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第三章
仕事
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認めれば認めたで疑問が出る。
あの魔法書はいったい何なんだと。
いやそもそも物語の中に入れるにせよ、すでに存在する世界へ移動できるにせよ、詳細などわからないのだ。
無限に世界があるとして、たまたま創作された小説やゲームと似た世界がそこにあっても不思議ではない。
しかし……だ。あれこれ考えたところで正解など出るわけもない。想像を膨らませても無駄に可能性を広げるだけだ。証明なんてできやしない。
「ははっ、そうか。それは、すまん……、悪いことをしたな」
バツが悪そうな表情で小太郎が謝罪する。同じことをして俺に殴られた第一回目の出来事を思い出しているのかもしれない。
確か実家を離れて一人暮らしで大学に通っていたさくらが、ガラッと雰囲気を変えて帰省した時にさくらと気づかずに求婚したんだったか。
思えば小太郎の悪い癖を初めて知ったのもこの時だったか。
「いや、こっちこそ殴ってすまん」
こちらも謝罪を返すがどうも小太郎は聞いていないようで、眉間にしわを寄せたまま反応しない。
「ちなみに……、異世界の住人だ」
「……マジか」
「マジだ」
「……そんな気がしてたよ。ったく、……どう……捕ま……んだ。……でもまあ、それなら……にもチャンスが……」
驚きなのか戸惑いなのか歓喜なのかよくわからない表情で小太郎が呟くが、尻すぼみになった後ろのセリフは聞こえなかった。
「んん? なんか言ったか?」
隣にいるフィアの頭を撫でながら聞き取れなかったところを確認するが。
「……なんでもねーよ! くそっ!」
なぜか怒鳴られた。
わけがわからずに隣のフィアに目を向けると、目を細めて気持ちよさそうにしているだけだ。
「で! わざわざ紹介するためだけに連れてきたわけじゃねーんだろ」
話を強引に切り替えるかのように『で』を強調すると、こちらの目的を確認してくる。
なぜ怒っているのか突っ込んでも藪蛇になりかねないのでその提案に乗ることにした。
「ああ、フィアが仕事したいって言ってるんだけどな……。徐々に教えてはいるんだが、こっちの世界の常識をわかっているはずもなくてな……」
「ふむ」
「だもんで、一緒にお前の仕事を手伝うことにした」
「だが断る」
「だからよろしく頼――なんだって?」
「……いやなんでもない。……了解した」
一瞬断られたような気がしたので睨み付けるが、小太郎当人はというと眉間にしわを寄せて額に血管を浮かび上がらせている。
何かを耐えるように腕を組んでしばらく唸る。
「あ、ああ……。よろしく頼む」
話題を逸らしたはずなのになぜか意識の切り替わっていない小太郎に疑問を抱くが、やはり藪はつつきたくないのでスルーすることにした。
「じゃあ早速頼む。
……確か探し物は得意なんだってな」
確かに以前小太郎にはそんな話はしたが、『人』は探せても『物』も探せるか話した記憶はない。
「ああ、物はわからないが、生き物なら探せると思う」
「なら問題ない」
ソファから立ち上がり、壁際のロッカーを開けると一冊のファイルを取り出して持ってくる。
表紙をめくって一枚目と二枚目の紙を引っこ抜くと、こちらに差し出してきた。
「探し物の依頼があってな。この二件を頼めないか」
二枚の紙にはそれぞれ、一匹の真っ白い猫の写真と一人の学生服を着た少女の写真が張り付けられてあった。
俺は猫の写真を手にし、フィアは少女の写真を手に取っている。
「すごい……。本物みたい……」
そういやフィアは写真見るの初めてだったか。
穴が開くほどに写真を見つめるフィア。なぜかひっくり返して裏側を確認すると、真っ白だったことに残念そうな表情になっている。
「猫の方はよくある迷い猫探しの依頼だ。厄介なのはもう一人の家出少女だな」
「……家出?」
「ああ。名前は白川楓。白川財閥のお嬢様だ」
「ざ、財閥……?」
おおう。小太郎よ、お前はそんなところからも依頼を受けるくらいすごかったのか。
とんでもない客に若干引き攣った顔になってしまう。
「昨日書き置きを残して家を出たっきり、連絡もなく家に帰ってきていないそうだ」
ふむ。さすがにお嬢様ともなると二十四時間連絡がなければ心配にもなるか。
「ちなみに書き置きには何て?」
念のために確認してみる。
「確か、『おじい様なんて大っ嫌い!』だったかな?」
はぁ?
「……それってホントに家出なのか?」
普通は『探さないでください』とかじゃないのか。……いや、これは普通じゃくてただのネタか?
「ああ。おじい様曰く、いつものことらしいが、いつものようにすぐ見つからなかったらしい」
「なるほど」
それじゃ、家出娘捜索といきますかね。
あの魔法書はいったい何なんだと。
いやそもそも物語の中に入れるにせよ、すでに存在する世界へ移動できるにせよ、詳細などわからないのだ。
無限に世界があるとして、たまたま創作された小説やゲームと似た世界がそこにあっても不思議ではない。
しかし……だ。あれこれ考えたところで正解など出るわけもない。想像を膨らませても無駄に可能性を広げるだけだ。証明なんてできやしない。
「ははっ、そうか。それは、すまん……、悪いことをしたな」
バツが悪そうな表情で小太郎が謝罪する。同じことをして俺に殴られた第一回目の出来事を思い出しているのかもしれない。
確か実家を離れて一人暮らしで大学に通っていたさくらが、ガラッと雰囲気を変えて帰省した時にさくらと気づかずに求婚したんだったか。
思えば小太郎の悪い癖を初めて知ったのもこの時だったか。
「いや、こっちこそ殴ってすまん」
こちらも謝罪を返すがどうも小太郎は聞いていないようで、眉間にしわを寄せたまま反応しない。
「ちなみに……、異世界の住人だ」
「……マジか」
「マジだ」
「……そんな気がしてたよ。ったく、……どう……捕ま……んだ。……でもまあ、それなら……にもチャンスが……」
驚きなのか戸惑いなのか歓喜なのかよくわからない表情で小太郎が呟くが、尻すぼみになった後ろのセリフは聞こえなかった。
「んん? なんか言ったか?」
隣にいるフィアの頭を撫でながら聞き取れなかったところを確認するが。
「……なんでもねーよ! くそっ!」
なぜか怒鳴られた。
わけがわからずに隣のフィアに目を向けると、目を細めて気持ちよさそうにしているだけだ。
「で! わざわざ紹介するためだけに連れてきたわけじゃねーんだろ」
話を強引に切り替えるかのように『で』を強調すると、こちらの目的を確認してくる。
なぜ怒っているのか突っ込んでも藪蛇になりかねないのでその提案に乗ることにした。
「ああ、フィアが仕事したいって言ってるんだけどな……。徐々に教えてはいるんだが、こっちの世界の常識をわかっているはずもなくてな……」
「ふむ」
「だもんで、一緒にお前の仕事を手伝うことにした」
「だが断る」
「だからよろしく頼――なんだって?」
「……いやなんでもない。……了解した」
一瞬断られたような気がしたので睨み付けるが、小太郎当人はというと眉間にしわを寄せて額に血管を浮かび上がらせている。
何かを耐えるように腕を組んでしばらく唸る。
「あ、ああ……。よろしく頼む」
話題を逸らしたはずなのになぜか意識の切り替わっていない小太郎に疑問を抱くが、やはり藪はつつきたくないのでスルーすることにした。
「じゃあ早速頼む。
……確か探し物は得意なんだってな」
確かに以前小太郎にはそんな話はしたが、『人』は探せても『物』も探せるか話した記憶はない。
「ああ、物はわからないが、生き物なら探せると思う」
「なら問題ない」
ソファから立ち上がり、壁際のロッカーを開けると一冊のファイルを取り出して持ってくる。
表紙をめくって一枚目と二枚目の紙を引っこ抜くと、こちらに差し出してきた。
「探し物の依頼があってな。この二件を頼めないか」
二枚の紙にはそれぞれ、一匹の真っ白い猫の写真と一人の学生服を着た少女の写真が張り付けられてあった。
俺は猫の写真を手にし、フィアは少女の写真を手に取っている。
「すごい……。本物みたい……」
そういやフィアは写真見るの初めてだったか。
穴が開くほどに写真を見つめるフィア。なぜかひっくり返して裏側を確認すると、真っ白だったことに残念そうな表情になっている。
「猫の方はよくある迷い猫探しの依頼だ。厄介なのはもう一人の家出少女だな」
「……家出?」
「ああ。名前は白川楓。白川財閥のお嬢様だ」
「ざ、財閥……?」
おおう。小太郎よ、お前はそんなところからも依頼を受けるくらいすごかったのか。
とんでもない客に若干引き攣った顔になってしまう。
「昨日書き置きを残して家を出たっきり、連絡もなく家に帰ってきていないそうだ」
ふむ。さすがにお嬢様ともなると二十四時間連絡がなければ心配にもなるか。
「ちなみに書き置きには何て?」
念のために確認してみる。
「確か、『おじい様なんて大っ嫌い!』だったかな?」
はぁ?
「……それってホントに家出なのか?」
普通は『探さないでください』とかじゃないのか。……いや、これは普通じゃくてただのネタか?
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