底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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立場

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「この土地は、私が生まれるずっと前は、山から湧き出る水の恵みにより緑あふれる地だったらしい。だがいつからか水は枯渇し、天からも見放された。情けない事に、今ではたった一つの深い井戸から湧き出る水しか得る事は出来ないのだ」
「その話は事実か?」
「私は昔の有様を見た事が無いのでの、それが本当かと言われると何とも言えぬよ。ただ、山を見れば、昔は川があったと思われる道が幾筋も有るのだ」
「雨は降らないのですか?」
「降るな。ただそれが多いのか少ないのかはよく分らぬ。私が知る雨は、幼き頃から変わったとは思えぬが、雨が降ればそれは全て地に消えてしまう。この地では雨など、何の役に立っているのか分からぬ」

なるほど、それも無理は無いな。
緑が溢れていたとされる頃には、このおばあちゃんは生まれていなかったのだろうし。
ならば、その頃と比べ、気候が変わったのか山から湧きだす水が枯渇したのか、どちらなんだろう。

「(コソッ)確か最近、エドガーさんから気候を操る話を聞きましたね。エドガーさんに頼めば雨を降らせる……あっ、私がやればいいのか」
「(コソッ)いや、お前がここに留まるならいいが、一時的に降らせたところで焼け石に水。どうにもならないだろうな。それよりも昔は緑が豊かだったと言うなら、こうなった原因を探った方が良いだろう」
「原因ですか?雨が少ないのか、水脈の変化か?他に何か原因があるのでしょうか?」

取り敢えず雨は降る。
どれほど降るのかは分からないけれど、この地面の枯れ方は異常だ。
ならば、残る手立ては水脈を操作する事ぐらいかな?

「リンデンさん、水脈を調べたり、道を変えるやり方って知ってますか?」
『知ってはいるが、そこまでする必要は無いだろう』
「この土地の緑が戻るために、何か他に手立てが有るんですか?」
『あぁ、あそこで眠っているやつを起こして、追い出すだけでいい』

そう言い、裏山と言うには少々大き過ぎる岩山を指し示す。
眠っているって、誰かいるんですか?

『お前なら見えるだろう。よく目を凝らして見極めよ』
「この山に誰かいるんですか?」

村人でも山に登って、昼寝でもしているんでしょうか?
って、いやいや、この気配は一体どなたでしょう。
パワーで言えば、リンデンさんの半分にも及ばないでしょうが、それが……二つ。
人間ではない?
それが身じろぎもせず………山の地下深くに……しいて言えば…ぐっすりと眠り込んでいるような……。
それもかなり熱いですね。
寝息の代わりに、火を吐いていますし。
何やっちゃってくれてるんですか!!

ムカムカムカ。

もしかしてこの地の水不足ってあなた達のせいですかね。
いや、絶対にそうだ!
人の迷惑も考えずそんな所でお昼寝して、お姉さん、怒っちゃいましたよ!!

「いいかげんにしなさ~~い!!!」

私、全力で叱り飛ばしました!

そのせいかどうかは分かりませんが、二頭のドラゴンが慌てふためいて、頂上付近を壊し飛び出してきました。
その体は真っ赤に燃えているのに、何のダメージも負っていません。

『ふん、思った通りのファイヤードラゴンの小童か』

小童!?この大きさで子供ですか?

『俺達が気持ちよく眠っていたのに、叩き起こしたのは貴様か!』
『たかが人間がこんな事をして、タダで済むとは思っていないでしょうね。このメス豚が』

酷い言われようですね。
でも私も負けない!

「ぐっすりとお休みの所を邪魔して悪かったですね。でも、あなた達がそこにいると、こちらとしても非常に迷惑なんですけど!」
『力の無いゴミが何を言う。お前らなど、草の陰で縮こまって震えているのがお似合いだ。それがいっちょ前に俺達に意見をするだと?そんな奴は消し炭に代えてやろうか』
『それよりダーリン、寝起きでお腹が空いたわ。そいつらをモーニングにしてもいいかしら』
『もちろんだよハニー』

どうやら私達は、朝ごはん代わりに食べられてしまうようです。
食べられてやるつもりは無いけれど。
湯通しと、冷蔵はあまり効果は無いだろうし、ならば物理攻撃の方が効くかな?
竜巻で拘束して、全力の薪割……はきっと死んじゃうだろう。
リンデンさんの同族だろうから、それはまずいよね。

『いや、お主がやりたいのであれば、我は止めぬが』

いいんですかぁ?
と思ったとたん、目の前のファイヤードラゴンさんが慌てふためいている。
どうやらリンデンさんは、あえて姿を認識させぬため、気配を殺していた様子。

『これは!なぜあなたがなぜこんな所に!!』
『それはこっちのセリフだ。確かお前達には150年ほど前にお灸をすえてやった事が有ったな。それから鳴りを潜めておったから、てっきり心を入れ替えたのかと思ったのだが。それはわしの思い違いだったか』
『いえいえいえ、入れ替えましたとも。だからこうして、誰にも迷惑を掛けない所で大人しくし……』
『眠っておったな』

おお、どうやらリンデンさんのお知り合いの様ですね。
ならば話は早いです。

「リンデンさん、この方達はお友達なんですか?」
『いや、友達などではない。己の立場も弁えず、自分より力の無い者に対して大きい顔をする、器の小さい奴らじゃ。それを見かね少々小言を言ってやったのだが、どうやらその正念は変わっていないようだな』

どこにでもいますね、そんな奴。

『いえ、あなたの言葉に心を入れ替え、真っ当に……』
『眠っておったな』

そうですよ、あんた達が人の迷惑も考えず、こんな所でお昼寝しているから、ドミニクの人達は、とっても困っているんですよ。
この責任、きっちりとってもらいますからね。
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