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第3章 欲望と謀略の秋 編
第30話 甘い誘惑
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レイドモンド駐留部隊の任務は極めて順調に進んでいた。
予定の工期を遥かに前倒ししており、当初は1年かかるであろう計画が、来月か再来月あたりには王都へ戻れそうな見通しだ。
リューイを初めとした新人騎士の増員による影響もあるだろうが、そんなレイドモンド駐留部隊の功績に、その夜ダイグロフ伯爵はささやか酒宴を開いていた。
「いやー、全く……聞いてくれよ、リーファちゃん。こいつ、超可愛い恋人がいる上に、幹部連中から注目されている、将来有望株なんだぜー」
「はい、はい。聞いていますよー」
伯爵の意向で、メイド達も騎士達への酌の相手をしていた。それは伯爵の命令ではあったものの、気が良い龍牙騎士団の面々に、メイド達も嫌々というわけではない。
むしろ街のため日頃から任務に忠実な騎士達に労おうと、純粋な奉仕の心で騎士と会話をしているのがほとんどだった。
リューイの首に腕を回して絡む先輩騎士――赤い顔をしている二人の相手をしているのは、リーファだった。
「だからさ。リーファちゃんも、こんなすかしたむっつりスケベなんかより、俺にしろよー。こいつは儂が育てた」
「や、止めて下さいよ先輩。困っているじゃないですか」
「うるへー、うるへー。なんで彼女がいるお前に、更に女が寄ってくるんだよ。世の中不公平過ぎるだろ」
酒臭い息を撒き散らしながら、くだをまく先輩騎士。リューイは横目で、謝るように手を立てると、リーファは楽しそうに笑う。
面倒くさい酔っ払いの相手――それは事実ではあったが、リーファも決して嫌ではなかった。彼女も他の面々と同様に、街のために任務に従事してくれている騎士達に感謝しているのだ。
そしてそれとは別に、たまたまではあるが特別お気に入りであるリューイの相手が出来たことにも望外の喜びを感じていた。
「でもぉ、夕方の鍛錬は私も見てましたよぉ。剣術のことは分かりませんでしたけど、私から見てもリューイさん、格好良かったなぁ」
「ははは、ありがと」
「けーっ! なんでお前ばっかり! リーファちゃん、こいつのことはどうでもいいんだよぉ! それより、俺がいかにイカしている男かを夜を明かすまで語り明かそうぜ! いかだけに、以下略。ぐははははっ! どうせ、俺達ぁ明日休みだからよ」
「いやいや、彼女は普通に明日も仕事ですから」
リューイが冷静に突っ込めば突っ込む程、さらに悪酔いする先輩騎士。
そういうリューイ本人も、かなり酒が入っているようで顔はすっかり紅潮している。それでも冷静に見えるのは、アルコールに強い体質なのだろう。
「さあ、リューイさんもたくさん飲んで下さいね。今日は伯爵様の大盤振る舞いですから。遠慮なさらずに」
そう言いながら、リーファは熱っぽい瞳をリューイに向けながら、並々と薄ピンク色の酒をグラスに注ぎ、彼に差し出した。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
そんなわけで夜も深まり、宴もたけなわになった時分。
ハメを外せる滅多にない機会に、普段は真面目な者が多い龍牙騎士団の面々も深酒する者が多かった。酒宴の会場となったダイグロフ伯爵の屋敷から兵舎で戻ることが出来ない程酩酊した者も多く、この夜は伯爵の好意で屋敷内に部屋をあてがわれる程だった。
悪酔いをしてリューイに絡んでいた先輩騎士もそのうちの一人。すっかり酔いつぶれて、部屋に運び込まれていた。
一方のリューイといえば、アルコールはかなり入っていたものの、意識は冴えており足取りもしっかりしていたので兵舎に戻ることにした。
