80 / 109
我儘ドラゴン
しおりを挟む
『あなたはなぜ、そんなゴミムシと一緒にいるんですか!?』
『ほう、この者を外見のみで判断するのか』
リンデンさん、それってフォローになっていません。
外見はゴミムシだって肯定してます。
『まあそう細かい事を気にするでない。大切なのはその者の本質だ』
「まあそう言う事にしておきますか。さて、あなた達はこの人達に償わなきゃならないんですが、それは理解していますか?」
『償うですって!?一体私達が何をしたって言うの。たとえそんな下等生物に私達が何かしたとしても、それを甘んじて受けるのが人間でしょう?』
「なるほど。リンデンさん、ドラゴンさんは皆こんな考え方なんですか?もしそうであれば、私も考え方を変えなくちゃならないんですが」
『い、いや、ドラゴンも他の種族同様、己の考え方は様々だ。わしは寛大だぞ、こいつらと違って……。だから先日こいつらに会った時も、余りにも身の程を知らない態度に業を煮やし、きつくお灸をすえてやったのだが、まだ態度を改めないようだな』
リンデンさんと会ったのって、確か150年前でしたね。
どうやらその時、リンデンさんからぼこぼこにされたらしいんですが、それを癒すためにここでお昼寝をしていたそうです。
150年間……。
「リンデンさん………」
『いや、わしが悪い訳ではないぞ。悪いのは人の迷惑も考えず、のうのうと寝腐っていたこ奴らのせい………いや、すまなかった』
素直な子は大好きですよ。
『ならばわしは償いの為に何をすればよいのだ』
「知恵を。どうすればこの地を戻せるのか。何がこの子達の一番の罰になるかを教えてください」
この中で一番の年上はリンデンさんだし~、何たって年の功って言うじゃないですか。
『手っ取り早く戻すなら、お主がやった方が良いだろう。こ奴らに罰を与えるのなら、その後の始末をやらせればよい』
簡単そうに言うけれど、具体的な方法を教えて下さいよ。
『こいつらさえいなければ、この地は自然と元の姿を取り戻す。しかしそれまでにはかなりの時間がかかるだろう。ならばまずこいつらの魔力を封印し、お主がこの地を一気に戻せばいい』
「こうなった原因はこの子たちの火力ですよね。封印するとそれも抑える事が出来るんですか?」
『そうだな、試しにやってみるがいい』
「了解です!」
封印、封印か。
確かに以前、私にも掛けられていたけれど、それをやったのは母様だけどな……。
「もしもし母様、ここにとっても悪いドラゴンがいるんだけど、お仕置きのため魔力を封印したいんです。それってどうやればいいんですか?」
母様曰く”人間のやり方なら知っているけれど、ドラゴンのやり方なんて知らないわ”だそうでして、リンデンさん知っていますか?
『魔力の源になる部分を切り落としてしまえばいい』
何だ、初めからリンデンさんに聞けばよかった。
でも切り落とすか……。
でもそれって、魔力の源を体から切り離す事であって、致命傷になりませんか?
『あいつらなら体に残った魔力で20年ほどは持つじゃろう。お主なら切り落としたものを保存できるだろうし、気が済んだ時にそれを体に戻し、治療する事も可能じゃろう』
つまり、20年タダ働きさせても大丈夫なんですね。
『きさま!大人しく聞いていれば何て物騒な事を!まあいい、そんな虚勢を張っていてもしょせん人間。なにも出来まい!』
「それが出来ちゃうんですよ」
はい、包丁!
なぜ今そんなものを持っていると言われていても、持っていたんだも~ん。
私はそれを、ブンと、この分らんちんのドラゴンに投げつけ、そいつの尾を切り落とした。
なぜシッポだと分かったんだと?だってそこから膨大な魔力の気配がプンプンしていたんですよ。
「はい、一本目!」
『ダーリン!』
『くそっ!ハニーに何て事をするんだ!』
恋人さんかご夫婦か知りませんが、どちらにしても償いはキッチリしてもらいますからね。
「二本目行きます!」
くるりとブーメランのように戻って来た包丁を再びダーリンに投げつける。
スパッと小気味のいい音を立て、見事に切り落とされた尾が宙を舞う。
『くっ、くそ!ハニー、ここはいったん引くぞ!その汚らしい貧弱な女!後で覚えていろよ!!』
あ・れ~。逃げるんですか?
このシッポを置いたままで?
それに私の事を貧乳って言いましたか?(貧弱だよ)
聞き捨てなりませんね。
私はもう一度包丁を構え、逃げようとするドラゴンペアに向け、思い切り投げつけた。
スパンッ!スパンッ!スパンッ!スパンッ!
