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第三章
家出娘
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俺は今、車のハンドルを握って運転中だ。隣のフィアも真剣になって前方と、脇に置いてある探求の魔道具に視線を行ったり来たりさせている。
「マコト、だんだん右方向を指してきました」
赤信号で停止した隙に探求の魔道具へと魔力を籠め、それをフィアが確認して様子を報告してくれる。
「わかった」
右折車線にいるわけでもなく、細い道に入って行き止まりになるのもまずいので、ここの交差点は直進することにする。
現在向かっているのは白川宅がある方向とは逆向きだ。
探求の魔道具で場所を探ったのだが、指し示した方向は車で一時間ほどで着くはずの白川宅方面ではなく、逆方向だった。
ただの学生が家出するにはちょっと遠すぎる。楓さんは十六歳の高校生ということで、公共交通機関を使って移動するにしても、友人宅などがある範囲から出るとも思えない。
インターネットが普及した昨今ではそっち方面の知り合いや、財閥の令嬢という立場での友好関係を考えないわけではないが、まず一番に挙がるのは学校の友人宅だろう。
「次は左です」
走っていると辺りの様子も変わってきた。建物が減って閑散とした風景が広がってくる。向かうのは相変わらず白川宅とは反対方向だ。
事務所を出てから一時間ほど経っただろうか。閑散地帯を通り抜け、再び建物が増えたきた場所へと差し掛かった。
「マコト……、このあたりかも?」
しばらくするとフィアからそんな声が出ていた。もちろん俺も気が付いている。さっきから同じところをぐるぐる回っていた。
一周して同じところに出た時に気が付いていたので、そこから俺は車を停めれそうなところを探していた。
「そうだな。どこかに車を停めないとな」
ちょうど時間貸しの駐車場が空いていたのでそこに入る。
車を降りて楓さんがいるらしき方向を眺める。二車線の道路を挟んだ向こう側の区画は、こちらから見る限りでは幅百メートルほどだろうか。車が入れないような路地も数本見える。
それほど高い建物はないが、五階程度のビルや車の整備工場といった建物が並び、住宅街ではなさそうだ。
区画の端をみると、『XX駅 500m』と看板があった。なるほど、ちょっと賑やかになったかと思ったら駅前だったか。
「うーん、それにしてもなんでこんなところに……」
家出してから一日は経ってるのでどこかに泊まったかと思うが、近場に住宅は見当たらない。というかすでにこの距離では学校の友人宅なんてものは存在しないだろう。
「まあいいか。近くに本人がいるんだから直接聞こう」
歩行者信号が青になったのでフィアと二人で渡る。周囲にもまばらではあるが人通りがあるようだ。
渡り切ったところでもう一度探求の魔道具を使う。さすがに球形をしているだけあって、居場所を示す光は方向だけでなく高さまで示してくれる。
「あっちですか……」
フィアが指し示す方向を見ると、ビルがいくつかあるようだった。
この向きだと、目の前のビルの二階か、その奥のビルの三階あたりだろうか……。
考えてもしょうがない。とりあえず目の前のビルに突撃するか。
「手始めにここから行くぞ」
「はい!」
気分は敵の本拠地に乗り込む主人公だ。ひとりでに頭の中をミッション○ンポッシブルのBGMが流れる。
入口をくぐって周囲を窺いながらビルの奥へと進む。どうやら突き当りにエレベータがあるみたいだな。
エレベータホールまで到着するが、どうやら左側にも通路がまだあるようだ。しかしすぐに行き止まりで鉄の扉には階段のマークがあった。
「この建物じゃないみたいですね……」
真剣に周囲を警戒していると、すぐ隣のフィアからそんな声が聞こえてきた。
「えっ?」
「魔道具はまだ奥を指してるみたいですよ」
そう言って俺が持ったままの魔道具を指さしてくる。
確かに中央から延びる白い光はエレベータの後方上部を指している。
「あ、そうだね……」
一人で気合を入れていたのが恥ずかしくなってフィアから目を逸らす。
フィアはすげー冷静だな……。うーむ、落ち着け俺。平常心だ。
「奥の建物へ行きましょう」
そんな俺の手を取って来た道を引き返すフィアに引きずられるようにして外へと出てきた。
ハズレだったビルを迂回するように回り込むと細い路地に入る。楓さんの写真を持った手をフィアに取られているので魔道具が使えないが、常時発動させる必要もないのでされるがままにしておく。魔力を使わず自然体でいるとMPも自動回復するしね。
奥のビルはさすがに裏手にあるだけあって周辺に人通りはまったくない。入口を覗き込んでみるが、まだ昼過ぎという時間帯にもかかわらず薄暗かった。
「ここ……、なんでしょうか?」
魔道具の出番なのがわかったのか、自然とフィアが手を放して俺の方を振り向いた。
「ここかな?」
言葉と共に魔道具を写真に翳して魔力を籠める。……と目の前のビルの上方に向けて白い光が向かって行った。
「間違いなさそうだな」
見た目はまさに寂れたオフィスビルと言った風体の建物だ。どう考えても家出先として逃げ込むところには見えない。
ここまで来て魔道具が間違った道を示しているとは思いたくはないが、下手をすると小太郎が冗談で言ったことが現実しそうな気がして俺はゴクリと喉を鳴らす。
