45 / 109
ご心配おかけしました
しおりを挟む
はい、テンプレ通り私は今、自宅の前に立っております。
…………………………。
やはり私は兄様の言う通りディア・アレルヤ、オールマイティの希少な術者なのでしょうか。
お母様に会いたいと思ったら、一瞬の後、兄様と共にトルディアの自宅の前に立っていました。
今現在、人通りも多くなる時間帯です。
名目上は貴族の屋敷ですが、一見すればただの民家。
そんな家の前に、煌びやかなお姫様(あの鏡が嘘でなければ)と凛々しい兄様が、馬車も供も付けずに突っ立っているんです。
さっさと中に入らなければ人目を引きますよね。
私はスッと差し出された兄様の手にエスコートされ、玄関に向かいました。
「父上、母上、ただ今戻りました」
兄様が大きな声で言った。
すると奥の方から、パタパタと走る音がこちらに向かって来る。
あっ、母様だ。
「イカルス!急にどうしたの?まさかエレオノーラに何か………!」
その声と共にいきなり開いた扉の向こうには、憔悴した様子の母様が………。
その目は私を捕らえた途端、大きく見開かれ、大粒の涙を溢し始めた。
「エ…エレオノーラ………」
「母様……ごめんなさい…………」
少しづつこちらに向かっていた足が、やがて駆ける様に急ぐ。
「エレオノーラ、エレオノーラ!」
「母様!」
私は母様に抱きしめてもらいたくて、両手を差し出した。
「この!バカ娘が~~!!」
ビンタされました、それも往復。
痛いです母様…。
「この子は!全く!私たちがどれほど心配したと思っているの!そんなに思い詰めているなら、何で母様たちに相談してくれなかったの!あんな奴どうとでもしてやったのに!エレオノーラ、エレオノーラ!!」
さすがにもうビンタはされませんでしたが、相変わらず涙をぼろぼろ流しながら、拳で叩かれたり、肩を掴まれガクガクと振られたり、痛いですって母様。
でも私がそれほどの事をしたんですよね。
それほど母様たちに心配をかけたんですね。
「そろそろ勘弁してあげなさいジャクリーン」
その様子を見ていた父様が、頃合いを見計らって私から母様を引き離してくれました。
そして兄様が私を腕の中に保護してくれてます。
「お帰りエレオノーラ」
そういう父様の目にも、流れ落ちそうな涙が溜まっていました。
「ただいま戻りました父様。心配かけてごめんなさい」
「母様には!?母様に何か言うことは無いの!」
「すいませんでした。心配かけてごめんなさい。もう二度とこんな事は致しません!(と思う)」
そして母様は、ようやく私を抱きしめてくれた。
絵的には、私が母様を抱きしめているように見えちゃうけれど、身長の関係上、仕方ないよね。
取りあえずテーブルに着き、母様の入れてくれたお茶をすする。
「あ~、やっぱり母様の入れてくれたお茶が一番おいしい」
私が入れても、こう美味しくならないもの。
「そりゃあね、いつも美味しくな~れ、元気にな~れと心を込めて入れてるもの」
……それって、もしかしてズルしてませんか?
今度、私もやってみよう。
「さて、イカルスも一緒と言う事は、今エレオノーラはカリオンにいるのだね?」
「はい」
「色々聞かなくてはならないが、全てを聞くには時間が足りないのだろう?」
「はい、突然の事だったので、下準備もしないままでした。今日一日は休みを取ってあるので大丈夫ですが、それでもゆっくりする事は出来ません。エレオノーラと共に、今日中にカリオンに戻ります」
「……………そうか、それならやはり、エレオノーラはディア・アレルヤだったのか」
「間違いないと思います」
要約すれば、兄様と私が一緒に現れたから、きっと私が自力で兄様の所に辿り着いたと父様は思った。
そして兄様には転移する能力は元々無い。
有ったら私が死んだ時に、長い休暇を取らずともここに来れたものね。
つまりいきなりここに来たのは私の力のせいで、それも突然発動させた。
兄様は、ここに来るなら休暇を取ってくればよかったんだけれど、それも出来ないまま、突然私がここに連れて来たと?