「悪いね、リーファ。わざわざ見送りだなんて」
「いーえー。これもメイドとして当然のことです」
流れ解散となったため、兵舎に帰る騎士達もまばらになっていた。
まだ酒宴場でメイドと酒を飲んでいる騎士もいるし、リューイのように兵舎に帰る騎士も、酔いつぶれて屋敷の用意された部屋に運び込まれる騎士もいた。
リューイは屋敷内をリーファに案内される形で、二人歩いている。
「でも、本当にリューイさん格好良かったなぁ。惚れ直しちゃいますよ」
リーファは酒が入っていないはずだが、それでも顔を赤くしながらうっとりとした表情でリューイにそうこぼす。それは明らかに恋する乙女といった表情。
「あ、あのなぁ。前も言ったけど、俺には」
「ええ、ええ。分かってますよ。あのリンデブルグ家のご令嬢が恋人なんですよねー。先輩さんも言ってましたけど、休み中は毎日のように――むぐぐ」
「女の子がそういうことを言うなって!」
下品なことを口走ろうとしたリーファの口を咄嗟におさえるリューイ。慌てて周囲を見回すが、人通りはないようだ。
「ったく、あの人は本当教育に悪いよなぁ」
自分達より年下の少女に嬉々としながら要らない知識を吹き込む先輩騎士の顔を思い浮かべながら、リューイはリーファの口を抑えた手を離す。
「えへへ、冗談ですよ」
悪気なく、無邪気な笑みを浮かべるリーファに、リューイは苦笑する。
「でも、ありがとうリーファ。格好いいっていうのは、真面目な話――ものすごく嬉しいよ」
「え」
アルコールで赤くした顔を向けながら、リューイは柔らかい笑顔のまま真面目な口調でそう言う。
「俺、いっつもあいつに――リアラに釣り合わないんじゃないかって気にしてたんだけど、ちゃんと成長している。強くなっている。今は全然追い付いていないけど、でもきっと追い付いてみせる。今日、それが実感出来て……すごい嬉しかったんだ」
「リューイさん……」
部隊長から称えられて、今日の仕事が終わってから訪れた圧倒的な達成感。上司相手に互角上に渡りあうことが出来たという事実は、彼に強く自信を抱かせた。
「これも全部、リアラのおかげだな。今度の休みに会ったら、ちゃんとお礼を言わないとな」
そんな自信に満ち溢れたリューイの顔を、ボーっと見蕩れていたリーファ。彼の口から恋人の名前が、嬉しそうで照れたような口調で吐き出されると、途端にリーファの表情は悲しみに曇る。
そして不意に、リーファはリューイに体当たりをするようにして、二人が通りかかった通路のわきにある扉の中に押し込む。
「――っわ? り、リーファ?」
体重の軽いリーファだったが、アルコールでわずかながら足腰がフラついていたのもあり、そのまま扉の中に入る二人。
そこは男性用トイレ。リーファは強引にリューイの手を取ると、個室の一つへ彼を連れ込む。そして素早い手つきで鍵を閉めて、彼を便座に座らせた。
「ち、ちょっと? 何だよ?」
「私、リューイさんのことが好きです。愛しています」
「いやだから……って、うわっ?」
す…と、リーファのか細い手がリューイの内股をなぞるように添えられる。焦らすように徐々に根元の方へ上がっていくその手は、衣服の上からそっとその熱くなっている部分に触れる。
「っう!」
そこは既にいきり立っていた。正に「ズボンがテントを張っている」状態。その身体の正直さに、リーファはくすくすと笑いを零す。
「やっぱり、溜まっているんですね」
「いや、ちが……わないけど。だけど、君にこんなことをしてもらうわけには……あううっ!」
ズボンの盛り上がっている部分を、指でなぞるようにされながら刺激されると、リューイは全身が脱力する。
いけないとは思いつつも、アルコールが回ってぼやけた思考、そして長いこと女性に触れていなかったことの欲求不満さが、リューイから理性を奪い取ろうとしていた。
