順応力が高すぎる男子高校生がTSした場合

m-kawa

文字の大きさ
81 / 81

噂の人物は二人目の性転換者?

しおりを挟む
「なぁ、聞いたか?」

「何をだよ」

「知らねぇの? なんか転校生が来たらしいって噂があるんだけど」

「転校生?」

「んん? がらっと服装変えてすげー可愛くなった女子がいるって聞いたけど」

「なんだよそれ。そんなんで他のクラスにまで噂が広がるか?」

 学校に着いて昇降口で靴を履き替えていると、ロッカーの向こう側からそんな話が聞こえてきた。

「こんな時期に転校生?」

 佳織が胡散臭そうに小声で話しかけてくるが、まったくもって同感だ。まだ服の趣味が変わったって話が現実味がある。

「さすがに転校生はないと思うが」

「だよねー。まぁ夏だし? 可愛くなるのはよくあるんじゃないかな」

「……よくあるのか」

 首をかしげながらも自分の教室へと向かう。
 梅雨も明けて夏休みも目前となっている今は、たとえ建物内の日陰であっても暑い。超暑いのだ。女子が薄着になるのはわかるが、何か服装を変えるイベントでもあったっけ……。

「まぁいいか」

 考えてもわからないものは放置に限る。

「おはよー」

 前方の席である佳織と別れて自分の席へと座ると、隣の静に声を掛ける。

「ねぇちょっと聞いた!?」

 が、挨拶ではなくやけに興奮した言葉が返ってくる。

「急に可愛くなった女子がいるって噂は聞いたけど……」

「そんなんじゃないわよ!」

「な、なんだよ」

 あまりの勢いに若干引くが、静がここまで興奮するってなんだろう。

「どうしたのよ?」

 佳織も気になったのか、荷物を席においてこっちにやってきた。後ろには千亜季もいるが、若干頬が紅潮しているように見える。

「私もその噂聞きましたよ!」

 どうやら静と同じ状態になってるみたいだ。ちょっとこれは気になってきたぞ。視線で続きを促すと、とんでもない事実が静の口から語られる。

「なんでも、男から女になった生徒がいるらしいのよ!」

 ……ん?

「なんだって……?」

 ちょっと俺の聞き間違いかな。まさか俺みたいに男から女になったヤツがいるって聞こえたんだが。さすがにそんなやつ他にいるわけないよな。

「だから! 圭ちゃんみたいに男から女になった子がいるのよ!」

「……マジで?」

「えええー!?」

「ぶふっ」

 俺の声に続き、佳織の叫びと後ろの席で吹きだす祐平の声が続く。さすがに性別変わったヤツがもう一人いると聞かされれば吹きだしもするか。

「ちょっ、それってどこのクラス!?」

 しかし祐平なんぞにかまってる暇はない。俺と同じ人間が現れたというんならぜひとも話をしたい。

「二組って聞いたよ」

「よし、行こう。今すぐ行――」

「よーし、みんな席につけー」

 はやる気持ちを押さえて今すぐに行こうとするも、一時間目の授業が始まるチャイムと共に先生が入ってきた。
 くっ……、この中途半端に上がったテンションをどうしてくれる……!



 一時間目の授業を受けている間にちょっと冷静になった。十分しかない授業の合間の休み時間に行くより、昼休みに行こうという話になったのだ。そんなわけで迎えたお昼時。掻き込むようにして昼ご飯を胃に詰め込んだ俺たちは、さっそく二組の教室へと来ていた。

 教室の前には、室内を伺っている男どもがちらほらと見える。みんな考えることは同じらしい。そんな男ども並んで一緒に窓に張り付き、教室内を見回してみる。……が、特に教室内でそれっぽい人だかりはできていない。

「……いないのかな?」

「うーん、学食で昼飯食ってるのかも?」

「どんな子なんだろ?」

「……あれじゃないかしら?」

 佳織と顔を見合わせていると、静がふと廊下の向こう側を指さしていた。どうやら予想通り学食帰りのようだが、静の表情がなぜか真顔になっている。あれだけ興奮してたのにどうしたんだ。

「あっ……」

 千亜季も何かに気付いたように声を上げるが、よく見ても特に変わったところはないように見える。後ろからついてくる男子が多い気がするのは、それが目当ての生徒だからだろうか。こっちに向かってくる女子は確かに可愛い。

 首元にワンポイントでレースとリボンの飾りのついた白い半袖ブラウスに、淡いグリーンのひざ下フレアスカートを穿いている。小顔で色白なスレンダーな体型と相まってなかなか際立つ可愛さではある。……あるのだが。

「なんかどっかで見たことあるような……」

「あれ? 五十嵐さん……? どうしたの?」

 こちらに気が付いたようで、向こうから声を掛けてきた。
 っていうかお前かよ!?

「拓也……だよな? なんで学校でまでそんな恰好してんだよ」

「あはは、何言ってるんですか。間違いなく正真正銘椎野しいの拓也たくやですよ。まぁなんと言いますか、吹っ切れたというか……?」

「はぁ?」

 吹っ切れたからって学校にまで女装してくるか普通? いやでもモールで女装したときはそのまま着て帰ったよな……。あれで吹っ切れたってことだろうか。

「というかこの服着て帰ったときにクラスメイトにばったり会っちゃって」

 それはご愁傷様というしか。まぁそれで学校でも好きなことを我慢する必要がなくなったってんなら、いいことなのかもしれないが。揶揄われていじめに発展したり引きこもったりするよりはマシだな。

「今噂になってる女の子って、拓也くんなの?」

「あー……、みたいですね……」

 苦笑いをしながら頬をポリポリと掻きながら認める拓也。
 やっぱりかよ……。俺と同じ境遇の人間が他にもいたのかと喜び勇んできたのに……!

「なんだよそれ……」

 心の中でがっくりと両ひざをついてしまう俺であった。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

タバサックス

ああ、良いですね…
自分が理想としているts小説のような感じです。
理想を述べると、主人公が女の子になったことで恥ずかしがったりして欲しいところですが、身体的特徴を述べるところが気に入っています。
男性視点では、女性のそう言うところを述べるとただのセクハラにしか感じませんがtsではご褒美ですw
後、主人公が下手に男とかに襲われないのも良いです。何故かtsさせるとセクハラされたり、襲われたり、ラッキスケベされたりする作品があり、不愉快でしたがこの作品にはないため個人的に好印象です。
そんなわけで、これからも楽しみに読ませていただきます。

解除
レイド
2019.06.16 レイド

楽しみに読ませて頂いてます。
主人公が淡々と冷静に状況を受け入れながら女の自分を楽しみつつあるのに対して、過度なエロ描写がないのが珍しくて、新鮮で面白いと思います。

2019.06.16 m-kawa

ありがとうございます!
R15も保険みたいなもので、少年誌に乗せられる程度を目指した内容にしております。

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。