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盗賊さん
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ようやくバスクに到着しました。
なんか故郷のトリディアより寒い気がする。
ここに来るまでに、サバストから約一月半……ぐらい?
ここのところメチャクチャ健康的な生活をしています。
髪を売ったお金はあまり減っていません。
ここに来るまでに出会ったジョンさん達に、大変お世話になって、お金を使わずとも、三度のご飯もちゃんと食べてます。
まあお世話になりっぱなしも辛いので、それなりにお手伝いをしていますが。
おかげで今まで細かった食もだいぶ回復してきて、今ではほぼ一人前食べれるようになってきました。
ジョンさんに会う前も、トリディアにいるよりは健康的でしたよ。
朝日が昇れば起きて、朝ごはん食べて歩いて、太陽が真上に来れば、昼ご飯にして、歩いて、日が暮れれば宿に入るか野宿の支度して、夕飯食べてから寝る。
すごくない?
夜更けの内職も無く、遠くを見ながら歩いたおかげか、視力もある程度回復してきて、今はあまり眼鏡に頼らずとも平気な状態。
それを思うと、今までどれだけ不摂生してたの、私。
まあ、あの時はしょうが無かったんだけどね。
そんなこんなで体には少しお肉も付いてきましたし、心なしかお肌もつやつやになりました。
んで、ここに来るまでに、5度ほど危ない目にあいました。
これについては自分の甘さをかなり反省した。
3回盗賊さんに遭遇して、1回谷に落ちて溺れました。
それから魔物の群れに襲われたわぁ。
よく無事だったな私、と言うか、回避は全て人任せだったけれど。
後々聞けば、女一人ではサバストからバスクまで行かないそうです。
行くとしたら護衛を雇うのが当たり前なんだって。
最初に捕まった盗賊さんには”ガリガリのガキだから奴隷にしか使い道がなさそうだが、長持ちしねえだろうな”と言われつつ、売り飛ばされそうになりました。
でも私の境遇を話したら、同情されてお小遣いまでもらって、頑張れよって送り出してくれました。
この頃は、外見的にまだかなり悲惨な外見だったから、きっと同情を引いたのだろうな。
家が貧乏で小さい頃から仕事(内職)をして、家族の面倒(食事の支度とか)も見てきた。
そしてある日、地位の有る年上の人に目をつられて、それが嫌で逃げ出してきた。
細かい事は端折っているが、私は嘘は言っていない。
2度目の盗賊さんも、同じく境遇に同情されたけど、どういう訳かすごく気に入られたようだ。
お頭さんは30歳目前の、お髭のイケメン、ジョンさんです。
攫われて1日目は、ジョンさん私の近くに寄りもしなかったくせに、2日目の朝から、やたら世話を焼いてくれた。
「お前、面倒見てやるから俺たちの仲間になれよ」
太陽は真上、今は皆でお昼ご飯を食べています。
「いや無理ですよ。私、体力ないし、強くないから」
「大丈夫だ、俺が守ってやる」
「でもそれだと、私は足手まといになります。迷惑かけます」
「大丈夫、それも可愛いから」
可愛い?まあそう言われると、女の子は皆とても嬉しいものです。
でも、それって盗賊さん達の邪魔になる事は確定だよ、絶対迷惑かけるわ。
「お前は黙って俺の隣にいるだけでいいんだ。飢えさせもしないし俺が命に代えても守る。欲しいものはなんだってやるよ。俺はお前のためなら何だってしてやる」
命に代えてって、そんな事させる訳にはいかないです!
「お頭~、こんな所でなに口説いてるんですか。やるならもっとロマンチックな所で、そのむさ苦しい髭も剃って、花の1本でもプレゼントしながらやらなきゃダメですって」
周りの皆が楽しそうにはやし立ててる。
口説く?そうなの?ないない、無いわ~。
私に、そんな事しようなんて人いる訳ないわー。
で、二度目の夜です。
大勢の男の人ばかりで、私一人で寝る部屋なんて無いから、夕べはおじさん達と、ごろ寝だった。
でも今夜は何故かお頭さんと一緒の部屋で寝る事になってしまった。
いつの間にか髭もさっぱり剃って、イケメン度の増したジョンさんが、やたら仲間になれと説得してくる。
でも私も負けません。
私にはしなければならない事が有るし、家族もいる。
いずれ家族の元に戻って、ひっ迫している経済状況を、助けなければならないのだと。
それを主張すると、ジョンさんは暫く考え込んでいたけど、何となく納得してくれたような気がする。
「分かった、俺もお前の気持ちに沿えるよう、色々考えてみる」
良かった、分かってくれましたか。
それからは一緒にベッドに転がって眠ろうとしたけれど、ジョンさんは飽きもせず、また盗賊の仲間への勧誘を始める。
私を離したくないとか、危ない目には絶対に合わせないとか、毎晩こうしていたいとか?
