【完結】無関心アルファと偽りの番関係を結んだら、抱かれないうちに壊れ始めました

紬木莉音

文字の大きさ
6 / 78
第1章

6

しおりを挟む
「最初からそういう契約だったよね。おまえと番ったのだって、おまえが俺で欲を満たすことを少しだって考えてなかったからだ」
「……っ」
「どんな心境の変化か知らないけど、その要求は飲めない。わかったらさっさと出ていって」

 全く取り合おうとしない藤城は、再び寝転がって本のページを捲り始める。
 しかし命の危機がかかっているわけで、未紘の方もそう簡単に折れるわけにはいかない。
 衝動に任せてずかずかと部屋に入ると、その手にあった本を取り上げて床に放り投げ、仰向けに寝転ぶ彼の上に覆い被さった。

「は……? 何してんの、おまえ……」

 藤城はぽかんとした顔をしていた。彼の顔の横に両手をついて、じっとその顔を見下ろす。

「抱くって言うまで出て行かねえ。無理って言うんなら力尽くでもヤってやる」

 人間というものは追い詰められると、こうも大胆な行動ができるらしい。藤城の上に乗り上げながら、自分自身の行動なのに信じられない。

 しばらくそうしていると、藤城は急に静かになった。見ればその顔は血の気が引いて真っ白になっていて、よく見ると自分の下でその手足がガタガタと震えている。
 
「っおい、どうした? なんか、顔色わる……」

 普通じゃない様子に驚いて、咄嗟にその顔に触れようとした。すると間髪入れずに、その手をぱしんと振り落とされた。

「はや、く、どけ……」

 掠れた声が耳に届いたので、未紘は慌てて藤城の上から飛び退いた。

 すると彼は口元を抑えながら蹲り、激しく背中を震わせ始めた。
 不規則な呼吸のせいで苦しそうに頭を下げている彼は、尋常じゃないほど汗をかいている。

 いつもは飄々とした様子の藤城の、こんな姿を見るのは初めてだった。

 俺のせいだ。異常事態の中でそれだけははっきりわかる。
 もしかしたら自分はとんでもない地雷を踏み抜いたのではないか。
 彼に触れることもできずに、そばで立ち尽くすことしかできなかった。

 どれぐらい経ったのだろうか。
 未紘が用意したコップ一杯分の水を一気に飲み干した藤城の顔は、ようやく少し落ち着いたようだった。

「……俺はこんな見た目だからか、昔から発情したオメガに絡まれることが異常に多くて」

 ソファーに腰掛ける彼は、どこか虚ろな瞳のまま、ぽつりぽつりと語り始めた。

「オメガに触れられると今みたいに発作が起きて、死にかける」
「……勝手なことして、ごめん」
「謝んなよ。不快なだけ」

 苦手だとは聞いていたが、ここまで酷いとは思ってもみなかった。勢いに任せて行動した自分が悔やまれる。
 肩を落とす未紘をよそに、藤城がため息混じりに言葉を続ける。

「とにかく、これでわかっただろ。俺にはおまえを抱くことはできない。金輪際俺に近寄んな」
 
 それはまるで死刑宣告のように聞こえた。
 オメガは一度番ってしまえば、二度と関係を解消することはできないのだ。番に抱いてもらえないのなら、今の未紘の場合、身の安全は保証されない。

(このまま一生怯えながら生きていくのか? そんなの耐えられねえ……)

 モヤモヤと心を曇らせながら、俯く藤城に対して何も言うことができずに、そっと彼の部屋を出るのだった。



 
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。

ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。 その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。 胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。 それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。 運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...