「余計なフラグ立てやがって……」
気を引き締めつつ、小太郎に悪態をついてからビルへと足を踏み入れた。
「マコト、だんだん右方向を指してきました」
赤信号で停止した隙に探求の魔道具へと魔力を籠め、それをフィアが確認して様子を報告してくれる。
「わかった」
右折車線にいるわけでもなく、細い道に入って行き止まりになるのもまずいので、ここの交差点は直進することにする。
現在向かっているのは白川宅がある方向とは逆向きだ。
探求の魔道具で場所を探ったのだが、指し示した方向は車で一時間ほどで着くはずの白川宅方面ではなく、逆方向だった。
ただの学生が家出するにはちょっと遠すぎる。楓さんは十六歳の高校生ということで、公共交通機関を使って移動するにしても、友人宅などがある範囲から出るとも思えない。
インターネットが普及した昨今ではそっち方面の知り合いや、財閥の令嬢という立場での友好関係を考えないわけではないが、まず一番に挙がるのは学校の友人宅だろう。
「次は左です」
走っていると辺りの様子も変わってきた。建物が減って閑散とした風景が広がってくる。向かうのは相変わらず白川宅とは反対方向だ。
事務所を出てから一時間ほど経っただろうか。閑散地帯を通り抜け、再び建物が増えたきた場所へと差し掛かった。
「マコト……、このあたりかも?」
しばらくするとフィアからそんな声が出ていた。もちろん俺も気が付いている。さっきから同じところをぐるぐる回っていた。
一周して同じところに出た時に気が付いていたので、そこから俺は車を停めれそうなところを探していた。
「そうだな。どこかに車を停めないとな」
ちょうど時間貸しの駐車場が空いていたのでそこに入る。
車を降りて楓さんがいるらしき方向を眺める。二車線の道路を挟んだ向こう側の区画は、こちらから見る限りでは幅百メートルほどだろうか。車が入れないような路地も数本見える。
それほど高い建物はないが、五階程度のビルや車の整備工場といった建物が並び、住宅街ではなさそうだ。
区画の端をみると、『XX駅 500m』と看板があった。なるほど、ちょっと賑やかになったかと思ったら駅前だったか。
「うーん、それにしてもなんでこんなところに……」
家出してから一日は経ってるのでどこかに泊まったかと思うが、近場に住宅は見当たらない。というかすでにこの距離では学校の友人宅なんてものは存在しないだろう。
「まあいいか。近くに本人がいるんだから直接聞こう」
歩行者信号が青になったのでフィアと二人で渡る。周囲にもまばらではあるが人通りがあるようだ。
渡り切ったところでもう一度探求の魔道具を使う。さすがに球形をしているだけあって、居場所を示す光は方向だけでなく高さまで示してくれる。
「あっちですか……」
フィアが指し示す方向を見ると、ビルがいくつかあるようだった。
この向きだと、目の前のビルの二階か、その奥のビルの三階あたりだろうか……。
考えてもしょうがない。とりあえず目の前のビルに突撃するか。
「手始めにここから行くぞ」
「はい!」
気分は敵の本拠地に乗り込む主人公だ。ひとりでに頭の中をミッション○ンポッシブルのBGMが流れる。
入口をくぐって周囲を窺いながらビルの奥へと進む。どうやら突き当りにエレベータがあるみたいだな。
エレベータホールまで到着するが、どうやら左側にも通路がまだあるようだ。しかしすぐに行き止まりで鉄の扉には階段のマークがあった。
「この建物じゃないみたいですね……」
真剣に周囲を警戒していると、すぐ隣のフィアからそんな声が聞こえてきた。
「えっ?」
「魔道具はまだ奥を指してるみたいですよ」
そう言って俺が持ったままの魔道具を指さしてくる。
確かに中央から延びる白い光はエレベータの後方上部を指している。
「あ、そうだね……」
一人で気合を入れていたのが恥ずかしくなってフィアから目を逸らす。
フィアはすげー冷静だな……。うーむ、落ち着け俺。平常心だ。
「奥の建物へ行きましょう」
そんな俺の手を取って来た道を引き返すフィアに引きずられるようにして外へと出てきた。
ハズレだったビルを迂回するように回り込むと細い路地に入る。楓さんの写真を持った手をフィアに取られているので魔道具が使えないが、常時発動させる必要もないのでされるがままにしておく。魔力を使わず自然体でいるとMPも自動回復するしね。
奥のビルはさすがに裏手にあるだけあって周辺に人通りはまったくない。入口を覗き込んでみるが、まだ昼過ぎという時間帯にもかかわらず薄暗かった。
「ここ……、なんでしょうか?」
魔道具の出番なのがわかったのか、自然とフィアが手を放して俺の方を振り向いた。
「ここかな?」
言葉と共に魔道具を写真に翳して魔力を籠める。……と目の前のビルの上方に向けて白い光が向かって行った。
「間違いなさそうだな」
見た目はまさに寂れたオフィスビルと言った風体の建物だ。どう考えても家出先として逃げ込むところには見えない。
ここまで来て魔道具が間違った道を示しているとは思いたくはないが、下手をすると小太郎が冗談で言ったことが現実しそうな気がして俺はゴクリと喉を鳴らす。
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気を引き締めつつ、小太郎に悪態をついてからビルへと足を踏み入れた。
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