その間何度もお休みのキスをしてくる。(ご挨拶のキスは、我が家では定番です)
「ジョンさん、私は(アルバイト以外の定職に就くのは)初めてだから、もう少し時間をくれませんか?」
こんなに良くしてくれるジョンさんに、私ももう少し歩み寄ってもいいのではないか、だから私もいい方法が無いか考えてみよう。
そう思って声を掛けた。
するとジョンさんはそれを分かってくれたのか、優しく微笑んで額に最後のお休みのキスをし、隣で寝息を立て始めた。
「ジョンさんは仕事をしなくていいからここにいろって言うけれど、それって私の主義に反するのよね…」
家族、仲間は助け合うもの、自分一人が楽をする訳にはいかないじゃない。
みんな私にかなり同情してくれてるけど、甘える訳にはいかないし、やっぱり迷惑を掛る事になる。
それに考えてみれば、盗賊って泥棒さん?悪い事をしている人だよね。
それって、小さい頃から悪い事はしてはいけませんと言われ、育ってきた私の信念に反するわぁ、無理だわぁ。
それでも横になったまま色々考えてみる。
私は悪い事は嫌いだ。
でも、とても良くしてくれるジョンさん達の事はちょっと…だいぶ好きな気がする。
だから私がジョンさん達のお仕事は目をつむり、盗賊さんになったとしても、私に何が出来るのだろう。
ご飯を作るのは、ルーベンスさんの仕事だと言われ、私が手を出す事が出来なかった。
あと私に出来る事は、川で洗濯したり、山菜取ったりマキを拾いに行ったり?
でも一人でこの森をうろついたらだめだと禁止されたし、ならば他に何が出来る?私はどうすればいいの!?
ジョンさん達と一緒に強奪活動は絶対に無理だし、このままじゃぁ私って、ただ飯ぐらいのお荷物だよね。
そんな負担になるような私って、ジョンさんにとっては必要ない存在じゃん。
要らないじゃん。
そう考え着いた私は、また黙って立ち去った方がいいと言う考えに至った。
『ジョンさん、皆さん、大変お世話になりました。やはり私がいると皆さんの足手まといになります。私は一人でも大丈夫です。どうか皆様で仲良く幸せに暮らしてください。陰ながらお祈りします。短い間でしたが、本当にありがとうございました。追伸、私が言うのも何ですが、やはり人生は真っ当な生活をして、悔いの無い生き方をした方がいいと思います。出しゃばった事を言ってごめんなさい』
月明かりで何とか書いた書置きを残して。
「よし!」
私はそっとリュックを背負い、極力音をたてないように逃げ出した。
夜の山道は暗くて危ない。
それでも気が付かれないにうちに、何とか距離を稼がなければ。
様々な岩が転がる道だけど、私は走るように急ぐ。
ふと水の音に気が付き、音のするの方に目をやった。
「あれ、いつの間にか川がある」
なんて気を取られたのが悪かったのだろう。
足元の石に足を取られ、バランスを崩してしまった。
「キャアアァーーー!!!」
私は見事に坂を転がり落ち、川へとザブンッ、そして勢いのまま流されていく。
幸いな事に川は深く、物理的に底に叩き付けられなかったのは幸運だろう。
だけどそれ以外は全て不運だ!
流れが急で息をする事もままならない、苦しい、死ぬ!このままじゃ本当に死んじゃう!
