本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

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第三章

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「あー、なんだかよくわからないうちに『囚われの姫君』っぽい境遇に陥らされたわけね……」

 黙って説明を聞いてたが、このじいさんやべぇな……。
 むしろ関わり合いになりたくない。……よし、今後何かあっても直接やり取りするのはやめて、必ず小太郎を通すようにするか。
 にしてもだ……、楓には同情しかないな。依頼よりも楓に肩入れしたくなるくらいには……。『何でも屋 榊』の評判は落ちるだろうが。

「……なんだか理不尽ですね」

 フィアも憐れむように楓に同情している。

「わかってくれればいいさ……」

 そのまま助けに来たじいさんに向かって『大嫌い』と告げて家を出てきたんだ、と楓が続けた。

「なるほどね……」

「どうしましょう……?」

 フィアがこちらを覗き込むようにして聞いてくる。
 さてどうしようかね。ぶっちゃけ『行方不明の孫娘を探す』ミッションは完了したとも言える。……言えるよね?
 追加で『説得して連れ戻す依頼』とかされる前に小太郎に完了報告して逃げるか。
 ……なんにしても見つけたんだし、とりあえず報告はしないとな。

「うーん、とりあえず小太郎に報告かな。一応無事に見つけ出したし、任務完了ってことで。
 かまいませんよね?」

 楓に向き直って告げる。

「ええ、それくらいならかまわないわよ。……あたしを連れて帰るとか言われたらお断りするけど」

「それは大丈夫だと思います。今のところ捜索の依頼しか出ていませんので」

 無事見つけたんだから問題ないだろう。それに彩からじいさんに連絡も行ってるみたいだし。

「……そんなこと言わずに連れて帰って欲しいんだがなぁ」

 連れて帰ってくれそうにない俺の言動にますます落ち込む彩。
 そういえばこの人って探偵事務所やってたんだっけか。まったく実感ないけど。さすがに楓がいると仕事の邪魔ってことなのかな?
 ……あ、そうだ。もしじいさんから直接楓を説得して連れて帰るように依頼されたら、小太郎には悪いけどここの事務所を紹介してやろうかな。
 いやそれはそれで、逃げ込んだ先がじいさん側の人間になるとか、楓に悪いかもしれないな。

「いや、話だけ聞いた部外者な俺たちだと、楓さんに同情しかできないんですがね……」

 俺の言葉にコクコクと頷くフィア。まだ一日二日だろうし、友人ならもうしばらく泊めてやればいいのに、と思わなくもない。

「……何を言っとるんだね。明日から学校だろうが」

 そんな俺たちに呆れた声で彩が言う。
 おおぅ、まじか。そういや高校生だっけ? 仕事もせずにダラダラと生活……というか異世界なんぞ行ったり来たりしてたからか、曜日の感覚がさっぱりなかったな。

「それに明日までに『誘拐』されたときのドタバタで壊されたもろもろを用意してもらうように言ったんだし、楓も確認のためにも一度帰ったらどうだい」

 おお、てっきり身代金だと思った電話のアレはそういうことね。

「……やだ」

 彩も説得するが取り付く島もない。

「さすがにそういった物の確認は本人じゃないとわかりませんし……。楓さん、一度帰りませんか?」

「確かにそうだな」

 フィアもフォローに回ってくれたようなので、俺も同意しておく。
 じいさんとやらに関わり合いになりたくはないが、放置しておくのも後味が悪いのも確かだ。素直に楓に帰ってくれるのが一番いい。

「……わかったわ」

 憮然とした表情の楓がとうとう折れたのか、了承してくれた。
 だがその視線はフィアを向いている。

「だけどその前にあたしのお願いを聞いてくれないかしら」

 と、何やら交換条件を出し始めた。
 これは……、フィアへのお願いなのだろうか?

「……はい。私にできることであればかまいませんよ」

 視線を向けられているフィアは、自分へのお願いだろうと察して答えている。
 彩のほうを見ると、楓が帰ってくれそうな雰囲気になってることにホッとしてるようだ。

「じゃあ、フィアさん、だったかしら。あんまりにもそっ――いえ、可愛いので、写真を撮らせてもらっていいかしら?」

 ん? 写真? フィアの?

「え? ……あ、はい。そんなことでよければかまいませんが……」

 スマホで写真が撮れることはフィアにも教えてあるので、変な受け応えになることなく了承している。
 まあ確かに、フィアは腰まである赤っぽい金髪に碧眼と、外国人然とした見た目で目を引くほどの可愛さだ。思わず写真に撮りたくなるのもわかるというものだ。

「いいんじゃないかな?」

 ちらりとフィアが俺のほうにも視線を向けて伺いを立ててきたので俺も了承しておいた。
 そんなんで問題解決するなら安いもんじゃなかろうか。

「じゃあさっそく……」

 さっきまでの不満顔はどこへやら。ワクワクした表情でポケットからスマホを取り出してフィアに向ける楓。
 スマホの存在を知っているフィアは余裕の対応だ。両手を丁寧に膝の上にのせて軽く笑みを浮かべている。

「撮りますね……。はいチーズ」

 合図とともに『カシャッ』とシャッター音が鳴る。

「ありがと」

 上機嫌にではあるが、素っ気なく礼を言う楓。

「ふふ。どういたしまして」

「ははっ、何だかよくわからないけど、ひとまず丸く収まりそうでよかったよ」

 ひと段落付いた彩もすっきりした表情になっていた。
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