黒頭巾は異世界で…

雪城 いぶき

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4話 創造神

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音楽が流れワールドアナウンスが響く。

『ワールドクエストボスが討伐されました。
これよりエンディングを開始致します。


長らくWorld of Creationをご愛顧戴き誠にありがとうございました。』



あれ?目の前がぼやける…。


「主…」

オルトが私の頬に手を置き拭う。
その時になって湿っている感覚が伝わる。
このゲームは細部までこだわっているため、涙は愚か、味覚、嗅覚、感覚などリアルとそう変わらない創りとなっている。

え?あれ?…私、泣いているの?

空笑いを漏らす私に、頬につたう涙を拭ってくれるオルトは眉を八の字にさせ穏やかに微笑んでいた。

どうして?ああ、涙が止まらない。
なんで、こんなに出ちゃうの?

メイジーは早く泣き止まなきゃ…と、両袖で目元を何度も拭う。
笑顔でこのゲームを終えて、満足だった!これからリアルでも頑張ろう!って思っていたのだ。だけど…

ゲームが終わっちゃうから、こんなに悲しいの?
…違う。…それだけじゃない。


知り合ったプレイヤー達、出会ったノンプレイヤーの人達、契約してくれた仲間達……

それに、目の前にいる四人の精霊王達と……

もう……。




その事に気付いた時には、また大粒の涙が止め処なく流れ、オルトにしがみつき声をあげて泣いていた。


まだまだみんなと遊びたかった…

みんなと冒険がしたかった…

みんなと……


こんなにも、このゲームから離れたくない、無くなってほしくない。
だけど、それだけじゃない…。
人生で初めて、言葉にできない想いが込み上げてくる。






「主、大丈夫だ」

オルトにしがみつく私の後ろからガディフが力強く抱きしめる。


何が、大丈夫なの?
みんなとお別れなのに…!

涙が止まらないメイジーは駄々を捏ねる子供のようにオルトの胸でイヤイヤと左右に首を振る。
40手前だというのに恥ずかしげもなくこんなに感情を露にして、初めての感情に自分でも驚いている。


「ご主人様、まだお別れじゃあないのじゃ」

ディーネがメイジーの頭を撫でる。


ふぇ?ゔ、ゔぅ…ど、どういう事??

それでも大粒の涙は止まらない。


「ご主人様、討伐に勝利したのですよ。討伐報酬を覚えていますか?」

「しるふぃぃひっく、ひっぐぅ…ゔぅっ。ど、どう伐、ほぅ報酬?」

でも、このゲームは…



ふと思い出す。

『"異界へのチケット(移行)"

※今までの装備、アイテム、テイム、スキル、レベルなどを引き継いで異界へ行くことが出来ます。』



「主?まだ、我らと共に在りたいのであれば異界へ………」

オルトの声がだんだんと小さくなり、みんなの姿が徐々に薄れ、最後まで言葉が聞き取れなかった。
白い空間となった場所に取り残されたように私だけとなった。







周りを見渡すが、どこまでも続く白い空間でログアウトも出来ない。
まだ、目に涙を浮かべてどうしたらいいのか、ただ立ち尽くしていた。

不意に、前方から歩いてくる足音が響く。
次第に若い男性が目の前に現れた。
オーラ?のような。ポカポカするようなものを身に纏い、笑顔で話し掛けてきた。


「初めまして。アルドヘルムの創造の神、ユグドです。」

創造の神…。えーっと。GM運営さん?

「違いますよ。」

言葉にしていないんだけど…

「えぇ、そうですね。思考を読んでいます。」

えーっと、ゲームの世界だから?
それともヘッドギアの脳波でって言う…

「それも、違いますからね?」

うぉっ!?ニコニコしているのに怖い…

「え、えーっと、すみません。御家瀬ミカセ 莉緒リオです。初めまして。」

上目遣いで会釈し迷った末にアバター名ではなく本名を名乗ってみた。
目の前にいる自称神さま?は一つ頷いてくれた。

「話しが長くなりますのでお座りください。」

目の前に円卓のテーブルと椅子が現れる。

「失礼致します。」

なんとなく敬語で応えて座ると不意に香りのいい匂いが漂い視線を下ろすと、いつの間にか暖かい飲み物が用意されていて自称神さま?は茶器を指して「どうぞ。」と促してきた。


「い、いただきます。」

戦々恐々としながら飲み物を頂くのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2021年5月26日 改稿


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