「いいんですよ。ここでは正直になって下さい。彼女さんも見ていないんですから」
「や、止めっ……!」
まだ少女といっていいほどのリーファが妖艶な笑みを浮かべながら、リューイのズボンのベルトを緩ませて、ずり下げていく。いっぱしの騎士、しかも上司を凌ぐ程の実力を持っているはずのリューイは、そんな彼女に何の抵抗も出来ない。
下着ごとズボンをずりおろされるリューイ。
既に硬くいきり立っており、その存在を誇張するのように猛々しく勃起している肉棒が晒される。リーファは思わず、ほぅ…とため息を吐いた。
「すごく大きい……私が触って、興奮してくれているんですね。嬉しい」
「ば、馬鹿なことは止めろ……ああっ!」
リーファはその細い指を絡めるようにして肉棒を握ると、そのまま優しく上下に擦り始める。そしてもう片方の手でシャツの裾をまくりあげると、リューイの下腹部のあたりから舌を這わせていく。
「んっ……ううぅ……り、リーファ止めてくれ……頼む。俺には……」
リーファから与えられる刺激に頭がもうろうとするリューイ。このまま快感に身を任せてしまいたいという欲望に思考を絡め取られそうになる。
『浮気なんかしちゃやだよぅ?』
不意に思い出される、リアラの顔と声。
休みが終わりヴァルガンダル家を離れる際、リアラが珍しく甘えるような顔でそういった。
リアラは自分を信じてくれている。浮気をするなどと微塵にも考えていないだろ――それでも距離が離れていれば、不安で溜まらないのだろう。
そんな彼女を裏切って、騎士の立場で領主の使用人とこのような行為を――
「れろぉっ……」
「っ! っくう!」
しかし、そんなリューイの思考は中断される。
腹部から上に上がってきたリーファの舌が、リューイの乳首にたどり着き、そこを舐め上げたのだ。びくりと身体が反応したリューイは、肉棒をより硬くさせる。
「ぅぐ……ど、どうしてこんなにっ!」
男所帯の上、同じ部屋に4~5人で寝泊まりしているのだ。プライベートな時間などほぼ皆無で、欲求不満であることは認める。
だが、それを差し引いたとしても、これほどに興奮しているのは違和感があった。
欲求不満な状態で異性に迫られれば生理現象として反応してしまうのは仕方ないにしろ、何故これほどまでに抵抗出来ないのだろうか。
正直言えば、リアラのことが無ければ押し倒しているに違いない、と自覚する程だった。
そんなリューイの戸惑いを察してか、リーファは悪だくみが上手くいった子供のような笑みを向けてくる。
「リューイさんのお酒に、フルネイドという華の蜜を混ぜたんですよ。その蜜は、男女問わずに発情を促進させる媚薬効果があって、副作用はないという優れものなんですよ」
てへ、と舌を出すリーファ。
それは悪戯というには少々悪質が過ぎるではないか。彼女を叱責しようと、彼女を押しのけようと手を伸ばすリューイ。
「ちゅううううぅ……」
「あああっ…!」
しかし、リーファが唇でリューイの乳首を吸い上げるようにしてしまえば、リューイは悶えるような喘ぎ声を漏らしてしまい、抵抗を奪われる。
「どうですか? 気持ちいいでしょう? 私、昔は奴隷だったんで、こういった経験も技術も、普通の女の子よりも豊富なんですよ」
「……え?」
唐突に自らの生い立ちを告白するリーファ。彼女は相変わらず相手を誘惑するような妖艶な表情をしていたが、過去を口にすることで僅かに暗い色も落ちているようだった。
現国王ヴィジオール=ド=アルマイトが7代目の国王となった際、それまで認められていた人身売買は禁止されるようになった。
しかしそれによって利益を享受していた奴隷商人たちがすんなりとそんな変化を受け入れられるはずはなく、それは秘密裏に行われるようになっていく。
そういった歴史があり、近年になってからは聖アルマイト王国内の人身売買は激減し、奴隷制度はもう過去の物として、無くなりつつあった。それでも完全な根絶には至っていない。
