底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

文字の大きさ
84 / 109

鼻つまみ者

しおりを挟む
『なに、簡単な事じゃ』
「それ採用!」
『なぜわしの話を聞かぬうちにそう言う。それを言うなら、ちゃんと話を聞いてからにしろ』

いえ、リンデンさんの言う事に間違いは有りません!

『まあいい。良いか、あれは埋めたままでよい』

ダメですって、それだとピーポちゃん達はいずれ魔力を使い果たし、死んじゃうんですよ!

『お主は傷を癒す事も出来るだろに』
「そりゃぁ出来ますけど、でもあれは魔力の源なんでしょう?それを生やすなんて、そんな事は出来ませんよ(と、思う)」

『ふむ、そう思うのも無理は無い。お主は大まかな事は大雑把だが、変な所で深堀をしすぎるからのぉ。まあ今は難しく考えず、ただの治療の一環だと思ってやってみろ』
「そうですかぁ?まあリンデンさんがやれと言うならやってみますが、もし失敗したら………って、ダメですよ。今やっちゃったら、あの子達そのまま逃げちゃって、お仕置きできませんよ」
『フォッフォッフォッ』

何を笑っているんですか。
私はあの子達には、してはいけない事が有ると教えたいんです。

『何も逃げたら捕まえれば済む事。それにお主はあ奴らに名を与えたであろう。たとえ尾や翼が戻ったところで、お主が望まない限り逃げる事は叶わぬよ』
「そうなんですか?」
『そうなんじゃ』

ならば、シッポと翼を今すぐ元に戻してあげよう。
なぜ今かだって?
作業効率が良いからに決まっているじゃありませんか。

「おーいあんた達、一休みしてこっちにおいで~」

下の方で岩を運んでいたピーポちゃん達に声を掛ける。

「何すか姉さん、他に仕事でもできたんですか?」
「本当に竜づかいが荒い。やらせたい事が有るならさっさと言って下さいな」

やだなぁ、一休みしてこっちにおいでと言ったでしょうが。
もっとも仕事をしたいなら、治療してから好きなだけやらせてあげるから楽しみにしておいで。

「あんた達を治療して、シッポや羽根を返して(生やして)あげようと思います」
『『あ、姉さん!』』
「だーけーど、あんた達に言い渡しておく事が有りま~す!」
『はい?』

私がピーポちゃん達の傷を治して、逃げる隙を与える前に言っておきます。

「私があなた達に”もういいよ”と言うまでは、ピーポちゃん達は私に従いなさい」
『は?』
『姉さんはそんな事を考えていたんすか!?』

えっ、それって考えちゃいけない事だったの?
ごめんごめん、今の撤回す………。

『やはり姉さんもそうなんだ』
「はい?」
『姉さんも俺達の事を分かってくれないんだ。どうせ俺達は嫌われ者の厄介者なんだよ』

いや、好きか嫌いかと言われれば、出来の悪い子ほど可愛いと言うか、どちらかと言えば、好きの方向に針は傾いていると思いますけど。

「あんた達何か有ったの?」
『いいんだよ。どうせ俺達が話したところで、言い訳だとか言って、まともに聞いちゃくれない。話すだけ無駄なんだよ』

そう言われると、なおさら聞きたくなるのが世の常。
良いから大人しく話してごらん。

やはりリンデンさんの言っていた通りらしく、魔物が一度名を付けられれば、名付けた者が死なない限り従わなければならない。
それは名を貰った時点で、魂に刻まれるから、自ら裏切ることなどしない…出来ないそうです。
それから、この子たちのいじけていた理由は、どうやらこの子達はドラゴン界では有名な鼻つまみ者らしく、本人(?)達はそれを酷く気にしていたが、自分達を必要としてくれる者が出来たと、かなり喜んでいたらしい。
だけどさっきの私の発言で、私が”もういいよ”と言った時点で、自分たちはお払い箱になると思った。
私的にはそんなつもりは無かったんだけどね。

まあざっと、つまはじき者になった理由も聞いたんだけどね、若者のあるあると言うか、相手が悪かったと言う感じですかね。
ドラゴンの性格にもいろいろ有るのだろうが、どうやらこの子らはヤンチャが過ぎたらしい。
今は後悔しているが、世間はこの子達の起こした事を、その本性として受け止め、風当たりも強いまま。
ろくに相手をしてもらえなくなったと。
まあ中立的立場から言えば、あんた達が悪い。
いくら若気の至りとは言え、大見得切って、自分達を誇示するためドラゴンキングをぶっ叩きに行くってどうよ。
あげく、キングの前に辿り着く事も出来ず、下っ端のドラゴンに取り押さえられ、そのドラゴンの計らいで門前払いを食らったと。
それを、俺達の仕返しが怖くて、何にも出来ず解放したと吹聴した?
バカですか。
それを聞いたキングは、軽く笑い飛ばしてさらに放置。
それがまた気に食わないと、キングの住処に嫌がらせをしたり、酷いデマを流したんですか。
あんた達、大馬鹿ですか。
小さな子供だって、良い事と悪い事の区別ぐらいつきますよ。

『そんな事は分かってるよ』

業を煮やした親に監禁され、約30年ほど閉じ込められ、その岩屋の中でようやく自分の愚かさに気が付いたらしい。
まあそれに気が付き、反省したのが本当なら誉めてあげるけれど、そうなるまでに30年も掛かったってどうよ。

『あぁ、俺たちは大バカ者だよ。だが自分のやった事に気づいてから反省したんだ。だけどそれを分かってくれる奴は誰一頭もいなかった………』
「分かってもらえるよう努力はしたんだ」
『いや』
「いや?分かってもらえるように、行動を起こさなかったの?」
『反省はしたのだ。それ以上何をしろと言うのだ』

あなた達の考えはよーく分かった。
ならば私も一肌脱ごうじゃないか。

「あんた達にあれを返す事は、当分延期します」
『えー、そんな~。俺達ぬか喜びですか?』
『こんな姿を誰かに見られたら、いい笑いものだわ。言った以上約束を守ってちょうだい』
「何とでも言うがいい。私は気が変わったんだ」

こんな姿を見られたら、いい笑いものになるだと?
ならば笑ってもらおうじゃないか。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...