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第三章
商売継続
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翌日の月曜日。
またも昼過ぎに小太郎の事務所へとやってきた俺たちである。
途中ではガソリンスタンドで車に給油する様子にフィアがはしゃぐ場面などがあったりしたが、概ね何事もなく平和にたどり着いた。
「おう、来たな」
さすがに昨日の今日ではいつもの挨拶もないようだ。
「受け取りに来てやったぜ」
「まったくだ。あんな大金持ち歩きたくねぇ」
ちょっと偉そうに言ってみたのだが、ある意味では金貨の換金を依頼した主が俺なので、間違った言葉ではなかったのだろうか。
小太郎は特に突っ込みを入れることなく肩をすくめるだけである。
「……次からは銀行振り込みにしてくれよ」
それだけ呟くと、執務机の引き出しから封筒を三つ取り出すと、俺たちが座るソファのテーブルへと置いた。
一応金額は事前に聞いていたが、実際に目にするとその分厚さがよくわかる。
薄いほうが俺ので、残りの同じくらいに分厚い二つが明と穂乃果か。……ああ、後で連絡してやらんといかんな。
ばれないように預けられた金貨だったが、ホントどうすんだろうね? とりあえず預金口座作っとけって忠告しておくか?
「ちゃんと数えろよ」
「……わかってるよ」
封筒の分厚さに内心ホクホクしていたが、小太郎の言葉で若干現実に戻された気分だ。
ちょっとこれ数えるのめんどくせえ。
「はい、フィアもこっち数えて」
と言いながらも薄いほうの封筒をフィアへと手渡す。
「えっ? あっ、はいっ! 枚数を数えればいいんですよね……?」
「ああ。よろしく」
俺は分厚いほうの封筒から中身を取り出して数えて行く。
フィアも同じように中身を取り出して数えているが、左手に持った札束を一枚一枚数えながら右手でテーブルへ置く作業をぎこちなく繰り返している。
そういやフィアの世界って貨幣しかなかったな。偽造されない紙幣なんて作る技術もないだろうし、ましてや紙と言えば羊皮紙か。
「……紙のお金って、すごいですね……」
ある程度まとまった数を数え終わったところで、手を止めたフィアからそんな言葉が漏れる。
確かに紙幣だとかさばらないしいいよね。普及すればいいとは思うけど、信用という点でなかなか難しいのだろう。
黙々と数えること十数分、数え終わるのを待っていたのだろう小太郎から声がかかる。
「あー、業者から伝言だ。
『初回は一般と同じように買い取るが、次から今回と同じような出自不明の金貨を持ち込んだら手数料として五パーセントいただく』とのことだ」
「りょーかい。継続して買い取ってもらえるならありがたい」
これで問題なく異世界で商店を続けられる目途が立ったってことだ。よかったよかった。
枚数を確認したが特に端数は入っておらず、薄いほうの封筒は169万、分厚いほうは390万ずつと、以前教えてもらった通りの金額が入っていた。
……高校生にすれば十分な大金だな。
「これで商品の仕入れができますね!」
横ではフィアが目をキラキラさせて興奮している。初回の時はフィアは留守番していたので、次の仕入れがすごく楽しみなようだ。
資金も入ったことだし、しばらく仕入れという名の買い物に出かけるか。よーし、自重せずに買い物しちゃうぞ。
「そういえば商売始めたんだっけか? 調子はどんなもんだ?」
興味深そうに聞いてくるが、こちらとしてもまだ最初の商品をお店に並べてから顔を出してないので、まったく状況はわからない。
仕入れが終わったらちょっと様子を見に行こうか。
「まだわかんねーよ。店に商品置いてからは向こうの人に任せっきりだし」
「なんだよ、放置プレイかよ」
いやまぁ確かに放置プレイだけどさ……。しかも今後も継続で。俺は仕入れしかしない予定だし。
「……忙しいんだからしょうがないだろ」
「どの口がそれを言うか!」
遠回しに『暇人』と言われたような気がして若干ムッとする。ここんとこ行ったり来たりで忙しかったんだぞ。まあ他人から見れば遊びに行ってるだけに見えるのかもしれないが。
と言ってもちょっと前までは暇してたのは間違いないんだけどね。
「……最近忙しくなったんだよ」
「ははっ、確かにそうだな。……たまにはこっちも手伝ってくれよ?」
ニヤリとした笑みを浮かべながらこちらを窺ってくる小太郎。お前、人探し系の依頼増やす気じゃないだろうな。
「……時間があればな」
「ああ、それでいい」
俺の答えに満足したのか、ソファから乗り出していた体を背もたれに沈めて何も言わずに思考に耽る小太郎。
――とその時にノックの音が聞こえる。
用事も終わったし、ちょうどいい。
「客も来たようだし、俺らは帰るとするか」
フィアに向けて声を掛けると「はい」と答えが返ってくる。
「お、そうか。悪いな。
――どうぞ」
後半のセリフと扉に向かって掛けると小太郎がソファから立ち上がる。
俺たちも立ち上がり、そして同時に扉が開かれて客が入ってきた。
年齢は五十代くらいだろうか。ぴっちりとしたスーツが決まっており、蓄えた髭が目立つイケメンな壮年の男性だった。
「……おや、お取込み中でしたかな」
腕時計を確認しつつそう尋ねてくる声も渋い。
「いえ、ちょうど帰るところですので」
「そうでしたか」
そう言って扉の前から横へとずれて道を譲ってくれる。
「じゃあまたな」
振り返って小太郎に別れを告げると、男性に軽く頭を下げて事務所を後にした。
またも昼過ぎに小太郎の事務所へとやってきた俺たちである。
途中ではガソリンスタンドで車に給油する様子にフィアがはしゃぐ場面などがあったりしたが、概ね何事もなく平和にたどり着いた。
「おう、来たな」
さすがに昨日の今日ではいつもの挨拶もないようだ。
「受け取りに来てやったぜ」
「まったくだ。あんな大金持ち歩きたくねぇ」
ちょっと偉そうに言ってみたのだが、ある意味では金貨の換金を依頼した主が俺なので、間違った言葉ではなかったのだろうか。
小太郎は特に突っ込みを入れることなく肩をすくめるだけである。
「……次からは銀行振り込みにしてくれよ」
それだけ呟くと、執務机の引き出しから封筒を三つ取り出すと、俺たちが座るソファのテーブルへと置いた。
一応金額は事前に聞いていたが、実際に目にするとその分厚さがよくわかる。
薄いほうが俺ので、残りの同じくらいに分厚い二つが明と穂乃果か。……ああ、後で連絡してやらんといかんな。
ばれないように預けられた金貨だったが、ホントどうすんだろうね? とりあえず預金口座作っとけって忠告しておくか?
「ちゃんと数えろよ」
「……わかってるよ」
封筒の分厚さに内心ホクホクしていたが、小太郎の言葉で若干現実に戻された気分だ。
ちょっとこれ数えるのめんどくせえ。
「はい、フィアもこっち数えて」
と言いながらも薄いほうの封筒をフィアへと手渡す。
「えっ? あっ、はいっ! 枚数を数えればいいんですよね……?」
「ああ。よろしく」
俺は分厚いほうの封筒から中身を取り出して数えて行く。
フィアも同じように中身を取り出して数えているが、左手に持った札束を一枚一枚数えながら右手でテーブルへ置く作業をぎこちなく繰り返している。
そういやフィアの世界って貨幣しかなかったな。偽造されない紙幣なんて作る技術もないだろうし、ましてや紙と言えば羊皮紙か。
「……紙のお金って、すごいですね……」
ある程度まとまった数を数え終わったところで、手を止めたフィアからそんな言葉が漏れる。
確かに紙幣だとかさばらないしいいよね。普及すればいいとは思うけど、信用という点でなかなか難しいのだろう。
黙々と数えること十数分、数え終わるのを待っていたのだろう小太郎から声がかかる。
「あー、業者から伝言だ。
『初回は一般と同じように買い取るが、次から今回と同じような出自不明の金貨を持ち込んだら手数料として五パーセントいただく』とのことだ」
「りょーかい。継続して買い取ってもらえるならありがたい」
これで問題なく異世界で商店を続けられる目途が立ったってことだ。よかったよかった。
枚数を確認したが特に端数は入っておらず、薄いほうの封筒は169万、分厚いほうは390万ずつと、以前教えてもらった通りの金額が入っていた。
……高校生にすれば十分な大金だな。
「これで商品の仕入れができますね!」
横ではフィアが目をキラキラさせて興奮している。初回の時はフィアは留守番していたので、次の仕入れがすごく楽しみなようだ。
資金も入ったことだし、しばらく仕入れという名の買い物に出かけるか。よーし、自重せずに買い物しちゃうぞ。
「そういえば商売始めたんだっけか? 調子はどんなもんだ?」
興味深そうに聞いてくるが、こちらとしてもまだ最初の商品をお店に並べてから顔を出してないので、まったく状況はわからない。
仕入れが終わったらちょっと様子を見に行こうか。
「まだわかんねーよ。店に商品置いてからは向こうの人に任せっきりだし」
「なんだよ、放置プレイかよ」
いやまぁ確かに放置プレイだけどさ……。しかも今後も継続で。俺は仕入れしかしない予定だし。
「……忙しいんだからしょうがないだろ」
「どの口がそれを言うか!」
遠回しに『暇人』と言われたような気がして若干ムッとする。ここんとこ行ったり来たりで忙しかったんだぞ。まあ他人から見れば遊びに行ってるだけに見えるのかもしれないが。
と言ってもちょっと前までは暇してたのは間違いないんだけどね。
「……最近忙しくなったんだよ」
「ははっ、確かにそうだな。……たまにはこっちも手伝ってくれよ?」
ニヤリとした笑みを浮かべながらこちらを窺ってくる小太郎。お前、人探し系の依頼増やす気じゃないだろうな。
「……時間があればな」
「ああ、それでいい」
俺の答えに満足したのか、ソファから乗り出していた体を背もたれに沈めて何も言わずに思考に耽る小太郎。
――とその時にノックの音が聞こえる。
用事も終わったし、ちょうどいい。
「客も来たようだし、俺らは帰るとするか」
フィアに向けて声を掛けると「はい」と答えが返ってくる。
「お、そうか。悪いな。
――どうぞ」
後半のセリフと扉に向かって掛けると小太郎がソファから立ち上がる。
俺たちも立ち上がり、そして同時に扉が開かれて客が入ってきた。
年齢は五十代くらいだろうか。ぴっちりとしたスーツが決まっており、蓄えた髭が目立つイケメンな壮年の男性だった。
「……おや、お取込み中でしたかな」
腕時計を確認しつつそう尋ねてくる声も渋い。
「いえ、ちょうど帰るところですので」
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