「レイドモンド領内にも質の悪い奴隷商人が蔓延っていたんです。そいつらが、伯爵様によからぬ取引を持ち掛けたんですが、伯爵さまは激昂されて逆に奴隷商人の組合を取り締まったんです。それで商品だった私は、伯爵様に拾われてこうしているわけなんですよ」
「そ、そうだったのか」
なんだか今の状況にそぐわない、何とも重苦しい話だ。ごく平凡な平民として、ごく平凡に親の愛を受けて育ってきたリューイは相づちを返すことしかできない。
「だから嬉しいんです。汚い親父に無理やり奉仕させられるのではなく、愛しいと思える人に悦んでもらえるのが……あむ……ちゅば……」
「うっ……ああっ! り、リーファ……!」
そうして再びリーファは愛撫を始めていく。肉棒を擦りながら、乳首をしゃぶるように、唇をすぼめて吸い上げていく。
そんなリーファの手つきや舌遣いは、男が感じるツボをしっかりと捉えている。それは彼女が望んだものではないのだろうが、様々な男を相手にして身に付いたものなのだろう。
彼女の不幸な生い立ちに同情を禁じえないと同時に、献身的な思い。それに加えて、見た目のあどけなさとは対照的な官能的で卑猥な手管。
欲求不満なリューイは、それらに抗えるはずはなかった。胸を愛撫てくるリーファの頭を撫でるようにしながら、抱え込んでいた。
「嬉しい……リューイさん」
リューイが自分の奉仕を、快感を受け入れてくれたことに、狂喜するリーファ。そうなると更にリューイを愛する奉仕にも熱が入ってくる。
「ちゅば……ちゅ……れろれろっ……あむぅ」
唇で吸うだけではなく、硬くなった乳首を舌先で転がすように刺激する。そして更に音を立てながら強く吸引すると、肉棒を擦っている手からはクチュクチュという淫猥な音が響き始める。
「どうですか? 彼女さんはこんなことしてくれないんじゃないですか? セックスは挿入だけじゃないんですよ。私なら、リューイさんにたくさん気持ちいいことを教えて上げられますよ……はむ」
リューイの耳元で熱い吐息を吹きかけながら言う。勿論肉棒を刺激する手は止まっていない。先走りの音を立てながら、リーファはリューイの耳たぶをしゃぶるように舐る。
「私の手……気持ちいいですか?」
「うあっ……ああぁっ! き、気持ちいいっ!」
激しくなるリーファの手つきに、リューイは思わず快感の言葉を吐き出す。それは健康な一般男子であればどうしようもないことだ。それ程までにリーファの言葉や手管は、妖艶で卑猥で官能的だった。
「リーファ……も、もう俺……出るっ……!」
「いいですよ、リューイさん。イッて……私の手で……っ!」
リューイが限界の声を上げると、リーファはそのまま彼を射精に導くように、手の動きを激しくさせていく。
先走りが奏でる淫猥な音。
リーファはお互いの息が届く程の距離に顔を近づけると、ジッとリューイの瞳を見つめる。トロンと蕩けた瞳で。
「大好きです。愛してます、リューイさん」
「うあっ……ぁああっ! い、イク……!」
そしてリーファの手で、リューイは肉棒から欲望の塊を噴き出すように吐き出した。カクカクと腰を震わせながら、勢いよく発射される白濁はリーファの手を汚しながら、個室の扉にこびりついていく。
「はぁー、はぁー……」
興奮したせいか酔いも一気に回り、そのまま便座に座ったままぐったりと脱力するリューイ。
手だけの奉仕だというのに、リアラとの行為とは、快感も充実感もまるで違った。射精による快感の余韻の中、リューイはそれを認めざるを得なかった。
「ふふ……これではリューイさんも今夜はお屋敷でお休みになった方がいいですね。お部屋はありますから大丈夫ですよ」
ニッコリと笑いながら、リーファは額同士を触れ合わせる。
「これで今夜はゆっくり眠れますね。――大好きです、リューイさん」
