※完結済 【R-18】白薔薇の騎士と純白の姫

白金犬

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第1章 入学の春 編

第1話 入学式

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 王立ミュリヌス学園。

 聖アルマイト王国内に設立されたエリートが集う士官学校の中でも、極めて特別で特徴的な教育機関だった。

 まずもって最も特徴的なものは、生徒は全て女性に限定される。それは進路のことを考えれば当然のことで、本学園卒業者はそのほとんどが白薔薇騎士団――王族に連なる女性、とりわけ正妃や第1王女などといった、王室の直系に近い人物の特別親衛隊に入団することになるからだ。

 そのため、素性がはっきりしていることは言う間でもなく、家柄や血統、武芸、教養、品格など、ありとあらゆるものが、王国最高峰の厳重な評価を持って判断される。

 リアラが不足しているといえば、努力ではどうにもならない家柄や血統といった、生い立ちの部分くらいであり、他の要素は周りとしても飛びぬけているくらいだった。とはいっても、その部分で最後の最後までリアラの入学は憂慮されたのだが、結果としてリアラは「補欠合格」として、晴れてミュリヌス士官学園への入学を許されたのだった。

 今日はそんなミュリヌス学園の入学式。

 普段は戦闘の実技実習の場として使われる、円形の広場の周りに観客席が敷設されている通称「コロッセオ」にて、今期の入学生が規則正しく並んでいた。

 その新入生の群れが向いている前方の観客席――さらに、その上に用意されたテラスのような特別席から、きらびやかな金髪にティアラ、清潔清楚な純白なドレスに華奢な身体を包み、まだあどけなさが残る少女といっても差し支えない人物が、眼前の新入生たちを見下ろしていた。

「えぇと……初めまして、皆さん。聖アルマイト第2王女リリライト=リ=アルマイト、です」

 現在の白薔薇騎士団の最高責任者――つまり、白薔薇騎士団が最優先に守護すべき対象である「お姫様」だった。将来の自分の親衛隊候補達に向けて、お姫様は笑顔を向けて、精一杯の大声で入学を祝う言葉を紡いでいく。

「本当はグスタフに事前に文章を考えておくようにと言われていたのですが……あはは、すみません。こういう場で、準備した文章を読み上げる、というのは違うような気がしまして」

 と、とても王族とは思えない、くだけた言葉と表情で喋るリリライト。

 確か彼女は自分と同じ18歳だったか、とリアラは自分の知識を確認する。直接王族と関わることなどそうあることではないが、どこか近寄りがたい高貴な人間――と、一方的な印象が変わった。良い友達になれそう、と不敬なことを思わず考えたりする。

「では改めまして、皆さんご入学おめでとうございます」

 そうやって話し始めたリリライトの横では、お腹が突き出た肥満中年の男が、面白くなさそうな表情で控えていた。今しがたリリライトの言葉に出てきたグスタフ――聖アルマイトの大臣にて、第二王女リリライトの教育係を務めており、ここの学園長まで兼務している王族に次ぐ地位の持ち主である。

「これから2年間、皆さんはこの学園で色々なことを学んでいくこととなります。私も皆さんが将来、白薔薇騎士団の騎士として活躍して下さることを期待しています。辛いこともたくさんあると思いますが、それ以上に楽しいこともたくさんあると思います。あまり根を詰めないように、気楽に頑張って下さいね。そうそう、実は私と皆さんは同じ歳なんですよ。私も皆さんと一緒に勉強中なんです。政治のこととか、皆さんが幸せにこの国で暮らせるにはどうすればいいかを一生懸命勉強しています。あ、でもでも、武芸に関してはからっきしで。お父様――陛下やグスタフからは、二度と剣や槍を持ってはいけないと――」

 喋りだすや否や、どんどん言葉が出てくるリリライト。しかもその内容は、王族らしく威厳に溢れたものでも、厳しい学園生活に臨む生徒達への檄でもなく、そこらの主婦が井戸端会議をしているような軽さの内容で。

「ごほん、姫殿下――」

 放っておけば、延々としゃべり続けかねないリリライトに、グスタフが漸く声を掛ける。

「あ、ごめんなさい。私ったら。だから文章を考えておかないとダメなのね。グスタフ、ごめんなさいね」

 舌を出しながら、いたずらっぽく笑うリリライトの姿に、学生の中から僅かに笑いが漏れ出て、王族が姿を現している場にも関わらず、場の空気が弛緩していく。無論、すぐに教職員達がそれらを叱咤して引き締めるが、緩めた原因が当のリリライトのため、その効果もいまいちだった。

「面白そうなお姫様だな。思っていたより、白薔薇騎士団って、良い所かも」

 リアラはもともと優等生らしく、王族への忠義も厚く持っていたが、入学式でリリライトの人となりに一部触れたところで、より白薔薇騎士団の任務に魅力を興味を持つようになった。
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