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4日目【プロローグ編】
4日目が始まって、シルフィとアステリアはそれぞれ……
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翌日の朝早い時間帯、シルフィは王都から出立した馬車に乗っていた。
「♪~♪~」
メンズから提供された交通費で乗る馬車は、いつもシルフィとアステリアが使うような大衆用の馬車ではない。貴族が利用するような富裕層向けの贅沢車で、乗り心地も段違いだった。
シルフィは窓際の席でご機嫌な様子で、流れていく景色を見ながら鼻歌を歌っていた。
「あらあら、お嬢ちゃん。大きな荷物で、大変そうねぇ」
そうやってシルフィの近くに座って話しかけてきたのは、上品そうな中年女性である。いかにも上流階級そうな、綺麗で美しい。
「お嬢ちゃんは、どこに行くのかしら?」
中年女性は1人なのだろうか、シルフィに話し相手になって欲しいようだった。シルフィも愛想がよく人見知りもしない性格であるし、自分も1人であったため大歓迎だった。
「メイフルの村です。王都まで出稼ぎに出ていて、今から帰省するんですよ」
「まあまあ。あんな遠くから。大変ねぇ」
ニコニコと会話をしてくるシルフィの様子に、中年女性も気を良くしたようである。そのまま色々と取り留めのない世間話などを始めていく。
「それじゃあ、その荷物は王都でのお仕事のものかしら?」
それも何気ない雑談の1つである。なんともなしの、その中年女性の質問を聞いたシルフィは、最初はきょとんとしたような顔をする。
そしてその次の瞬間、その幼さが残る容貌には不似合いな妖艶な笑みを浮かべると。
「うん♡ 皆が幸せになれるお薬がた~くさん入ってるの♡」
そのシルフィの表情は、中年女性すら動揺する程のものを孕んでいた。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
一方王都に取り残されたアステリアは、宿の中で昼前まで惰眠を貪っていた。
「--こんな堕落した生活を……私……」
このところ、あのオイルマッサージ店やシルフィとの行為で日中は疲れ果てて、昼間で寝てから再び快楽を貪るという、最悪の生活リズムになってしまっていることに、危機感を抱くアステリア。
「シルフィは……?」
まだうすぼんやりとする意識のまま部屋の中を見渡すが、シルフィの姿は見当たらない。
ぼーっとしながら部屋中へ視線を巡らせていると、部屋の中央にある机の上にメモ用紙が置いてあるのに気づく。そこにはシルフィと思しき筆跡で
『ちょっと用事が出来たから何日か出掛けるね。アスティは宿で待ってて。まだお金は大丈夫だったよね? 詳しくは帰ってから話すね』
これまでずっと行動を共にしていた親友が何も言わずにこれだけで姿を消すなど不自然過ぎる話だった。
何か事件でも巻き込まれたのだろうか。人が多く悪意も渦巻くこの王都では、凶悪な犯罪に巻き込まれることも珍しくない。探しに行った方がいいのだろうか。
本来ならそう考えるべきところだが
(これで、もっと王都に居られる)
アステリアは思わずそんなことを考えられる。
親友がいなくなったこと、その不自然な理由よりも先に、今のような堕落した生活が続くことに思わず胸をときめかせてしまうのだ。
「ち、違うわ。そうじゃなくて……」
と、慌てて我に戻るアステリア。
今はそれどころじゃない。明らかにおかしいじゃないか。王都の警備兵なりに相談して、シルフィの消息を突き止めるべきだ。
何か手掛かりがないかどうかメモを見渡すアステリアは、とある一文に目が留まる。
『まだお金は大丈夫だったよね?』
「……」
実は、昨日のキモヲとのコースで、結構な金額を取られてしまっていた。
今回シルフィと一緒にこなしたクエストは、昨年に災害を受けた故郷ーーメイフル村の復興資金に充てる資金のためにこなしており、それなりにまとまった資金があった。
今手持ちに残っている分そのままであれば、まだ自分のお小遣いとして大目にもらってしまった、と説明するくらいで納得してもらえるほどだ。しかし、もしも今日もあのマッサージ店に行って、例のコースに入ってしまえば、故郷の村に入れる資金どころか、この宿の延長宿泊すら、ままならなくなってしまう。
「な、何を考えているの。有り得ないじゃない。それよりもシルフィを探さないと」
アステリアはブンブンと首を振ってメモを机に戻そうとする--その時に、それまでは見落としていた一文を発見してしまう。
『P.S.私がいない間に、メンズを予約したらダメだよ。私達、付き合うことにしたから』
隣で肉欲に狂いながらも、シルフィとメンズの甘い声は聞こえていた。そこで囁かれていたのは、欲望にまみれた自分の言葉とはまるで違う、甘い恋人同士のような会話だった。その1日前まで、アステリアとメンズがそうしていたような……
「う、嘘……メンズさんとシルフィが……?」
想いを寄せていたメンズをシルフィに取られたような感じがして、胸が締め付けられる。
(ち、違うわ。何を考えているの。そもそも私にはアルがいるじゃない)
顔を真っ赤にして、自分の中に出てきた醜い感情を必死に否定する。
そうだ。自分には心から愛している大切な人がいる。他の男など持っての他だ。むしろ大事な親友に恋人が出来たというなら一緒に喜ぶべきだ。
自分にはアルバードという恋人がいる。
(メンズさんとのセックスも、気持ち良かった……♡)
ぼーっとしながら、アステリアは無意識のうちに手を自らの下腹部に伸ばしていく。最も敏感な女性の部分は既に熱を帯びており、ショーツの上からそっと触れと、クチュリと濡れているのが分かる。
「友達の彼氏とセックスしたら……どんな気持ちなんだろう……」