そのままリーファは顔を近づけていき、自らの唇をリューイの唇に押し付けていった。
予定の工期を遥かに前倒ししており、当初は1年かかるであろう計画が、来月か再来月あたりには王都へ戻れそうな見通しだ。
リューイを初めとした新人騎士の増員による影響もあるだろうが、そんなレイドモンド駐留部隊の功績に、その夜ダイグロフ伯爵はささやか酒宴を開いていた。
「いやー、全く……聞いてくれよ、リーファちゃん。こいつ、超可愛い恋人がいる上に、幹部連中から注目されている、将来有望株なんだぜー」
「はい、はい。聞いていますよー」
伯爵の意向で、メイド達も騎士達への酌の相手をしていた。それは伯爵の命令ではあったものの、気が良い龍牙騎士団の面々に、メイド達も嫌々というわけではない。
むしろ街のため日頃から任務に忠実な騎士達に労おうと、純粋な奉仕の心で騎士と会話をしているのがほとんどだった。
リューイの首に腕を回して絡む先輩騎士――赤い顔をしている二人の相手をしているのは、リーファだった。
「だからさ。リーファちゃんも、こんなすかしたむっつりスケベなんかより、俺にしろよー。こいつは儂が育てた」
「や、止めて下さいよ先輩。困っているじゃないですか」
「うるへー、うるへー。なんで彼女がいるお前に、更に女が寄ってくるんだよ。世の中不公平過ぎるだろ」
酒臭い息を撒き散らしながら、くだをまく先輩騎士。リューイは横目で、謝るように手を立てると、リーファは楽しそうに笑う。
面倒くさい酔っ払いの相手――それは事実ではあったが、リーファも決して嫌ではなかった。彼女も他の面々と同様に、街のために任務に従事してくれている騎士達に感謝しているのだ。
そしてそれとは別に、たまたまではあるが特別お気に入りであるリューイの相手が出来たことにも望外の喜びを感じていた。
「でもぉ、夕方の鍛錬は私も見てましたよぉ。剣術のことは分かりませんでしたけど、私から見てもリューイさん、格好良かったなぁ」
「ははは、ありがと」
「けーっ! なんでお前ばっかり! リーファちゃん、こいつのことはどうでもいいんだよぉ! それより、俺がいかにイカしている男かを夜を明かすまで語り明かそうぜ! いかだけに、以下略。ぐははははっ! どうせ、俺達ぁ明日休みだからよ」
「いやいや、彼女は普通に明日も仕事ですから」
リューイが冷静に突っ込めば突っ込む程、さらに悪酔いする先輩騎士。
そういうリューイ本人も、かなり酒が入っているようで顔はすっかり紅潮している。それでも冷静に見えるのは、アルコールに強い体質なのだろう。
「さあ、リューイさんもたくさん飲んで下さいね。今日は伯爵様の大盤振る舞いですから。遠慮なさらずに」
そう言いながら、リーファは熱っぽい瞳をリューイに向けながら、並々と薄ピンク色の酒をグラスに注ぎ、彼に差し出した。
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そんなわけで夜も深まり、宴もたけなわになった時分。
ハメを外せる滅多にない機会に、普段は真面目な者が多い龍牙騎士団の面々も深酒する者が多かった。酒宴の会場となったダイグロフ伯爵の屋敷から兵舎で戻ることが出来ない程酩酊した者も多く、この夜は伯爵の好意で屋敷内に部屋をあてがわれる程だった。
悪酔いをしてリューイに絡んでいた先輩騎士もそのうちの一人。すっかり酔いつぶれて、部屋に運び込まれていた。
一方のリューイといえば、アルコールはかなり入っていたものの、意識は冴えており足取りもしっかりしていたので兵舎に戻ることにした。
「悪いね、リーファ。わざわざ見送りだなんて」
「いーえー。これもメイドとして当然のことです」
流れ解散となったため、兵舎に帰る騎士達もまばらになっていた。
