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第三章
宣言
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小太郎曰く、オンスとは貴金属で用いられる重さの国際単位とのことだった。1オンスで31.1035グラム。
一方K20は20金。24金が純金となり、20金は金の含有量83.3%だ。K14は含有量58.3%となる。
これを現在のレートで置き換えると……、俺の金貨30枚で約169万円、明と穂乃果の金貨は99枚で約390万円ずつとなる。
しかし、異世界の金貨というのに金の含有量や重さがこちらの単位と一致するものなのか。こちらの世界の人間の創造世界と考えるとそれもありえるのかもしれないが……。
まさか物語に直接そういった金貨の設定が語られるわけでもないだろうし、裏設定を作者が作っていたとも思えないんだが。
うーむ。考えてもわからないことは放置しておくか。むしろ一致した分だけ変に疑われにくいはずだし、ラッキーと思っておこう。
「……高校生には大金だな」
ぼそっと呟いたが誰にも聞こえなかったようだ。
ばれないように俺に預けられた金貨だが、大金を持ち帰ってもばれたら一緒だろう。せめて預金通帳になれば中身を見られない限り大丈夫だろうが。
しばらく時間も経ったし落ち着いたかな。今度電話でもしてみるか。
「ま、鑑定結果はそんなところだ。換金するなら明日以降と言われている」
「そうなのか。じゃあ明日また来ることにするよ。助かった」
これで問題なく商品の仕入れができそうだ。あっちの世界の商品がこっちで売れればよかったんだが、魔力を用いない道具なんてほぼ発達していない。
仮に魔道具を持ち帰ったとしても、ほぼ高価なものしか存在しない上に物騒な道具も多く、魔力を注いで動かすものともなればこちらの世界では使い物にならないだろう。
「で、だ。……フィアさん、と言ったか? 彼女は……お前の何なんだ?」
――婚約者です。
とは言えない。なんというか、恥ずかしすぎる。特に小太郎には。
今更ながら小太郎の悪い癖が出た時に生暖かく見守らなかったことに後悔した。これじゃ何か関係があると言っているのと同じだ。
「ただ仕事を紹介しに来ただけ」という説明をしようと思っていたが、これでは通じなさそうだ。
……ってそもそもフィアから『マコト』と名前で呼ばれている時点でダメな気がしてきたぞ。あ、いや、外国人なら名前呼びでも問題ないかな?
……ん? なんだ? 気づけば小太郎からの視線がフィアに向いている。俺は何も言ってないはずだが……。
「おい誠。……婚約者だと?」
視線を勢いよくフィアから俺に向けたかと思うと問い詰めるような口調で確認してきた。
「は? えっ?」
いやいや、何で? 心の声が漏れてたとか!? んなどっかの小説みたいなことがあるわけ――。
「はい、婚約者です」
心の声は漏れていなかった。
今思えば心の声と共にフィアが答えていたのだ。
口止めをしなかった自分が悪いと言えばそうなのだが、どうしても『しゃべるな』とは言えなかった。
この数日間フィアの様子をみていたが、とても嬉しそうだったのだ。もちろんこの世界にたくさんある珍しい物に興味が尽きないというのもあるだろう。
だがそれだけではなかった。
なんというか、距離が近いのだ。
一時期離れた後に感じていたあの距離感は気のせいではなかったのだ。
近いと言っても無理やり寝ているベッドに潜り込んだり、あからさまな肌の触れ合いが多かったりするわけではない。むしろそういうことは正式に婚約が決まる前のほうが多かったように思う。切羽詰まった感が抜けたとでも言うのだろうか。
妹の部屋を使うように言ってはあるが、寝るとき以外はいつも隣にいる。それが当然であるかのように自然体で。
さすがに俺でも、フィアから好意を寄せられているということには気が付いた。万が一、自惚れている可能性がないこともないが、すでに婚約者なのだ。勘違いしていても問題ないだろう。
そんなフィアに、『婚約者ということは知られたくない』などと言えるはずがない。それも自分が恥ずかしいからというだけの理由でだ。
「ああ……、成り行きだけど、そうなっちまった」
大きく息を吐いてフィアの言葉を認める。
認めたところで、平常心が戻ってきた。
そうだ……。何を恥ずかしがっていたんだ俺は。異世界の姫が嫁になる? 大いに結構なことじゃないか。
俺はどこかで、所謂『二次元の嫁』のような意識があったのかもしれない。オタクではない俺としては、アニメキャラを嫁というのはちょっと、自分では抵抗があるものだ。……まあほとんどの人が冗談半分で言ってるんだろうが。
創作物語の世界の人間ということが、どこか二次元の嫁を思わせたのかもしれない。
だけどここ数日の――、いや、今から思うと初めて異世界の人と触れ合った時から、こことは違う世界に住む人間が『造られたもの』とはとても思えないものだった。
獣人なども含めて、俺たちと一体何が違うんだろうか。今では心を通わせることができると確信できるほどだ。
某国民的RPGによくいた、『ここは○○の村です』しか言わないようなNPCではないのだ。