もがき、足掻き、何かを掴もうと手を伸ばすも、流れにそれすらも拒まれた。
息もろくに出来ない中、やがて目の前にまばゆい光が散らばり、一人の輪郭が浮かぶ。
あぁ天使様かな…私死んじゃうのかな………。
なんか故郷のトリディアより寒い気がする。
ここに来るまでに、サバストから約一月半……ぐらい?
ここのところメチャクチャ健康的な生活をしています。
髪を売ったお金はあまり減っていません。
ここに来るまでに出会ったジョンさん達に、大変お世話になって、お金を使わずとも、三度のご飯もちゃんと食べてます。
まあお世話になりっぱなしも辛いので、それなりにお手伝いをしていますが。
おかげで今まで細かった食もだいぶ回復してきて、今ではほぼ一人前食べれるようになってきました。
ジョンさんに会う前も、トリディアにいるよりは健康的でしたよ。
朝日が昇れば起きて、朝ごはん食べて歩いて、太陽が真上に来れば、昼ご飯にして、歩いて、日が暮れれば宿に入るか野宿の支度して、夕飯食べてから寝る。
すごくない?
夜更けの内職も無く、遠くを見ながら歩いたおかげか、視力もある程度回復してきて、今はあまり眼鏡に頼らずとも平気な状態。
それを思うと、今までどれだけ不摂生してたの、私。
まあ、あの時はしょうが無かったんだけどね。
そんなこんなで体には少しお肉も付いてきましたし、心なしかお肌もつやつやになりました。
んで、ここに来るまでに、5度ほど危ない目にあいました。
これについては自分の甘さをかなり反省した。
3回盗賊さんに遭遇して、1回谷に落ちて溺れました。
それから魔物の群れに襲われたわぁ。
よく無事だったな私、と言うか、回避は全て人任せだったけれど。
後々聞けば、女一人ではサバストからバスクまで行かないそうです。
行くとしたら護衛を雇うのが当たり前なんだって。
最初に捕まった盗賊さんには”ガリガリのガキだから奴隷にしか使い道がなさそうだが、長持ちしねえだろうな”と言われつつ、売り飛ばされそうになりました。
でも私の境遇を話したら、同情されてお小遣いまでもらって、頑張れよって送り出してくれました。
この頃は、外見的にまだかなり悲惨な外見だったから、きっと同情を引いたのだろうな。
家が貧乏で小さい頃から仕事(内職)をして、家族の面倒(食事の支度とか)も見てきた。
そしてある日、地位の有る年上の人に目をつられて、それが嫌で逃げ出してきた。
細かい事は端折っているが、私は嘘は言っていない。
2度目の盗賊さんも、同じく境遇に同情されたけど、どういう訳かすごく気に入られたようだ。
お頭さんは30歳目前の、お髭のイケメン、ジョンさんです。
攫われて1日目は、ジョンさん私の近くに寄りもしなかったくせに、2日目の朝から、やたら世話を焼いてくれた。
「お前、面倒見てやるから俺たちの仲間になれよ」
太陽は真上、今は皆でお昼ご飯を食べています。
「いや無理ですよ。私、体力ないし、強くないから」
「大丈夫だ、俺が守ってやる」
「でもそれだと、私は足手まといになります。迷惑かけます」
「大丈夫、それも可愛いから」
可愛い?まあそう言われると、女の子は皆とても嬉しいものです。
でも、それって盗賊さん達の邪魔になる事は確定だよ、絶対迷惑かけるわ。
「お前は黙って俺の隣にいるだけでいいんだ。飢えさせもしないし俺が命に代えても守る。欲しいものはなんだってやるよ。俺はお前のためなら何だってしてやる」
命に代えてって、そんな事させる訳にはいかないです!