まだ酒宴場でメイドと酒を飲んでいる騎士もいるし、リューイのように兵舎に帰る騎士も、酔いつぶれて屋敷の用意された部屋に運び込まれる騎士もいた。
リューイは屋敷内をリーファに案内される形で、二人歩いている。
「でも、本当にリューイさん格好良かったなぁ。惚れ直しちゃいますよ」
リーファは酒が入っていないはずだが、それでも顔を赤くしながらうっとりとした表情でリューイにそうこぼす。それは明らかに恋する乙女といった表情。
「あ、あのなぁ。前も言ったけど、俺には」
「ええ、ええ。分かってますよ。あのリンデブルグ家のご令嬢が恋人なんですよねー。先輩さんも言ってましたけど、休み中は毎日のように――むぐぐ」
「女の子がそういうことを言うなって!」
下品なことを口走ろうとしたリーファの口を咄嗟におさえるリューイ。慌てて周囲を見回すが、人通りはないようだ。
「ったく、あの人は本当教育に悪いよなぁ」
自分達より年下の少女に嬉々としながら要らない知識を吹き込む先輩騎士の顔を思い浮かべながら、リューイはリーファの口を抑えた手を離す。
「えへへ、冗談ですよ」
悪気なく、無邪気な笑みを浮かべるリーファに、リューイは苦笑する。
「でも、ありがとうリーファ。格好いいっていうのは、真面目な話――ものすごく嬉しいよ」
「え」
アルコールで赤くした顔を向けながら、リューイは柔らかい笑顔のまま真面目な口調でそう言う。
「俺、いっつもあいつに――リアラに釣り合わないんじゃないかって気にしてたんだけど、ちゃんと成長している。強くなっている。今は全然追い付いていないけど、でもきっと追い付いてみせる。今日、それが実感出来て……すごい嬉しかったんだ」
「リューイさん……」
部隊長から称えられて、今日の仕事が終わってから訪れた圧倒的な達成感。上司相手に互角上に渡りあうことが出来たという事実は、彼に強く自信を抱かせた。
「これも全部、リアラのおかげだな。今度の休みに会ったら、ちゃんとお礼を言わないとな」
そんな自信に満ち溢れたリューイの顔を、ボーっと見蕩れていたリーファ。彼の口から恋人の名前が、嬉しそうで照れたような口調で吐き出されると、途端にリーファの表情は悲しみに曇る。
そして不意に、リーファはリューイに体当たりをするようにして、二人が通りかかった通路のわきにある扉の中に押し込む。
「――っわ? り、リーファ?」
体重の軽いリーファだったが、アルコールでわずかながら足腰がフラついていたのもあり、そのまま扉の中に入る二人。
そこは男性用トイレ。リーファは強引にリューイの手を取ると、個室の一つへ彼を連れ込む。そして素早い手つきで鍵を閉めて、彼を便座に座らせた。
「ち、ちょっと? 何だよ?」
「私、リューイさんのことが好きです。愛しています」
「いやだから……って、うわっ?」
す…と、リーファのか細い手がリューイの内股をなぞるように添えられる。焦らすように徐々に根元の方へ上がっていくその手は、衣服の上からそっとその熱くなっている部分に触れる。
「っう!」
そこは既にいきり立っていた。正に「ズボンがテントを張っている」状態。その身体の正直さに、リーファはくすくすと笑いを零す。
「やっぱり、溜まっているんですね」
「いや、ちが……わないけど。だけど、君にこんなことをしてもらうわけには……あううっ!」
ズボンの盛り上がっている部分を、指でなぞるようにされながら刺激されると、リューイは全身が脱力する。
いけないとは思いつつも、アルコールが回ってぼやけた思考、そして長いこと女性に触れていなかったことの欲求不満さが、リューイから理性を奪い取ろうとしていた。
「いいんですよ。ここでは正直になって下さい。彼女さんも見ていないんですから」
「や、止めっ……!」
まだ少女といっていいほどのリーファが妖艶な笑みを浮かべながら、リューイのズボンのベルトを緩ませて、ずり下げていく。いっぱしの騎士、しかも上司を凌ぐ程の実力を持っているはずのリューイは、そんな彼女に何の抵抗も出来ない。