空に飛び上がろうとしたドラゴンさんが、すっころんで地面に沈んでいます。
その傍らには4枚の羽根が。
『なっ、なっ、何をするんだ!!誇り高きドラゴンの羽根を切り落とすなど、神に対する暴挙とも等しい!!』
そうなんだ、ごめんね。
でも、あんた達のしたことは神様も許さないと思うよ。
あんた達の好き勝手にした事で、苦しんだり、死んでいった人はたくさんいたんだよ。
もし神様が許しても、私は絶対に許さないからね。
『なぜあなたは、こんな虫けらのする事を黙ってみているのですか。こいつは誇り高き我々ドラゴンにこんな事をし勝ち誇っている。こんな事を許すおつもりか!』
『そんな虫けらに手も足も出ず、やられる一方なのはお前達だろうう。それにエレオノーラはわしの名付け手なのでな、逆らう事は出来ないのだよ』
『『えっ!!!』』
やはりドラゴンに名前を付ける事は、とても大変な事なんですね。
「そこのダーリン、あなたの名前はピーちゃん、ハニーはポッポちゃん。はい決まり~」
『『えー!!!』』
『ほう、この者を外見のみで判断するのか』
リンデンさん、それってフォローになっていません。
外見はゴミムシだって肯定してます。
『まあそう細かい事を気にするでない。大切なのはその者の本質だ』
「まあそう言う事にしておきますか。さて、あなた達はこの人達に償わなきゃならないんですが、それは理解していますか?」
『償うですって!?一体私達が何をしたって言うの。たとえそんな下等生物に私達が何かしたとしても、それを甘んじて受けるのが人間でしょう?』
「なるほど。リンデンさん、ドラゴンさんは皆こんな考え方なんですか?もしそうであれば、私も考え方を変えなくちゃならないんですが」
『い、いや、ドラゴンも他の種族同様、己の考え方は様々だ。わしは寛大だぞ、こいつらと違って……。だから先日こいつらに会った時も、余りにも身の程を知らない態度に業を煮やし、きつくお灸をすえてやったのだが、まだ態度を改めないようだな』
リンデンさんと会ったのって、確か150年前でしたね。
どうやらその時、リンデンさんからぼこぼこにされたらしいんですが、それを癒すためにここでお昼寝をしていたそうです。
150年間……。
「リンデンさん………」
『いや、わしが悪い訳ではないぞ。悪いのは人の迷惑も考えず、のうのうと寝腐っていたこ奴らのせい………いや、すまなかった』
素直な子は大好きですよ。
『ならばわしは償いの為に何をすればよいのだ』
「知恵を。どうすればこの地を戻せるのか。何がこの子達の一番の罰になるかを教えてください」
この中で一番の年上はリンデンさんだし~、何たって年の功って言うじゃないですか。
『手っ取り早く戻すなら、お主がやった方が良いだろう。こ奴らに罰を与えるのなら、その後の始末をやらせればよい』
簡単そうに言うけれど、具体的な方法を教えて下さいよ。
『こいつらさえいなければ、この地は自然と元の姿を取り戻す。しかしそれまでにはかなりの時間がかかるだろう。ならばまずこいつらの魔力を封印し、お主がこの地を一気に戻せばいい』
「こうなった原因はこの子たちの火力ですよね。封印するとそれも抑える事が出来るんですか?」
『そうだな、試しにやってみるがいい』
「了解です!」
封印、封印か。
確かに以前、私にも掛けられていたけれど、それをやったのは母様だけどな……。
「もしもし母様、ここにとっても悪いドラゴンがいるんだけど、お仕置きのため魔力を封印したいんです。それってどうやればいいんですか?」
母様曰く”人間のやり方なら知っているけれど、ドラゴンのやり方なんて知らないわ”だそうでして、リンデンさん知っていますか?
『魔力の源になる部分を切り落としてしまえばいい』
何だ、初めからリンデンさんに聞けばよかった。
でも切り落とすか……。
でもそれって、魔力の源を体から切り離す事であって、致命傷になりませんか?
『あいつらなら体に残った魔力で20年ほどは持つじゃろう。お主なら切り落としたものを保存できるだろうし、気が済んだ時にそれを体に戻し、治療する事も可能じゃろう』
つまり、20年タダ働きさせても大丈夫なんですね。
『きさま!大人しく聞いていれば何て物騒な事を!まあいい、そんな虚勢を張っていてもしょせん人間。なにも出来まい!』
「それが出来ちゃうんですよ」
はい、包丁!
なぜ今そんなものを持っていると言われていても、持っていたんだも~ん。
私はそれを、ブンと、この分らんちんのドラゴンに投げつけ、そいつの尾を切り落とした。
なぜシッポだと分かったんだと?だってそこから膨大な魔力の気配がプンプンしていたんですよ。
「はい、一本目!」
『ダーリン!』
『くそっ!ハニーに何て事をするんだ!』
恋人さんかご夫婦か知りませんが、どちらにしても償いはキッチリしてもらいますからね。
「二本目行きます!」
くるりとブーメランのように戻って来た包丁を再びダーリンに投げつける。
スパッと小気味のいい音を立て、見事に切り落とされた尾が宙を舞う。
『くっ、くそ!ハニー、ここはいったん引くぞ!その汚らしい貧弱な女!後で覚えていろよ!!』
あ・れ~。逃げるんですか?
このシッポを置いたままで?
それに私の事を貧乳って言いましたか?(貧弱だよ)
聞き捨てなりませんね。
私はもう一度包丁を構え、逃げようとするドラゴンペアに向け、思い切り投げつけた。
スパンッ!スパンッ!スパンッ!スパンッ!
空に飛び上がろうとしたドラゴンさんが、すっころんで地面に沈んでいます。
その傍らには4枚の羽根が。
『なっ、なっ、何をするんだ!!誇り高きドラゴンの羽根を切り落とすなど、神に対する暴挙とも等しい!!』
そうなんだ、ごめんね。
でも、あんた達のしたことは神様も許さないと思うよ。
あんた達の好き勝手にした事で、苦しんだり、死んでいった人はたくさんいたんだよ。
もし神様が許しても、私は絶対に許さないからね。
『なぜあなたは、こんな虫けらのする事を黙ってみているのですか。こいつは誇り高き我々ドラゴンにこんな事をし勝ち誇っている。こんな事を許すおつもりか!』
『そんな虫けらに手も足も出ず、やられる一方なのはお前達だろうう。それにエレオノーラはわしの名付け手なのでな、逆らう事は出来ないのだよ』
『『えっ!!!』』
やはりドラゴンに名前を付ける事は、とても大変な事なんですね。
「そこのダーリン、あなたの名前はピーちゃん、ハニーはポッポちゃん。はい決まり~」
『『えー!!!』』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる