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13、先輩のお仕置き
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真夜中に到着したのは、とある館だった。造りは立派だが古いものらしく、背後には森がある。周囲に人が住んでいる気配はなく、保養のために貴族がいくつか持っている建物の一つである雰囲気だった。
「ここは……」
「父から私が与えられた館の一つだ」
腕をつかまれ、俺は建物の中へと連れて行かれる。いまだにどういう状況なのかわからず、目を白黒させた。
使用人の数は少ないらしく、出迎えたのは執事らしき男が一人だけだった。エリックは俺をつかんだまま、廊下をずんずんと進んでいく。
「あの、エリック様。これは一体……」
無言で引っ張られ、部屋にたどり着くとその中に入る。殺風景だが室内は掃除が行き届いていて清潔だった。
エリックは部屋のドアをしめると鍵をかけ、縛っていた縄をとく。そして、俺をベッドへと突き飛ばした。足に力が入らない俺は、あっさりベッドに倒れ込む。
目を丸くしている俺に、エリックは言い放った。
「何を企んでいるかわからない以上、お前を自由にするわけにはいかない。しばらくお前にはここで生活してもらおう」
説明を聞いても、意味が全くわからない。
俺の挙動が怪しかったとして、どうしてエリックが俺を館に閉じこめようとするんだ? 普通は誰かに託さないか?
「何を仰っているのだか、わかりませんが……」
素直に言うと、睨まれる。
「隠していることを、みんな吐けと言っている」
「何も隠してなどいません」
エリックに正直に言うわけにはいかないのだ。彼を巻き込みたくはない。俺は肘をついて上体を起こした体勢のまま、そっぽを向いた。
「殺した男は何者だ?」
「何の話でしょうか」
「ロイド殿下に関係のあることか?」
「…………」
「ここ数ヶ月大金を稼いで人を雇っているようだが、何のためだ?」
「…………」
なるほど、エリックも俺を怪しんであれこれ調べていたらしい。これは下手なことを言わない方がよさそうだ。俺はだんまりを決め込むことにした。
他にもいろいろ訪ねられたが、俺は目も合わせずに無言を貫いた。
「どうしても言わない気か」
これも無視。
すると、エリックが近づいてきて、俺を見下ろした。
「では、言いたくなるようにしてやろう」
言うなりのしかかってきたので、反射的に身を引いた。殴られるのだろうか。不審な行動を続ける俺は、エリックから見れば要注意人物だろう。
俺が逆の立場だって、苛つくかもしれない。ロイド王子の身を思いやるエリックが手段を選ばなくても当然だ。
暴力も甘んじて受け入れる。ただし、正直に話すつもりはない。
目をつぶって奥歯を噛みしめた。
が、拳が飛んでくることはなかった。代わりに、唇に柔らかいものが押し当てられる。
目を開いてみると、間近にエリックの顔があった。唇にあたっていたのは、彼の唇だった。
「………………は?」
顔を離したエリックは無表情で、俺の下にはいているものに手をかけた。下着も一緒に、一気に引き下げようとする。
ふてぶてしい態度をとっていた俺だったが、予想外のエリックの行動に慌てふためいてそれを阻止しようとした。
「ま、待ってください! 何を……」
「興味のない相手に抱かれるのは、屈辱だろう?」
エリックは冷ややかな笑みを浮かべていて、これから始まる行為の意味を悟った俺は唖然とした。
エリック様が、俺を抱こうとしている? ってこと?
いや、その前に、俺、今、キスした?
