本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

文字の大きさ
19 / 153
第二章

物語1 -経緯1-

しおりを挟む
 ここは王城の一室。そこに召喚された四人が集まっている。
 あれから夕食を挟んで解散し、それぞれ一人に一つの部屋が割り振られたのだが、今は全員が俺の部屋に集まっていた。
 今までは成り行きでここまで来てしまったが、ようやく召喚された四人だけが一堂に会することができたのだ。
 スキルの詳細や使い方については明日という話だったので、ここで四人そろってやることと言えばひとつだろう。

「オレたちは都内のキサラギ高校の一年だよ。委員の仕事で職員室から教室に戻るところでなんかよくわからん光に包まれたかと思ったら、あそこにいたんだ」

「ええ、そうね。明と同じクラス委員だったから、私も一緒だったわ」

 ほほぅ、キサラギ高校ね。聞いたことはないが、ネットで調べれば実在していればすぐ出てくるだろ。……出てこない可能性の方が高いが。
 何せここはフィクションの世界だ。実在の人物団体とは一切関係がないはずなのだ。下手に日本という共通の元の世界があるだけに、俺たちが帰れると知られれば一緒に連れて帰れと言われるのは確実である。
 だが、そこがこの二人のいた世界であるはずはないのだ。自分のよく知る世界なのに、自分のことを知る者が誰もいないというのはどれほど辛いことになるだろうか。
 ……何もわからない異世界で生活するよりはマシなのかもしれないが。

 そういうわけで、本来であれば召喚された経緯などやお互いの事について話し合うのではあるが、俺は二人にちょっと突っ込んだ地元の話を聞いているのだった。
 通ってる学校さえわかれば、近くで行方不明になっている人物がいればすぐにわかるかもしれないしね。
 そんなことをしても無駄だという思いはあるんだが……、一応、念のためにね……。

「ふーん。召喚されたときの状況は俺たちと同じだな」

 微妙に感じる違和感の正体が掴めず、もやもやした心のまま二人の話に相槌を打つ。
 一方俺たちの状況をどう説明したものかと思案する。同じと答えたものの、さすがに俺と王女様とであれば見ただけで歳が離れているのがわかるだろう。
 王女様には念のため、本に関することは話さないように言ってある。そうなればどこから来たとかという話もできなくなるので、もうぶっちゃけ何もしゃべらなくていいとは言ったのだが……。

「そうですわね」

 さっきからやたらと笑顔でこちらを見つめているのだが、何か嫌な予感しかしない。
 会ってまともに会話するようになってまだ一日目のはずなのだが……。

「……大丈夫ですか?」

 原因のわからない違和感と嫌な予感に眉を顰めていると、明からこちらを心配する声が上がる。

「えっ? ああ、大丈夫。なんだかえらいことになったなーって……」

「ですよね……」

 そう言ってまたもやため息をつく明。特に疑問には思われなかったようだ。

「誠さん達はそのとき何をしてたんですか?」

 どう答えようか悩んでる質問を、穂乃果がズバッと攻めてきた。
 うーん。何してたか……、っていうのはなんとでもなるんだけど、王女様との関係も考えると何と答えるか悩むところだよね……。たまにコソコソ会話してたし、今更別々の場所から召喚されたまったく無関係の他人ですと言ったところで手遅れだ。
 ホームステイ中の外国人ってのは、日本語しかしゃべれない時点でダメだろうし。というかすでに流暢にしゃべりすぎだし、留学生って言った時点で怪しいよね。

「ああ、近所を散歩してて偶然会った彼女と世間話をしてたところだったかな」

 結局気の利いた設定が思い浮かぶはずもなく、俺たちの年齢差を考えても無難と思える返しをするしかない。

「へー、ところでフィアさんは、誠さんとどういったお知り合いなんですか?」

 穂乃果が興味深そうに突っ込んでくる。できればほっといて欲しいところなのだが、おっさんと美少女の関係というのはやっぱり気になるもんですかね。

「……ただのご近所さんだよ」

 さっきまで笑顔だった王女様の表情が、咄嗟の俺の回答に途端になぜか険しくなる。

「……ご近所さん?」

 明と穂乃果の表情は眉間にしわが寄っており、なぜか疑問形だ。そんなに俺が信用ならないのか。

「ああ。昔引っ越してきたイギリスの人らしくてね。生まれは向こうだけど、育ちはずっとこっちだって話で日本語しかしゃべれないみたい」

「ふーん。そんなもんなのか……」

 俺の説明になんとか納得はしたのか、高校生組の表情は元通りであったが、王女様の表情はますます険しくなるばかりである。なぜだ。

「マコト様。そんな他人行儀な紹介はやめてください」

 不機嫌な顔と声音で王女様が不満を漏らす。
 ちょっとあなた、何をおっしゃってるんですか? 黙っていていくださいと申し上げたはずですよね? 同意は得られてないですけど、めんどくさいことになるってことはわかりますよね?

「――私はマコト様の婚約者ですわ」

「「「はあっ!?」」」

 王女様の投下した爆弾に、俺たち三人が驚きの声を上げるのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...