「お頭~、こんな所でなに口説いてるんですか。やるならもっとロマンチックな所で、そのむさ苦しい髭も剃って、花の1本でもプレゼントしながらやらなきゃダメですって」
周りの皆が楽しそうにはやし立ててる。
口説く?そうなの?ないない、無いわ~。
私に、そんな事しようなんて人いる訳ないわー。
で、二度目の夜です。
大勢の男の人ばかりで、私一人で寝る部屋なんて無いから、夕べはおじさん達と、ごろ寝だった。
でも今夜は何故かお頭さんと一緒の部屋で寝る事になってしまった。
いつの間にか髭もさっぱり剃って、イケメン度の増したジョンさんが、やたら仲間になれと説得してくる。
でも私も負けません。
私にはしなければならない事が有るし、家族もいる。
いずれ家族の元に戻って、ひっ迫している経済状況を、助けなければならないのだと。
それを主張すると、ジョンさんは暫く考え込んでいたけど、何となく納得してくれたような気がする。
「分かった、俺もお前の気持ちに沿えるよう、色々考えてみる」
良かった、分かってくれましたか。
それからは一緒にベッドに転がって眠ろうとしたけれど、ジョンさんは飽きもせず、また盗賊の仲間への勧誘を始める。
私を離したくないとか、危ない目には絶対に合わせないとか、毎晩こうしていたいとか?
その間何度もお休みのキスをしてくる。(ご挨拶のキスは、我が家では定番です)
「ジョンさん、私は(アルバイト以外の定職に就くのは)初めてだから、もう少し時間をくれませんか?」
こんなに良くしてくれるジョンさんに、私ももう少し歩み寄ってもいいのではないか、だから私もいい方法が無いか考えてみよう。
そう思って声を掛けた。
するとジョンさんはそれを分かってくれたのか、優しく微笑んで額に最後のお休みのキスをし、隣で寝息を立て始めた。
「ジョンさんは仕事をしなくていいからここにいろって言うけれど、それって私の主義に反するのよね…」
家族、仲間は助け合うもの、自分一人が楽をする訳にはいかないじゃない。
みんな私にかなり同情してくれてるけど、甘える訳にはいかないし、やっぱり迷惑を掛る事になる。
それに考えてみれば、盗賊って泥棒さん?悪い事をしている人だよね。
それって、小さい頃から悪い事はしてはいけませんと言われ、育ってきた私の信念に反するわぁ、無理だわぁ。
それでも横になったまま色々考えてみる。
私は悪い事は嫌いだ。
でも、とても良くしてくれるジョンさん達の事はちょっと…だいぶ好きな気がする。
だから私がジョンさん達のお仕事は目をつむり、盗賊さんになったとしても、私に何が出来るのだろう。
ご飯を作るのは、ルーベンスさんの仕事だと言われ、私が手を出す事が出来なかった。
あと私に出来る事は、川で洗濯したり、山菜取ったりマキを拾いに行ったり?
でも一人でこの森をうろついたらだめだと禁止されたし、ならば他に何が出来る?私はどうすればいいの!?
ジョンさん達と一緒に強奪活動は絶対に無理だし、このままじゃぁ私って、ただ飯ぐらいのお荷物だよね。
そんな負担になるような私って、ジョンさんにとっては必要ない存在じゃん。
要らないじゃん。
そう考え着いた私は、また黙って立ち去った方がいいと言う考えに至った。
『ジョンさん、皆さん、大変お世話になりました。やはり私がいると皆さんの足手まといになります。私は一人でも大丈夫です。どうか皆様で仲良く幸せに暮らしてください。陰ながらお祈りします。短い間でしたが、本当にありがとうございました。追伸、私が言うのも何ですが、やはり人生は真っ当な生活をして、悔いの無い生き方をした方がいいと思います。出しゃばった事を言ってごめんなさい』
月明かりで何とか書いた書置きを残して。
「よし!」
私はそっとリュックを背負い、極力音をたてないように逃げ出した。
夜の山道は暗くて危ない。
それでも気が付かれないにうちに、何とか距離を稼がなければ。
様々な岩が転がる道だけど、私は走るように急ぐ。
ふと水の音に気が付き、音のするの方に目をやった。
「あれ、いつの間にか川がある」
なんて気を取られたのが悪かったのだろう。
足元の石に足を取られ、バランスを崩してしまった。
「キャアアァーーー!!!」
私は見事に坂を転がり落ち、川へとザブンッ、そして勢いのまま流されていく。
幸いな事に川は深く、物理的に底に叩き付けられなかったのは幸運だろう。
だけどそれ以外は全て不運だ!
流れが急で息をする事もままならない、苦しい、死ぬ!このままじゃ本当に死んじゃう!
もがき、足掻き、何かを掴もうと手を伸ばすも、流れにそれすらも拒まれた。
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