口をぱくぱくさせている俺の反応を、エリックの方はどう受け取ったのだろうか。
「お仕置きが必要だ」
きっと、今の俺は顔を真っ赤にしているだろう。
これは夢に決まっている。お仕置きどころか、俺にとってはご褒美みたいなものだ。エリックにいつか抱かれたいと願っていて、しかし叶うはずのなかった夢。
精神的に追いつめられすぎて、どこかで倒れて見ている夢なんだ、これは。
エリックがこんなことを言うはずがないし、こんなことをするわけがない。
両手をシーツに縫いとめられ、深い口づけが繰り返された。
(嘘だ、嘘だ。こんなに俺にとって、都合の良いことがあるはずがない)
エリックは容赦なく俺の服をはぎとっていった。裸体がさらされ、冷えた室内の空気を感じて身震いしそうになる。
「考え直してください、エリック様」
「お前に指図する権利があると思うのか?」
エリックはいつの間にか小さなケースを取り出していた。軟膏などを入れるような容器で、指ですくったものは交接用の潤滑油のようだ。俺にとっては見慣れたアイテムであり、体温で溶かして柔らかくしている。
「や、やめた方がいいですよ。あなたの体面に関わります。俺みたいなろくでなしと体の関係を持ったなんて知られたら、周りからどう思われるか……」
「ここには私とお前、そして忠実な使用人しかいない。外にこのことが漏れる心配はない」
いや、そうかもしれないけど。
汚いだろ、俺は。男とヤリまくってる汚らわしい俺に、罰だとしても、こんなことするのはどうかしている。
「鞭で叩くとか、他にもいろいろやりようがあるでしょう」
「私に犯されるよりは、鞭で叩かれる方がましだと言うことか」
エリックが笑うが、そういうことではない。俺にとってマイナスにならないんだから意味がないと教えたいのだが、伝わらないようだ。
「ねえ、待って! これじゃ、あなたが汚れる……!」
「黙れ。私を侮辱したことを後悔するがいい」
「待っ……、ひっ!」
後孔に指を突っ込み、エリックがそこをほぐし始めた。慣れているから、別にいきなり本番で突っ込まれても大して痛くもないんだが。
あこがれのエリックに体内をいじられてると認識しただけで、俺の興奮は高まっていった。期待に体がわかりやすいほど反応するから、それを隠したくて足を閉じようとする。だがエリックに止められた。
(セックス下手そうとか言ったから、気にさわったのか? あれで怒ってるのか?)
エリックにしては、つまらないことを根に持つものだ。
「ごめんなさい、ごめんなさいエリック様……! 謝りますから、お願いだからやめて……!」
しかし懇願は無視され、エリックは自分のものを俺の後孔にあてた。ゆるいそこは、すぐに先端をのみこんでいく。
「ぃ、……ぁあ、や……」
半分ほどが埋まった。エリックが腰を引き、また攻める。今度は先ほどよりも奥へ進み、それが繰り返されていく。
(やだ、やだ、やだやだやだ。エリック様が俺のせいで汚くなる!)
逃げなくてはと思うのだが、体に力が入らない。快感のために鳥肌が立ち、激しくなっていく快楽に溺れそうになった。
最悪だ、最高だ。ずっとこうされたかったという夢が叶って、体は喜びに震え、エリックに与えられるものを堪能している。
「許すと思うか? ジュリアン。絶対にここから逃がさないぞ。嫌というほどお前を犯してやる」
「あっ、あっ、んん、っぅ、やっ、やぁ、ああぁあッッ!」
今まで嫌々誰かに体を提供していた時は、セックスなんて、まあこんなもんかと思っていた。大して感じないのだが、よがるふりをしないと相手が不機嫌になる。だから頑張って喘いでいた。
だが、今は自然と声が出た。
好きな人に抱かれると、こんなに気持ちが良いんだ。
「ジュリアン」
「あんっ、ぁ、うあっぁ、ん、いっ、ふぁっ、エ、エリック様……!」
息を切らしながら、エリックも俺の名前を呼ぶ。気持ちが良すぎて意識が飛びそうになった。
しっとりとした皮膚が密着して、熱を感じる。ぐじゅぐじゅと背徳的な水音に鼓膜まで犯されている気分だ。
エリックが俺の中にいる。俺のために彼が勃起している。嬉しい。もっと、もっと激しく突いてほしい。
頬をつかんで俺と目を合わせると、目をぎらつかせながらエリックは吐き捨てた。
「一体何人の男とこうしたのだ? この淫売め!」
「あっあぁああぁあッッ!!!」
罵られた瞬間に、達してしまった。ガクガクと腰が動く。
(俺、やっぱり酷いマゾかもしれない……)
頭の片隅でそう思いながら脱力した。手から顔を離したエリックも射精をして、しばらく互いの激しい呼吸の音だけが響いていた。
部屋の照明は燭台にともった光だけなので、とても薄暗い。エリックがどのような表情をしているのかはわからなかった。
品行方正なエリックから浴びせられる下品な言葉は非常に刺激的で、快感が倍増する。俺は余韻に浸っていたが、エリックは再び行為を始めた。
エリックにお仕置きされながら、俺は思う。
こんなことがあっていいのだろうか。良い意味で。
二人きりで、エリックに夜通し抱かれる。どれだけ望んでも妄想で済ませるしかなかったことが、今こうして現実となっていた。
もっと嫌がった方がいいとはわかりつつ、嘘はつけなくて、ただ俺は存分に嬌声を響かせるだけだった。
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