熱に浮かされた蕩けたような表情を浮かべるアステリアは、よろよろと立ち上がると、マッサージ店へ行く準備を始めるのだった。
「♪~♪~」
メンズから提供された交通費で乗る馬車は、いつもシルフィとアステリアが使うような大衆用の馬車ではない。貴族が利用するような富裕層向けの贅沢車で、乗り心地も段違いだった。
シルフィは窓際の席でご機嫌な様子で、流れていく景色を見ながら鼻歌を歌っていた。
「あらあら、お嬢ちゃん。大きな荷物で、大変そうねぇ」
そうやってシルフィの近くに座って話しかけてきたのは、上品そうな中年女性である。いかにも上流階級そうな、綺麗で美しい。
「お嬢ちゃんは、どこに行くのかしら?」
中年女性は1人なのだろうか、シルフィに話し相手になって欲しいようだった。シルフィも愛想がよく人見知りもしない性格であるし、自分も1人であったため大歓迎だった。
「メイフルの村です。王都まで出稼ぎに出ていて、今から帰省するんですよ」
「まあまあ。あんな遠くから。大変ねぇ」
ニコニコと会話をしてくるシルフィの様子に、中年女性も気を良くしたようである。そのまま色々と取り留めのない世間話などを始めていく。
「それじゃあ、その荷物は王都でのお仕事のものかしら?」
それも何気ない雑談の1つである。なんともなしの、その中年女性の質問を聞いたシルフィは、最初はきょとんとしたような顔をする。
そしてその次の瞬間、その幼さが残る容貌には不似合いな妖艶な笑みを浮かべると。
「うん♡ 皆が幸せになれるお薬がた~くさん入ってるの♡」
そのシルフィの表情は、中年女性すら動揺する程のものを孕んでいた。
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一方王都に取り残されたアステリアは、宿の中で昼前まで惰眠を貪っていた。
「--こんな堕落した生活を……私……」
このところ、あのオイルマッサージ店やシルフィとの行為で日中は疲れ果てて、昼間で寝てから再び快楽を貪るという、最悪の生活リズムになってしまっていることに、危機感を抱くアステリア。
「シルフィは……?」
まだうすぼんやりとする意識のまま部屋の中を見渡すが、シルフィの姿は見当たらない。
ぼーっとしながら部屋中へ視線を巡らせていると、部屋の中央にある机の上にメモ用紙が置いてあるのに気づく。そこにはシルフィと思しき筆跡で
『ちょっと用事が出来たから何日か出掛けるね。アスティは宿で待ってて。まだお金は大丈夫だったよね? 詳しくは帰ってから話すね』
これまでずっと行動を共にしていた親友が何も言わずにこれだけで姿を消すなど不自然過ぎる話だった。
何か事件でも巻き込まれたのだろうか。人が多く悪意も渦巻くこの王都では、凶悪な犯罪に巻き込まれることも珍しくない。探しに行った方がいいのだろうか。
本来ならそう考えるべきところだが
(これで、もっと王都に居られる)
アステリアは思わずそんなことを考えられる。
親友がいなくなったこと、その不自然な理由よりも先に、今のような堕落した生活が続くことに思わず胸をときめかせてしまうのだ。
「ち、違うわ。そうじゃなくて……」
と、慌てて我に戻るアステリア。
今はそれどころじゃない。明らかにおかしいじゃないか。王都の警備兵なりに相談して、シルフィの消息を突き止めるべきだ。
何か手掛かりがないかどうかメモを見渡すアステリアは、とある一文に目が留まる。
『まだお金は大丈夫だったよね?』
「……」
実は、昨日のキモヲとのコースで、結構な金額を取られてしまっていた。
今回シルフィと一緒にこなしたクエストは、昨年に災害を受けた故郷ーーメイフル村の復興資金に充てる資金のためにこなしており、それなりにまとまった資金があった。
今手持ちに残っている分そのままであれば、まだ自分のお小遣いとして大目にもらってしまった、と説明するくらいで納得してもらえるほどだ。しかし、もしも今日もあのマッサージ店に行って、例のコースに入ってしまえば、故郷の村に入れる資金どころか、この宿の延長宿泊すら、ままならなくなってしまう。
「な、何を考えているの。有り得ないじゃない。それよりもシルフィを探さないと」
アステリアはブンブンと首を振ってメモを机に戻そうとする--その時に、それまでは見落としていた一文を発見してしまう。
『P.S.私がいない間に、メンズを予約したらダメだよ。私達、付き合うことにしたから』
隣で肉欲に狂いながらも、シルフィとメンズの甘い声は聞こえていた。そこで囁かれていたのは、欲望にまみれた自分の言葉とはまるで違う、甘い恋人同士のような会話だった。その1日前まで、アステリアとメンズがそうしていたような……
「う、嘘……メンズさんとシルフィが……?」
想いを寄せていたメンズをシルフィに取られたような感じがして、胸が締め付けられる。
(ち、違うわ。何を考えているの。そもそも私にはアルがいるじゃない)
顔を真っ赤にして、自分の中に出てきた醜い感情を必死に否定する。
そうだ。自分には心から愛している大切な人がいる。他の男など持っての他だ。むしろ大事な親友に恋人が出来たというなら一緒に喜ぶべきだ。
自分にはアルバードという恋人がいる。
(メンズさんとのセックスも、気持ち良かった……♡)
ぼーっとしながら、アステリアは無意識のうちに手を自らの下腹部に伸ばしていく。最も敏感な女性の部分は既に熱を帯びており、ショーツの上からそっと触れと、クチュリと濡れているのが分かる。
「友達の彼氏とセックスしたら……どんな気持ちなんだろう……」
熱に浮かされた蕩けたような表情を浮かべるアステリアは、よろよろと立ち上がると、マッサージ店へ行く準備を始めるのだった。
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