そう思えたからかどうかはわからないが、俺は隣にいるフィアを自然と抱き寄せて――。
「フィアは俺の……婚約者だ」
堂々と宣言した。
一方K20は20金。24金が純金となり、20金は金の含有量83.3%だ。K14は含有量58.3%となる。
これを現在のレートで置き換えると……、俺の金貨30枚で約169万円、明と穂乃果の金貨は99枚で約390万円ずつとなる。
しかし、異世界の金貨というのに金の含有量や重さがこちらの単位と一致するものなのか。こちらの世界の人間の創造世界と考えるとそれもありえるのかもしれないが……。
まさか物語に直接そういった金貨の設定が語られるわけでもないだろうし、裏設定を作者が作っていたとも思えないんだが。
うーむ。考えてもわからないことは放置しておくか。むしろ一致した分だけ変に疑われにくいはずだし、ラッキーと思っておこう。
「……高校生には大金だな」
ぼそっと呟いたが誰にも聞こえなかったようだ。
ばれないように俺に預けられた金貨だが、大金を持ち帰ってもばれたら一緒だろう。せめて預金通帳になれば中身を見られない限り大丈夫だろうが。
しばらく時間も経ったし落ち着いたかな。今度電話でもしてみるか。
「ま、鑑定結果はそんなところだ。換金するなら明日以降と言われている」
「そうなのか。じゃあ明日また来ることにするよ。助かった」
これで問題なく商品の仕入れができそうだ。あっちの世界の商品がこっちで売れればよかったんだが、魔力を用いない道具なんてほぼ発達していない。
仮に魔道具を持ち帰ったとしても、ほぼ高価なものしか存在しない上に物騒な道具も多く、魔力を注いで動かすものともなればこちらの世界では使い物にならないだろう。
「で、だ。……フィアさん、と言ったか? 彼女は……お前の何なんだ?」
――婚約者です。
とは言えない。なんというか、恥ずかしすぎる。特に小太郎には。
今更ながら小太郎の悪い癖が出た時に生暖かく見守らなかったことに後悔した。これじゃ何か関係があると言っているのと同じだ。
「ただ仕事を紹介しに来ただけ」という説明をしようと思っていたが、これでは通じなさそうだ。
……ってそもそもフィアから『マコト』と名前で呼ばれている時点でダメな気がしてきたぞ。あ、いや、外国人なら名前呼びでも問題ないかな?
……ん? なんだ? 気づけば小太郎からの視線がフィアに向いている。俺は何も言ってないはずだが……。
「おい誠。……婚約者だと?」
視線を勢いよくフィアから俺に向けたかと思うと問い詰めるような口調で確認してきた。
「は? えっ?」
いやいや、何で? 心の声が漏れてたとか!? んなどっかの小説みたいなことがあるわけ――。
「はい、婚約者です」
心の声は漏れていなかった。
今思えば心の声と共にフィアが答えていたのだ。
口止めをしなかった自分が悪いと言えばそうなのだが、どうしても『しゃべるな』とは言えなかった。
この数日間フィアの様子をみていたが、とても嬉しそうだったのだ。もちろんこの世界にたくさんある珍しい物に興味が尽きないというのもあるだろう。
だがそれだけではなかった。
なんというか、距離が近いのだ。
一時期離れた後に感じていたあの距離感は気のせいではなかったのだ。
近いと言っても無理やり寝ているベッドに潜り込んだり、あからさまな肌の触れ合いが多かったりするわけではない。むしろそういうことは正式に婚約が決まる前のほうが多かったように思う。切羽詰まった感が抜けたとでも言うのだろうか。
妹の部屋を使うように言ってはあるが、寝るとき以外はいつも隣にいる。それが当然であるかのように自然体で。
さすがに俺でも、フィアから好意を寄せられているということには気が付いた。万が一、自惚れている可能性がないこともないが、すでに婚約者なのだ。勘違いしていても問題ないだろう。
そんなフィアに、『婚約者ということは知られたくない』などと言えるはずがない。それも自分が恥ずかしいからというだけの理由でだ。
「ああ……、成り行きだけど、そうなっちまった」
大きく息を吐いてフィアの言葉を認める。
認めたところで、平常心が戻ってきた。
そうだ……。何を恥ずかしがっていたんだ俺は。異世界の姫が嫁になる? 大いに結構なことじゃないか。
俺はどこかで、所謂『二次元の嫁』のような意識があったのかもしれない。オタクではない俺としては、アニメキャラを嫁というのはちょっと、自分では抵抗があるものだ。……まあほとんどの人が冗談半分で言ってるんだろうが。
創作物語の世界の人間ということが、どこか二次元の嫁を思わせたのかもしれない。
だけどここ数日の――、いや、今から思うと初めて異世界の人と触れ合った時から、こことは違う世界に住む人間が『造られたもの』とはとても思えないものだった。
獣人なども含めて、俺たちと一体何が違うんだろうか。今では心を通わせることができると確信できるほどだ。
某国民的RPGによくいた、『ここは○○の村です』しか言わないようなNPCではないのだ。
そう思えたからかどうかはわからないが、俺は隣にいるフィアを自然と抱き寄せて――。
「フィアは俺の……婚約者だ」
堂々と宣言した。
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