本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

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第三章

仕入れ1

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 小太郎とさくらに異世界の話はしたが、スキルやステータスはかなりぼかして、フィアの存在に至っては一切話をしていない。
 異世界の存在を証明するために軽く不思議現象を起こしはしたが、圧倒的な力を持ったという話をするのは躊躇われた。
 フィアについては言わずもがなである。犯罪者呼ばわりはされたくないのである。あとちょっと気恥ずかしいというのもあるが……。

「で……、定期的にこの金貨を持ってくるってのはどういうことだ?」

 あーそうだな。向こうで商売を始めることは言っとかないとダメかな。この先順調に商売がうまくいくかどうかもわからないけど、失敗する予感もしないし。

「向こうの世界でちょっと商売を始めようかと思ってな」

「ほほぅ? これから始めるというのにえらい大金のように見えるが……。スポンサーでもいるのか?」

 俺の言葉にニヤリと笑みを張り付けてこちらを窺ってくる小太郎。
 うぬぬ……、あんまりフィアに繋がりそうなことは言いたくないんだがどうしよう。
 って悩む必要もないのか。

「あー、高校生二人を連れて帰るのにトラブルに巻き込まれたから遅くなったって言っただろ? 大量の金貨はそれを解決したときの報酬だよ……」

 大部分を占める金貨は間違いなく報酬のほうなので嘘をつく必要もない。

「ふむ……。まあいい。で、何を売るんだ?」

「雑貨かな? 中世ヨーロッパみたいな世界だし、なんでも売れそうな気がする」

 俺が楽観的に答えると、なぜかさくらにジト目をされる。

「……お兄ちゃん。テキトーすぎない? 市場調査は大事よ!」

 いや市場調査と言われてもな……。科学文明は進んでない世界だぞ。確かに武具店やら道具屋やら狩りに必要なお店しか回っていないのは確かだが、それでも各店舗を外から見た限りではそこまでの品が置いてあるようには見えなかった。
 しかし真面目な意見がさくらから出るとはな……。

「どっちにしろ最初に並べる商品は種類を多めでどれが当たるか様子見予定だから大丈夫だ」

 それに優秀……かどうかはまだわからないが、アルブレイムさんはなかなか出来そうな気がする。関西弁だし。
 一応商人の出ということだし、紹介者が紹介者だし期待はしてもいいんじゃなかろうか。

「それならいいけど……」

 なんとなく不満そうだがそんなに市場調査して欲しいのか。むしろ自分でやりたそうな気がするな……。

「まあそんなわけで、俺は昼からモールに商品の仕入れに行くけど、小太郎とさくらはどうする?」

 小太郎との話はこれで終わったと思ったので次の予定に移ることにする。
 荷物持ちはアイテムボックスがあるから不要だが、他人の目線から売れそうなものを発掘できるかもしれない。

「わたしも行く!」

 さくらは即答だった。これはありがたい。妹と言えど女性目線の商品を思いついてくれるかもしれない。

「オレは帰るよ。他に仕事もあるしな」

「そうか。まあ何か手伝えることがあったら言ってくれ。人探し系なら役に立ちそうな物を手に入れたからな」

 ようやく褒美でもらった物が日の目を見そうだ。宝物庫に入ってあっただけあって性能はすごそうだったが、いかんせん使用する素材が異世界では用意できないものだった。
 読み込んだイラストの元になった実物の存在する方角を示すとか、原理のまったくよくわからない代物だった。しかもイラストが精巧であればあるほど少ない魔力でも遠距離の物に反応するとのことだった。
 中世ヨーロッパ風世界観のあのゲームにカメラのようなものが存在するはずもなく、聞いた話だと宮廷専属絵師が真剣に描いた姿絵で、宮廷魔術師長が渾身の魔力を込めても王都の半分もカバーできない上に数秒しか発動していられないとのことだった。
 姿絵なんて王族とか有名人しか描かれないだろうし、この道具を頼っての人探しなんて行われるはずなどなく、宝物庫で埃をかぶっていたというわけだった。
 だがこれに『写真』を読み込ませればどうだろう。まだ使ったことはないが、そこそこいけるんじゃないかと思ってる。

「おう、じゃあ近いうちに頼むわ」

 そのまま帰る雰囲気になったからか、小太郎が立ち上がりテーブルの上に置かれた金貨の袋を掴む。

「……重いな」

「ああ、それも頼んだ」

 玄関まで見送ると、帰り際に余計な一言をぶっこまれた。

「じゃあ向こうに行ったら電話の後ろから聞こえた女によろしく言っといてくれ」

 なんでバレてんの!?
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