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ご心配おかけしました

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はい、テンプレ通り私は今、自宅の前に立っております。
…………………………。



やはり私は兄様の言う通りディア・アレルヤ、オールマイティの希少な術者なのでしょうか。
お母様に会いたいと思ったら、一瞬の後、兄様と共にトルディアの自宅の前に立っていました。
今現在、人通りも多くなる時間帯です。
名目上は貴族の屋敷ですが、一見すればただの民家。
そんな家の前に、煌びやかなお姫様(あの鏡が嘘でなければ)と凛々しい兄様が、馬車も供も付けずに突っ立っているんです。
さっさと中に入らなければ人目を引きますよね。
私はスッと差し出された兄様の手にエスコートされ、玄関に向かいました。


「父上、母上、ただ今戻りました」

兄様が大きな声で言った。
すると奥の方から、パタパタと走る音がこちらに向かって来る。
あっ、母様だ。

「イカルス!急にどうしたの?まさかエレオノーラに何か………!」

その声と共にいきなり開いた扉の向こうには、憔悴した様子の母様が………。
その目は私を捕らえた途端、大きく見開かれ、大粒の涙を溢し始めた。

「エ…エレオノーラ………」
「母様……ごめんなさい…………」

少しづつこちらに向かっていた足が、やがて駆ける様に急ぐ。

「エレオノーラ、エレオノーラ!」
「母様!」

私は母様に抱きしめてもらいたくて、両手を差し出した。

「この!バカ娘が~~!!」

ビンタされました、それも往復。
痛いです母様…。

「この子は!全く!私たちがどれほど心配したと思っているの!そんなに思い詰めているなら、何で母様たちに相談してくれなかったの!あんな奴どうとでもしてやったのに!エレオノーラ、エレオノーラ!!」

さすがにもうビンタはされませんでしたが、相変わらず涙をぼろぼろ流しながら、拳で叩かれたり、肩を掴まれガクガクと振られたり、痛いですって母様。
でも私がそれほどの事をしたんですよね。
それほど母様たちに心配をかけたんですね。

「そろそろ勘弁してあげなさいジャクリーン」

その様子を見ていた父様が、頃合いを見計らって私から母様を引き離してくれました。
そして兄様が私を腕の中に保護してくれてます。

「お帰りエレオノーラ」

そういう父様の目にも、流れ落ちそうな涙が溜まっていました。

「ただいま戻りました父様。心配かけてごめんなさい」
「母様には!?母様に何か言うことは無いの!」
「すいませんでした。心配かけてごめんなさい。もう二度とこんな事は致しません!(と思う)」

そして母様は、ようやく私を抱きしめてくれた。
絵的には、私が母様を抱きしめているように見えちゃうけれど、身長の関係上、仕方ないよね。


取りあえずテーブルに着き、母様の入れてくれたお茶をすする。

「あ~、やっぱり母様の入れてくれたお茶が一番おいしい」

私が入れても、こう美味しくならないもの。

「そりゃあね、いつも美味しくな~れ、元気にな~れと心を込めて入れてるもの」

……それって、もしかしてズルしてませんか?
今度、私もやってみよう。

「さて、イカルスも一緒と言う事は、今エレオノーラはカリオンにいるのだね?」
「はい」
「色々聞かなくてはならないが、全てを聞くには時間が足りないのだろう?」
「はい、突然の事だったので、下準備もしないままでした。今日一日は休みを取ってあるので大丈夫ですが、それでもゆっくりする事は出来ません。エレオノーラと共に、今日中にカリオンに戻ります」
「……………そうか、それならやはり、エレオノーラはディア・アレルヤだったのか」
「間違いないと思います」

要約すれば、兄様と私が一緒に現れたから、きっと私が自力で兄様の所に辿り着いたと父様は思った。
そして兄様には転移する能力は元々無い。
有ったら私が死んだ時に、長い休暇を取らずともここに来れたものね。
つまりいきなりここに来たのは私の力のせいで、それも突然発動させた。
兄様は、ここに来るなら休暇を取ってくればよかったんだけれど、それも出来ないまま、突然私がここに連れて来たと?
それから私が小さい時にやらかした事や、父様と兄様の推理を考え合わせ、私がディア・アレルヤと言う得体のしれない物だと決定した。

何やら難しい話をする二人に比べ、母様は取って置きのお菓子を並べたり、鼻歌を歌いながら、機嫌良さそうに新しいお茶を注いでいる。
難しい話より、母様の相手をしている方がいいわ。

「ほらほらエレオノーラ、ベイクドファンの新作よ」

そう言い、ドライフルーツを練り込んだ、美味しそうなクッキーを差し出してくれる。
さっき外に出たのは、これを買いに行ったんですね。

「それで旅行中は何かあった?素敵な人に出会ったとか、恋しちゃったとか」
「はぁ?何の事ですか?恋のこの字も有りませんでしたよ」
「何だ、つまんな~い」

こらこら父様たち、何で黙り込んでこちらに聞き耳を立ててるんですか。

「それにしても、とても綺麗になったわねエレオノーラ」
「そうですかぁ?そりゃステキなドレスを着ているし、髪だって付け毛して綺麗に結い上げてますけど、いつもの服を着て眼鏡を掛ければ何も変わってはいませんよ」
「付け毛?髪を切ったの?」
「はい、この辺でバッサリと、いいお金になったんです」

そう言い、指で首の付け根付近を示す。

「イカルス!」
「いえ父上、私と会った時にはその状態でしたから、止める事など無理でしたよ」

男性二人がため息をついている。
だって仕方なかったんだもの。


「そう言えばエレオノーラ、あの子はここで眠っているわ」
「あの子?」
「そっか、やっぱりエレオノーラも知らない子だったのね………」

ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、それってもしかして…。

「ミシェル、ミシェルの事ですよね!」
「ミシェル?そう、あの子の名前はミシェルと言うのね。後で会いに行く?」
「ええ、ぜひ!」
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