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第二の土地へ

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兄様に言われた通り、ミシェルの像を中心に配置する形で、後付けの簡素な教会(のような建物)を建て様子を見る事になった。
それから一月、今のところ結果は上々のようだ。
ただ、このままだとバンウルフばかりに注目がいき、国の人の流れが大きく変わってしまう事を危惧し、兄様が同じような所をあと数か所作った方が良いと言う。
確かに、願いが叶ったり良い事が起きると言うのなら、私だってそこに参りたいもの。
つまりそれは他の人にも言える事だろうし、そうなると誰もがバンウルフを目指す事になってしまう。

「やはりまずいですかね……」
「あぁそうだな。出来るだけ早く、この事が全土に知れ渡る前に行動を起こした方が良いだろう」
「…………頑張ってくださいね、兄様!」
「お前もな」

そうか、やはり私も手伝うんだね……(あんたがやらずして誰がやる)

と言う事で、兄様の推薦する土地にミシェル現象を起こしに行く事になりました。
いっその事、像を.王都に置いたらめんどくさくなくていいと思ったけれど、それだとミシェルが神として祭り上げられ、新たな信仰宗派が出来る可能性がある。
そうなれば今の宗派との確執が起きかねないからやめてくれと言われた。
ごもっともです。
まあそれは、どの地に置いてもその危険は考えられるので、なるべく教会が手を出していないような地を兄様が選んでくれました。

まずは王都から南東に位置するカゼインと言う港町。
もう一つは南西に位置するドミニクという小さな村に決定。
バランス的に、この二つなら申し分ないそうで、さっそく出向く事に……。

「兄様、国の両端にあるような地だと、片方の町に向かうだけでも、かなり時間がかかっちゃいますが」
「普通はそうだが、お前は普通じゃないからな」

ムカッ。

取り敢えず足掛かりを作るために、リンデンさんにお願いして連れて行ってもらう事にしました。
兄様と一緒に。

「ミシェルの像を建てるだけなら、私一人でもやれますよ?」
「まあ、そうだろうが……私達は確かにお前の自由にして良いと言い、この件はお前がやりたいと見出した事だ。だがこれ自体は本来国がやるべき事業なのだ。私は後々国と揉めないよう、一応上に報告をしたのだが、私の所にお前のサポートをするよう国王直々に命令され、全権を任された」
(国王その他一同の本音:エレオノーラ嬢にやってもらえるに越したことは無いが、何せ16歳の少女だ。経験も無いうえに、まだ考えが浅いところも有るだろう。従って君には、彼女が突っ走らないよう、ストッパー役をやってもらいたい)

そうか、国王様からの命令なら、仕方ないですね。


最初に降り立った地は、南西に位置するドミニクだった。
ドミニクは緑が乏しい村で、それでもわずかな水を利用し、細々と畑を耕し、後は岩山の洞窟で魔石の材料となる鉱石を掘り出して、何とか生計を立てているようだ。

「これほどとは思わなかったな……」

兄様は、国の手があまり及ばない、貧しい土地をあえて選んだようだが、ここまで酷いとは思わなかったらしい。
そうだね、ここにミシェルの像を建てれば、バンウルフのように少しずつ人が来てくれて、ここも豊かになるかもしれない。

「さて、どこにミシェルの像を建てますかね?」
「まあまて、まずはこの村の情報を仕入れよう」
「情報を仕入れる?」

像を建てておしまいでは駄目なのだろうか。

「散歩をしながら、世間話をする程度でも構わない。まずはここの状態を見て回ろう」
「兄様とデートですね」

のんびりと兄様と散歩なんて、一体何年ぶりだろう。
だがその前に、リンデンさんを見た村人が、ちらほらと集まりだしていた。
そりゃそうだよね。
リンデンさんが隠れそうな森も、何もない。
ここにあるのは乾燥した荒野であり、遠くに見える岩山だけだもの。

「(コソッ)兄様、どうしましょう?」
「(コソッ)取り敢えず、リンデン殿にはお引き取り願えるか?」

了解。

「リンデンさん、帰りは何とかなりますから、もう帰っても大丈夫ですよ?」
『何だつまらん。我ももう少しここに留まり、お前がする事を見ていたいのだが』

と、リンデンさんが言ってますが、一体どうしましょう。

「(コソッ)無理か?」
「(コソッ)多分」

それなら仕方が無いと、リンデンさんはここに留まる事になりました。
しかしリンデンさんを恐怖の対象にする事は出来ないと、兄様は演説をぶっこく事にしたらしい。

「ここにおられるのは、神似者でおられるドラゴン、リンデン様である。彼はこの国を救うため、この地に降り立ったのだ。従って彼は敵ではない。しかし彼を畏れ敬うよう、心してくれ」

パチパチパチ。
その通りです!
リンデンさんは、とても偉いんですよ(お前の部下だけどな)

「私達は、まずどうすればこの村を救えるか調査したいと思っている。誰かこの村に詳しい者がおれば、名乗り出てくれ」

皆はお互いの顔を見つめ合ったが、暫くすると二人の人間が前に出た。
一人は五十代ほどの男性と、もう一人は先ほどの男性よりだいぶ年上の老婆だった。

「この度は、このドミニクにいらしていただき、恐悦至極でございます。何もございませんが、どうかごゆっくりなさって下さい」
「私はカリオンにて、シュカルフ辺境伯の下で副司令官を務めているイカルス・ガルディアと申すもの。隣にいるのは我が妹、エレオノーラと言います」
「それはご丁寧に、私はこの村の村長をしておりますリンジー・ヒュームと申します。こちらは、私の母のメイベル・ヒュームです。どうかよろしくお願いします」

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昨日は、ストーリーを考えねばと努力はした。
したが、なぜ頭の中には、焼きそばの事しか浮かばないのだろう?
…………ごめんなさい。
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