底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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考えもしなかった方法

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本日二度目の投稿です。
ゴホッ、ゴホッ。
ちょっと体調が悪くて……。
嘘です、昨日は開き直ってさぼりました。
学び舎の中、まだ案内してもらってないしーと思われた方。
前話よりお入りください。

=========


「それじゃあ、どんなミシェルを作ろうか?」
「カッコよく立っているやつ!」
「え~、座ってお菓子を食べてるミシェル様がいい」
「寝っ転がってお昼寝してるのはぁ?」

どれもミシェルらしくていいな。
取り敢えず丸投げで、子供達で作ってもらおう。

皆は泥をこねくり回して、ペタペタと形作っていく。
私は内緒で手を貸し、手が捥げたり、首が取れないように芯を入れていく。

「髪の毛にはリボンを付けて~フワフワにして……」

ふむふむ。

「ドレスにはフリルを付けて……」

ふむふむ。

「手には花束を持って……」

おっと、これは難しいぞ。

「「「こんな感じ~~」」」

出来上がった物、いや人型は手や顔がようやく判別できるような出来栄えだったけれど、それでも子供たちの努力の結晶だ。
さて、これからは私の出番だね。

「よし、上手に出来たね。後はミシェルと会った事があるお姉ちゃんが仕上げをするから、よく見ていてね」

皆のリクエスト通りにミシェルを形作る事は容易だけど、せっかくの子供達の力作だ。
ただ仕上げるだけじゃあ勿体ないし、きっと他の子も見たいだろうな。
そうなると、何度も作る事は面倒くさいし、なるべく長く残るように頑丈なものにしよう。
そうすれば奥様達もきっと喜んでくれるよね。
ならば、素材は何にしようかな、腐食しない適当な物か……。

そんな事を思いながら、ざっと像の形を整える。
土のままだと論外だし、石で作っても雨風でいずれは朽ちる。
それなら鋳物かな?

せっせ、せっせ。

でもブロンズでも傷みが出るだろうし。

せっせ、せっせ。

ずっと綺麗なまま残る素材って何だろうな。

大まかな形が出来たところで、記憶にあるミシェルの姿を魔力で焼き付ける。

「わ~キレイ~」
「ピカピカだ~」

そうかそうか、気に入ってもらえたかな?
と、自己満足をした後、努力の合作を良く見れば、何故かピカピカの金色に光っている………。
金だよね…これって。
確かに金って、変化しにくい材質だけど、これってまずくないか?
この金を狙って泥棒が来るかもしれないし、それより人目を引いちゃうよね。

「ねえねえ、ミシェル様ってこんな顔をしていたの?」

そうだよ!それより先に、出来栄えを気にするべきだったよ。

「そうだね、私の会ったミシェルはリボンをしていなかったけれど、この方が似合っているし、可愛いからすごくいいと思うよ」
「うん、ミシェル様可愛い、ピカピカでとても綺麗!」

そうかそうか、ピカピカでとても綺麗か。
子供達が気に入っているなら、このままでもいいや。
と言う事で、この像はそのまま残す事にしました。
一応盗難防止に、邪な事をやりに来た人には、暫く呪いに掛かってもらおうか。
ついでにミシェルを見に来た人には、小さな幸せが訪れるようにしておこうっと。
こうすれば子供たちが気に入ったこの像は、守る事が出来るよね。

さて、子供達との遊びはこれでおしまい。
本格的に資金の調達を考えなくちゃ。



「と言う訳で、取り敢えずこの国の貧しい子供達を助けたいと思います。でもどうすれば良いのか分からないから、まずはランツ男爵の所で試験的にやってみるつもりです。それで兄様に相談なんですが、その子供たちに満足な教育と、養うための資金を継続的に調達するには、どうしたら良いでしょうか」
「分かった。その話は理解した。だがさっき何と言っていた?」

さっきっていつの話だろう?