それから私が小さい時にやらかした事や、父様と兄様の推理を考え合わせ、私がディア・アレルヤと言う得体のしれない物だと決定した。
何やら難しい話をする二人に比べ、母様は取って置きのお菓子を並べたり、鼻歌を歌いながら、機嫌良さそうに新しいお茶を注いでいる。
難しい話より、母様の相手をしている方がいいわ。
「ほらほらエレオノーラ、ベイクドファンの新作よ」
そう言い、ドライフルーツを練り込んだ、美味しそうなクッキーを差し出してくれる。
さっき外に出たのは、これを買いに行ったんですね。
「それで旅行中は何かあった?素敵な人に出会ったとか、恋しちゃったとか」
「はぁ?何の事ですか?恋のこの字も有りませんでしたよ」
「何だ、つまんな~い」
こらこら父様たち、何で黙り込んでこちらに聞き耳を立ててるんですか。
「それにしても、とても綺麗になったわねエレオノーラ」
「そうですかぁ?そりゃステキなドレスを着ているし、髪だって付け毛して綺麗に結い上げてますけど、いつもの服を着て眼鏡を掛ければ何も変わってはいませんよ」
「付け毛?髪を切ったの?」
「はい、この辺でバッサリと、いいお金になったんです」
そう言い、指で首の付け根付近を示す。
「イカルス!」
「いえ父上、私と会った時にはその状態でしたから、止める事など無理でしたよ」
男性二人がため息をついている。
だって仕方なかったんだもの。
「そう言えばエレオノーラ、あの子はここで眠っているわ」
「あの子?」
「そっか、やっぱりエレオノーラも知らない子だったのね………」
ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、それってもしかして…。
「ミシェル、ミシェルの事ですよね!」
「ミシェル?そう、あの子の名前はミシェルと言うのね。後で会いに行く?」
「ええ、ぜひ!」
…………………………。
やはり私は兄様の言う通りディア・アレルヤ、オールマイティの希少な術者なのでしょうか。
お母様に会いたいと思ったら、一瞬の後、兄様と共にトルディアの自宅の前に立っていました。
今現在、人通りも多くなる時間帯です。
名目上は貴族の屋敷ですが、一見すればただの民家。
そんな家の前に、煌びやかなお姫様(あの鏡が嘘でなければ)と凛々しい兄様が、馬車も供も付けずに突っ立っているんです。
さっさと中に入らなければ人目を引きますよね。
私はスッと差し出された兄様の手にエスコートされ、玄関に向かいました。
「父上、母上、ただ今戻りました」
兄様が大きな声で言った。
すると奥の方から、パタパタと走る音がこちらに向かって来る。
あっ、母様だ。
「イカルス!急にどうしたの?まさかエレオノーラに何か………!」
その声と共にいきなり開いた扉の向こうには、憔悴した様子の母様が………。
その目は私を捕らえた途端、大きく見開かれ、大粒の涙を溢し始めた。
「エ…エレオノーラ………」
「母様……ごめんなさい…………」
少しづつこちらに向かっていた足が、やがて駆ける様に急ぐ。
「エレオノーラ、エレオノーラ!」
「母様!」
私は母様に抱きしめてもらいたくて、両手を差し出した。
「この!バカ娘が~~!!」
ビンタされました、それも往復。
痛いです母様…。
「この子は!全く!私たちがどれほど心配したと思っているの!そんなに思い詰めているなら、何で母様たちに相談してくれなかったの!あんな奴どうとでもしてやったのに!エレオノーラ、エレオノーラ!!」
さすがにもうビンタはされませんでしたが、相変わらず涙をぼろぼろ流しながら、拳で叩かれたり、肩を掴まれガクガクと振られたり、痛いですって母様。
でも私がそれほどの事をしたんですよね。
それほど母様たちに心配をかけたんですね。
「そろそろ勘弁してあげなさいジャクリーン」
その様子を見ていた父様が、頃合いを見計らって私から母様を引き離してくれました。
そして兄様が私を腕の中に保護してくれてます。
「お帰りエレオノーラ」
そういう父様の目にも、流れ落ちそうな涙が溜まっていました。
「ただいま戻りました父様。心配かけてごめんなさい」
「母様には!?母様に何か言うことは無いの!」
「すいませんでした。心配かけてごめんなさい。もう二度とこんな事は致しません!(と思う)」
そして母様は、ようやく私を抱きしめてくれた。
絵的には、私が母様を抱きしめているように見えちゃうけれど、身長の関係上、仕方ないよね。
取りあえずテーブルに着き、母様の入れてくれたお茶をすする。
「あ~、やっぱり母様の入れてくれたお茶が一番おいしい」
私が入れても、こう美味しくならないもの。
「そりゃあね、いつも美味しくな~れ、元気にな~れと心を込めて入れてるもの」
……それって、もしかしてズルしてませんか?