下着ごとズボンをずりおろされるリューイ。
既に硬くいきり立っており、その存在を誇張するのように猛々しく勃起している肉棒が晒される。リーファは思わず、ほぅ…とため息を吐いた。
「すごく大きい……私が触って、興奮してくれているんですね。嬉しい」
「ば、馬鹿なことは止めろ……ああっ!」
リーファはその細い指を絡めるようにして肉棒を握ると、そのまま優しく上下に擦り始める。そしてもう片方の手でシャツの裾をまくりあげると、リューイの下腹部のあたりから舌を這わせていく。
「んっ……ううぅ……り、リーファ止めてくれ……頼む。俺には……」
リーファから与えられる刺激に頭がもうろうとするリューイ。このまま快感に身を任せてしまいたいという欲望に思考を絡め取られそうになる。
『浮気なんかしちゃやだよぅ?』
不意に思い出される、リアラの顔と声。
休みが終わりヴァルガンダル家を離れる際、リアラが珍しく甘えるような顔でそういった。
リアラは自分を信じてくれている。浮気をするなどと微塵にも考えていないだろ――それでも距離が離れていれば、不安で溜まらないのだろう。
そんな彼女を裏切って、騎士の立場で領主の使用人とこのような行為を――
「れろぉっ……」
「っ! っくう!」
しかし、そんなリューイの思考は中断される。
腹部から上に上がってきたリーファの舌が、リューイの乳首にたどり着き、そこを舐め上げたのだ。びくりと身体が反応したリューイは、肉棒をより硬くさせる。
「ぅぐ……ど、どうしてこんなにっ!」
男所帯の上、同じ部屋に4~5人で寝泊まりしているのだ。プライベートな時間などほぼ皆無で、欲求不満であることは認める。
だが、それを差し引いたとしても、これほどに興奮しているのは違和感があった。
欲求不満な状態で異性に迫られれば生理現象として反応してしまうのは仕方ないにしろ、何故これほどまでに抵抗出来ないのだろうか。
正直言えば、リアラのことが無ければ押し倒しているに違いない、と自覚する程だった。
そんなリューイの戸惑いを察してか、リーファは悪だくみが上手くいった子供のような笑みを向けてくる。
「リューイさんのお酒に、フルネイドという華の蜜を混ぜたんですよ。その蜜は、男女問わずに発情を促進させる媚薬効果があって、副作用はないという優れものなんですよ」
てへ、と舌を出すリーファ。
それは悪戯というには少々悪質が過ぎるではないか。彼女を叱責しようと、彼女を押しのけようと手を伸ばすリューイ。
「ちゅううううぅ……」
「あああっ…!」
しかし、リーファが唇でリューイの乳首を吸い上げるようにしてしまえば、リューイは悶えるような喘ぎ声を漏らしてしまい、抵抗を奪われる。
「どうですか? 気持ちいいでしょう? 私、昔は奴隷だったんで、こういった経験も技術も、普通の女の子よりも豊富なんですよ」
「……え?」
唐突に自らの生い立ちを告白するリーファ。彼女は相変わらず相手を誘惑するような妖艶な表情をしていたが、過去を口にすることで僅かに暗い色も落ちているようだった。
現国王ヴィジオール=ド=アルマイトが7代目の国王となった際、それまで認められていた人身売買は禁止されるようになった。
しかしそれによって利益を享受していた奴隷商人たちがすんなりとそんな変化を受け入れられるはずはなく、それは秘密裏に行われるようになっていく。
そういった歴史があり、近年になってからは聖アルマイト王国内の人身売買は激減し、奴隷制度はもう過去の物として、無くなりつつあった。それでも完全な根絶には至っていない。
「レイドモンド領内にも質の悪い奴隷商人が蔓延っていたんです。そいつらが、伯爵様によからぬ取引を持ち掛けたんですが、伯爵さまは激昂されて逆に奴隷商人の組合を取り締まったんです。それで商品だった私は、伯爵様に拾われてこうしているわけなんですよ」
