、てっきりクローディリアが戻って来たと思った。今回は、彼女の娘に男の子が産まれたそうで父親に報告に来たんだと。しばらく滞在しても、いいかと聞かれて、承諾する。そうだな、料理長に長期休暇を提案しよう。孫の顔を見に行きたいだろうからな。……俺も一緒に行ってみるかな……観光もいいな、彼女に案内してもらって……娘の父親がどんな奴かも気になるし………彼女は結婚はしていない。独り身だと言っていたから。俺も……ちょっと頑張ってみようか。
クローディリアを正室として迎える条件として、有力貴族の娘を側室に持つことを、宰相は身命を賭してでも飲んでいただきますと詰め寄り、ヨークラウデンに認めさせた。
魔力第一主義のこの国で、シャノア中で一番魔力を持つ次代の王ヨークラウデンに力で敵うものはいない。だが、ヨークは穏やかな気性で、争いを好まず、無理を押すと俺を残して雲隠れしてしまうだろう。いや、実際何度か出奔したのだ。探し出して説教して……泣かれるともう、敵わない………
体裁を整えるためにクローディリアはソウジュ家の養女となり、婚姻を結ぶ。
側室と枕を交わすのは気が進まない様だったが、宰相との約束と、貴族の娘の初夜の見届け役として娘の兄が側に控えていたので、誤魔化すことも出来なかったらしい。義理の兄の前で……なんて………うわぁ……ヨークに同情したよ。俺だったら出来ねえわ。王子じゃなくて良かったと思ったわ。あ、クローディリアの見届けはなかったよ。ヨークが絶対に許さなかったからからね。それに、そんな事したら、うちの料理長が黙っていないからね。
一方的にクローディリアをライバル視し、ヨークに気に入られようとがんばる側室ちゃんは、クローディリアより先に子を成したくて、あの手この手で頑張っていた。まあ、見ていてちょっと可哀想だったね。だって、クローディリアとヨークはお互いに愛し合っているのが周りにもよくわかったからね。だからといって、俺にも粉かけてくる側室ちゃんにはまいったよ。
クローディリアの懐妊。ほぼ同じ頃の側室ちゃんの懐妊。いやぁ、ヨークも側室ちゃんと、やることやっていたんだね~と思ったわ。クローディリアは気にしていないのかな?
予言のことは、聞いたことあったよ。でも、百年も昔の事で、もう誰も気にしていないと思っていた。神殿長がそれを言い始めるまでは。月の無い夜?なにそれって、思ったわ。
王妃の奇行が伝わったのは、ソウジュ家に戻っていた時。産み月に入り、万全の体制で出産するはずだったが、死産のショックで王子の亡骸と共に王宮の塔にこもったと連絡が入った。急いで城に向かう。近寄ったら飛び降りると叫ぶ王妃の説得を引き受けた。遠くから話掛けつつ、ゆっくり近づく。なんとか、俺だけ入る事を許可してもらう。窓から見える姿は遠目にもわかる意思のある瞳。すでに侍女が一人、身の回りを任され塔に入っている。彼女が扉を開け俺を中に入れた。
彼女の話は驚くものだった。秘密にするよう約束させられ、すべてを聞き終えた時クロードのこの先を考え、胸が痛かった。
クローディリアに双子の姉がいると話には聞いていた。だが、彼女が強大な魔力ゆえ隣国に逃れていたとは、他にも同じように魔力無しの者も隣国で暮らしているとは、知らなかった。昔から、両国境の村で助けあっていたとは……
説明を終え、放心状態のふりをした王妃を連れて、ぐるぐるに布を巻いた塊を王子の亡骸と見せかけて俺が抱え、塔を出る。ヨークには本当の事を打ち明けたが表向きは、王子は死産、クローディリアは心神耗弱のため、王妃を降りて王宮を出た事になった。静かな湖の側の屋敷にクローディリアは移り、王の情けで側室の肩書きは残されたことにして、その後登城することもなく、ゆっくり過ごしている。まあ、俺とこっそり入れ替わって、変装したヨークが彼女の元を訪れているがな……だが、子を再び授かるとは……絶対秘密なんだけどな!
原因不明の病でヨークが倒れた。第一王子のカンデの成人が近く、成人の儀と時を同じくし、即位した。当時の俺は知らなかったが、彼は王になるとすぐに、裏でクロードを探すように指示していた。なぜ、クロードの存在を知っていたのか不明だが、父を治す薬師はおらず、伝え聞いたクロードの治癒の力に希望を託したのだろう。
神殿の関係者が不穏な行動をしている。あの、クローディリアの出産前に忘れ去られていた予言を持ち出したのは神殿長であった。流言飛語を広め、不安を煽り、結果的に死産であったことは僥倖であるような口ぶりで、後に真相を知った俺は腸が煮えくり返ったぞ。……その神殿の関係者が、隣国にいるクロードを狙った。複数で大気に渦を起こす大魔術だったそうだ。事前に国境近くの神殿で待ち伏せしていた信者達を捕縛し、騎士団はクロードを助ける手筈であったが、その前に自力で渦から脱出し、クロードは護衛とともに王都へ向かう。
王都で治癒の力を使う技を練習し、ヨークは小康状態に。既に王位は退いているため、静養先は山の連なる辺鄙な場所が選ばれた。しかし、美しい湖があり、過去に王族の保養地として使われたこともあり、観光地としても名を知られている。ヨークは少人数の従者と護衛を連れて、辺り一帯を治める若き辺境伯の、大きな屋敷へ向かった。
一方、カンデ王はクロードにシャノア国内で王族として、統治に携わる仕事をしないか?と提案した。だが彼は生まれ育った国に友人と共に帰りたいと言った。そこで、クロードの希望と国交を結ぶ両得の、隣国の姫との縁談を進める。クロードにしても、正式に話を進めることによって、王女に釣り合う身分を手に入れる事ができるという訳だ。
時々、ソウジュ家に、クレッセリアが訪ねて来る。初めて顔を合わせた時、てっきりクローディリアが戻って来たと思った。今回は、彼女の娘に男の子が産まれたそうで父親に報告に来たんだと。しばらく滞在しても、いいかと聞かれて、承諾する。そうだな、料理長に長期休暇を提案しよう。孫の顔を見に行きたいだろうからな。……俺も一緒に行ってみるかな……観光もいいな、彼女に案内してもらって……娘の父親がどんな奴かも気になるし………彼女は結婚はしていない。独り身だと言っていたから。俺も……ちょっと頑張ってみようか。
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