底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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さよなら

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「ミッ…ミシェ…ル?」

驚きながらも、彼女を呼ぶ声。
奥様に至っては、それすらも出来ない様子。
ただ眼を見開き、彼女を見つめている。

「ミシェル、早く…」

言葉を掛けるなら早くして、どうやらそれ、私の魔力が形作っているようで、バカバカ魔力を食いまくっているから。
私が魔力切れを起こしたら、消えちゃうから。

「ミシェル!」

思わず抱きしめようとしたけれど、それは叶わなかったようだ。
まあ、それ魔力の塊だろうから、無理だと思うよ。

『奥様、旦那様、ごめんなさい!』

ミシェルはそう言い、頭を深々と下げた。

「ミシェル、あなた帰って来てくれたのね…」
『はい、私ここに帰ってきました。でもたぶん奥様達に会うのはこれが最後だと思います』
「どうして?ずっと此処に居ればいいじゃないの」
『それは叶わない…。だって私はとても幸せだったから、こうして皆にも会えたから、もう思い残す事も無いし、後は神様の下に召されるだけだから』
「それなら…そうだミシェル、思い残した事が有ればいいのだろう?テレサのお腹の子を見たくないか?見たいよな?それにあの学び舎だって、ミシェルがいたからこそ実現したんだ。あの貧しかった子達だって、ここに来て、ミシェルの話を聞いて、ずっとお前に会いたがっていたぞ。だから、ずっと此処に居たらどうだ?」
『ありがとうございます旦那さま。そう言っていただけてとても嬉しいです。でも私満足しちゃったし、これ以上我儘言いたくない、でも、もし生まれ変わったら、また旦那様達の傍に来てもいいですか?』
「もちろんだよ。私達はみんなお前の事を愛しているよ、そんな事は私達から許可を取る必要などないんだ」

頑張れ私…頑張れ魔力………。

『きっと私が生まれ変わったら、それは私じゃないと思います。その辺に咲いている花かもしれないし、空を飛び回っている鳥かもしれない。でも、必ず帰ってきます。旦那様、奥様、本当にありがとうございました、私も皆の事を愛しています』

そう言い、ミシェルはこれが最後と言うように、私を振り向きこう言った。

『エレオノーラ、奥様や旦那様や皆の事は任せたからね!絶対に守ってあげて!!』

そう言い、静かに消えて行った…………。
言い逃げかい!!!
まあいいけどね、私も協力するって約束したし、後はミシェルが化けて出ないよう、しっかりとやり遂げるよ。
でも本当に行っちゃったんだな……寂しいな………。

「バイバイ、ミシェル……」

もう返ってくる返事は無いけれど……。



でも疲れたぁ、魔力切れ寸前だ~。
そうして椅子にへたばっていると、通信用の魔石が私を呼びました。

「は~い」
『エレオノーラ、良かった大丈夫なの?』

相手はどうやら母様です。

「何がですかぁ」
『急にあなたの気配が薄くなったから、心配になったのよ』
「あー、ちょっと今魔力を使い過ぎちゃったから、そのせいですね」
『何か有ったの!?』

そうだ、母様には言っておかなくちゃ。

「たった今、ミシェルが旅立ったよ」
『………そう』
「うん、彼女とても嬉しそうで、幸せそうだった。きっとまたすぐ会えるような気がする」
『そうね、今度帰ったら詳しい話をしてね』
「分かった」

そして通信を切った。
そう言えばこの魔石、魔力を使ってやる奴だ、疲れたよ~。


まだ詳しい話はするべきじゃないと判断した私は、何の説明もしないまま、この男爵様の屋敷に二・三日、厄介になる事にした。
だって疲れたし、もう少し話もしたいから。

私は客間に案内され一息つく。
本当はミシェルの部屋に泊まってみたかったけれど、きっと他のメイドさんと相部屋だと思って遠慮した。
でももう限界、既に時刻は真夜中だ。
でもミシェルが逝く前に会わせてあげられてよかった。
いや、これが切っ掛けで逝っちゃったのか?
まあいいか、とにかく寝よ。



おはようございます!(もう昼だよ)
一晩(だからもう昼だって)よく寝てスッキリしたエレオノーラです。
ぐっすり寝たせいか、魔力チャージも満タンの元気です!(タフだな)
取りあえず身づくろいをしましょう。

「エレオノーラ様、よろしいでしょうか?」

その声にどうぞと答え、振り返ればそこにはロザリーさんが立っていました。

「お目覚めの様子だったので、お水とタオルを持ってまいりました」

きっと洗顔用に、気を利かせて持って来てくれたのだろう。
せっかくだから頂戴しますと、そのボールで顔を洗っていると、傍で控えていらロザリーさんが口を開く。

「ミシェルの事、奥様から聞きました。エレオノーラ様、どうもありがとうございました」

そうか、元気が無さそうだったのは、既にミシェルの事を聞いたからだったんだね。

「でも最後にミシェルは、また此処に生まれ変わって来るって言っていたから、きっとまた会えるよ」
「そうですね…また会えますよね」

うん、でもこうして見ると、ミシェルって皆に好かれる良い子だったんだろうな。
私には、けっこう我儘言っていたけれど……。
そういやミシェルに頼まれた事も有ったなぁ。
すぐに帰れる程に、体は全回復してたけれど、やる事が出来たから、暫くここに厄介になろう。
取り敢えずは、お腹が減ったぞ!

========


なぜだ……。
ミシェルの件が片付いたら終わるはずだったのに……。
これはあれだな、ミシェルが言い残した言葉のせいと、母様の所に行かなけりゃ、後が怖いせいだな。
つまりあの二人のせいだ!
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