「そ、そうだったのか」
なんだか今の状況にそぐわない、何とも重苦しい話だ。ごく平凡な平民として、ごく平凡に親の愛を受けて育ってきたリューイは相づちを返すことしかできない。
「だから嬉しいんです。汚い親父に無理やり奉仕させられるのではなく、愛しいと思える人に悦んでもらえるのが……あむ……ちゅば……」
「うっ……ああっ! り、リーファ……!」
そうして再びリーファは愛撫を始めていく。肉棒を擦りながら、乳首をしゃぶるように、唇をすぼめて吸い上げていく。
そんなリーファの手つきや舌遣いは、男が感じるツボをしっかりと捉えている。それは彼女が望んだものではないのだろうが、様々な男を相手にして身に付いたものなのだろう。
彼女の不幸な生い立ちに同情を禁じえないと同時に、献身的な思い。それに加えて、見た目のあどけなさとは対照的な官能的で卑猥な手管。
欲求不満なリューイは、それらに抗えるはずはなかった。胸を愛撫てくるリーファの頭を撫でるようにしながら、抱え込んでいた。
「嬉しい……リューイさん」
リューイが自分の奉仕を、快感を受け入れてくれたことに、狂喜するリーファ。そうなると更にリューイを愛する奉仕にも熱が入ってくる。
「ちゅば……ちゅ……れろれろっ……あむぅ」
唇で吸うだけではなく、硬くなった乳首を舌先で転がすように刺激する。そして更に音を立てながら強く吸引すると、肉棒を擦っている手からはクチュクチュという淫猥な音が響き始める。
「どうですか? 彼女さんはこんなことしてくれないんじゃないですか? セックスは挿入だけじゃないんですよ。私なら、リューイさんにたくさん気持ちいいことを教えて上げられますよ……はむ」
リューイの耳元で熱い吐息を吹きかけながら言う。勿論肉棒を刺激する手は止まっていない。先走りの音を立てながら、リーファはリューイの耳たぶをしゃぶるように舐る。
「私の手……気持ちいいですか?」
「うあっ……ああぁっ! き、気持ちいいっ!」
激しくなるリーファの手つきに、リューイは思わず快感の言葉を吐き出す。それは健康な一般男子であればどうしようもないことだ。それ程までにリーファの言葉や手管は、妖艶で卑猥で官能的だった。
「リーファ……も、もう俺……出るっ……!」
「いいですよ、リューイさん。イッて……私の手で……っ!」
リューイが限界の声を上げると、リーファはそのまま彼を射精に導くように、手の動きを激しくさせていく。
先走りが奏でる淫猥な音。
リーファはお互いの息が届く程の距離に顔を近づけると、ジッとリューイの瞳を見つめる。トロンと蕩けた瞳で。
「大好きです。愛してます、リューイさん」
「うあっ……ぁああっ! い、イク……!」
そしてリーファの手で、リューイは肉棒から欲望の塊を噴き出すように吐き出した。カクカクと腰を震わせながら、勢いよく発射される白濁はリーファの手を汚しながら、個室の扉にこびりついていく。
「はぁー、はぁー……」
興奮したせいか酔いも一気に回り、そのまま便座に座ったままぐったりと脱力するリューイ。
手だけの奉仕だというのに、リアラとの行為とは、快感も充実感もまるで違った。射精による快感の余韻の中、リューイはそれを認めざるを得なかった。
「ふふ……これではリューイさんも今夜はお屋敷でお休みになった方がいいですね。お部屋はありますから大丈夫ですよ」
ニッコリと笑いながら、リーファは額同士を触れ合わせる。
「これで今夜はゆっくり眠れますね。――大好きです、リューイさん」
そのままリーファは顔を近づけていき、自らの唇をリューイの唇に押し付けていった。
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