「ランツ男爵の預かっている子供達と、泥遊びしてミシェルを作った事ですか?」
「その後だ」

その後………?

「兄様はミシェルに会った事が無いから、一度見に来てくださいと言った事?」
「その前」
「えーと、他の子供も見たがると思って、頑丈な金属に錬金してきた事ですか?」
「あぁ、だが金属ではなく金なのだろう?それと他にもやらかしたと言っていたな」
「やらかしたって、ミシェルの像が盗まれるといやだから、泥棒が盗もうとすると、一定期間呪いに掛かってもらうようにしただけじゃないですか」
「それと、その像に参った人には幸せが訪れるよう、加護を施してきたんだろう?」
「ちょっとだけですよ。」
「お前のちょっとは、普通の人の凄いにあたるんだ」
「嫌ですね兄様。それではまるで私が悪い事をしたみたいじゃないですか」
「まぁ……、悪い事はしていないが…………」

そうだよね、私悪い事してないよね?

「それで兄様、先ほどの件ですけど、ランツ男爵様の資金の件ですが、いい案は有りませんか?」
「あぁ、有るぞ。そのミシェルの像の前に、箱を一つ置いておけばいい」
「兄様、本気で考えて下さい」
「私は本気だが」

嘘つき。
箱一つでお金が入るなら、今頃国中の家の玄関先に、箱が置いてあるはずです!

「つまりだ、お前が良く分かるように話すが、ミシェルの像に参った一人の人に良い事が有ったとする。そしてそれを他の人に話したとする。それがだんだん口伝で広まれば、そこにたくさんの人が訪れる事になる。その像を参り、良い事が有った人は、その像にお礼をしたいと思うだろう。だからその像の前に箱を置けば、そこを訪れた人は、多分お礼のつもりでお金を入れていくはずだ」
「そんな事、思いもしなかったです」
「まあ、エレオノーラだからな……」

何か、その言い方って引っ掛かります。
ムカッ!

「だが、この方法は全部が通用すると思うな。お前が何とかしたいと思っている場所全てにこの方法を取っても、ありがたみが薄れ、金も集まらなくなる」

なるほど。

「まあ箱と言うのはただの例えだ。ちゃんとしたアドバイスをすれば、まずミシェルの像の周りに、ちょっとした小屋を建て、信仰の対象のように体裁を整えろ。それからその入り口に献金箱を設ける。そして子供達が土産物や、お守りのようなものを売ればいい。それで十分に運営資金は賄えるはずだ」
「それだけで?」
「ああ」

何せお前がやらかした事だからな…と聞こえた気がした。
ムカッ!


その後、ランツ男爵様に兄様の助言を伝えると、とても驚いていた。
しかしその通りにすると、確かに人が少しずつ訪れるようになり、やがれたくさんの人がミシェルの像を参るようになった。
品物も飛ぶように売れ、子供達の勉強にも支障が出るようになると、スラムの人達に仕事を頼むようになる。
そうやって学び舎は徐々に豊かになり、バンウルフも栄えて行った。
やっぱり兄様ってすごいな(凄いのは兄では無いと思う)


後日談

奥様は無事男の子を出産し、その子もすくすくと成長した。
そして奥様は、もう一人授かる事になる。
その知らせを受け、私は久しぶりにバンウルフを訪ねた。

「この年で少し恥ずかしいけれど、でも今はとても幸せよ」
「ええ、とても幸せそうで、私も安心しました」
「今度はどちらでしょうね。もし女の子だったなら、名前はミシェルと付けるつもりなの」
「そうですか。きっと彼女も喜びますね」

私は彼女の、ふっくらとしたお腹を眺めた。

「ちょっと触れてもいいですか?」
「えぇ、もちろんですとも」

そのお腹に手を伸ばし、触れると、中でぐるりと動く感触がする。
そっか………。

「ハロー、ミシェル」

私はそっと、そう呼び掛けた。
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