今度、私もやってみよう。
「さて、イカルスも一緒と言う事は、今エレオノーラはカリオンにいるのだね?」
「はい」
「色々聞かなくてはならないが、全てを聞くには時間が足りないのだろう?」
「はい、突然の事だったので、下準備もしないままでした。今日一日は休みを取ってあるので大丈夫ですが、それでもゆっくりする事は出来ません。エレオノーラと共に、今日中にカリオンに戻ります」
「……………そうか、それならやはり、エレオノーラはディア・アレルヤだったのか」
「間違いないと思います」
要約すれば、兄様と私が一緒に現れたから、きっと私が自力で兄様の所に辿り着いたと父様は思った。
そして兄様には転移する能力は元々無い。
有ったら私が死んだ時に、長い休暇を取らずともここに来れたものね。
つまりいきなりここに来たのは私の力のせいで、それも突然発動させた。
兄様は、ここに来るなら休暇を取ってくればよかったんだけれど、それも出来ないまま、突然私がここに連れて来たと?
それから私が小さい時にやらかした事や、父様と兄様の推理を考え合わせ、私がディア・アレルヤと言う得体のしれない物だと決定した。
何やら難しい話をする二人に比べ、母様は取って置きのお菓子を並べたり、鼻歌を歌いながら、機嫌良さそうに新しいお茶を注いでいる。
難しい話より、母様の相手をしている方がいいわ。
「ほらほらエレオノーラ、ベイクドファンの新作よ」
そう言い、ドライフルーツを練り込んだ、美味しそうなクッキーを差し出してくれる。
さっき外に出たのは、これを買いに行ったんですね。
「それで旅行中は何かあった?素敵な人に出会ったとか、恋しちゃったとか」
「はぁ?何の事ですか?恋のこの字も有りませんでしたよ」
「何だ、つまんな~い」
こらこら父様たち、何で黙り込んでこちらに聞き耳を立ててるんですか。
「それにしても、とても綺麗になったわねエレオノーラ」
「そうですかぁ?そりゃステキなドレスを着ているし、髪だって付け毛して綺麗に結い上げてますけど、いつもの服を着て眼鏡を掛ければ何も変わってはいませんよ」
「付け毛?髪を切ったの?」
「はい、この辺でバッサリと、いいお金になったんです」
そう言い、指で首の付け根付近を示す。
「イカルス!」
「いえ父上、私と会った時にはその状態でしたから、止める事など無理でしたよ」
男性二人がため息をついている。
だって仕方なかったんだもの。
「そう言えばエレオノーラ、あの子はここで眠っているわ」
「あの子?」
「そっか、やっぱりエレオノーラも知らない子だったのね………」
ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、それってもしかして…。
「ミシェル、ミシェルの事ですよね!」
「ミシェル?そう、あの子の名前はミシェルと言うのね。後で会いに行く?」
「ええ、ぜひ!」
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる