本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

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第三章

買い物

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 大金を持ったまま買い物もどうかと一瞬思ったが、そういえばアイテムボックスがあったなと思い直して分厚いほうの封筒を二つ仕舞い込む。
 ということで憂いのなくなった俺たちはさっそく買い物のためにモールにやってきていた。
 小太郎の事務所からだと比較的近いのだ。わざわざ自宅に帰ってからでは時間がかかる。

「今日は何を買うんですか?」

 相変わらず辺りを興味深そうにキョロキョロとしていた顔を俺に向けてフィアが尋ねてくる。
 王女と言っても女の子には変わりなく、やはり買い物は好きなのだろうか。一般的に……というか空想上の王女という立場の人間が、自ら買い物する光景というのはあんまりない気もするが。

「んー、特にコレと言って決めてないんだよな。前回持ち込んだやつがどうなってるかも知らないし。
 フィアの気になるものがあったら買ってもいいよ」

 何せ資金はたんまりあるのだ。そしてアイテムボックスも改のレベル10になったことで、容量が無制限になっていた。何をどれだけ買っても問題ないのである。

「ホントですか!?」

 俺の言葉に益々テンションの上がるフィア。
 過去数回このモールにはフィアと来ているが、今回は割と大人しめだ。そろそろ慣れてきたんだろうか。
 だというのに周りからの視線の数は相変わらずのようだ。やっぱりフィアは目立つんだろうな。
 やはり腰まで伸ばした赤みがかった金髪ストレートに碧い瞳、ほっそりとしたスタイルだがほどよいサイズに張り出した胸。振り向かない男がいないはずがない。

 というところでふと、フィアの髪型がいつもストレートなことに気が付いた。そういえば異世界を歩いていてもストレート以外の髪型を見た記憶がないな。
 そういう文化がないのかもしれない。髪留めなんて買ってあげてもいいかもしれないし、その時にでも聞いてみるか。

「ああ、基本はお店に並べる売れそうな商品を買うけど、フィアが欲しいものがあったら買ってもいいぞ」

「ありがとうございます!」

 両手を胸の前で合わせて飛び切りの笑顔を見せるフィア。
 周囲の男どもの顔も同時に緩む。

 買おうと思っているのは主に雑貨や家具、アクセサリーなど。服もシャツ程度なら異世界にあっても違和感がないかな? 縫製精度が月とスッポンだけれども。
 まあそこらへんは今更だろう。

「まずは雑貨かな」

 今歩いているのは二階のフロアで、雑貨屋さんが主に並んでいる階である。
 細々としたものが所狭しと詰められたお店よりは、ゆったりと余裕のあるお店のほうが好みなのか、またしてもゆったり系のお店へと入っていくフィア。
 せわしなくはしゃぐフィアもよかったが、若干落ち着いた今のフィアのほうが、なんというか見ていて安心する。
 入った店は雑貨でもアクセサリーがメインのようだ。
 最初の頃とは違って、『これは何?』と聞いてくることも減り、落ち着いて店内を見て回っている。
 ……あくまでも以前と比べて、だが。

「ねぇマコト、これなんてどうかな……?」

 フィアがはにかみながらもブローチを胸元につけて窺ってくる。
 俺はファッションには詳しくないが、似合ってるんじゃないかな。

「いいね、よく似合ってるよ」

 そして目についてシンプルな銀色のカチューシャを手に取るとフィアにつけてやる。

「これもつけると可愛いな」

 意識したつもりはないが、フィアにとっては予想外の言葉だったのか顔を赤くして俯いてしまっている。

「あうあう……」

「よし、じゃあ俺が買ってやろう」

 恥ずかしがりながらよくわからない呟きを漏らしていたフィアが、俺の言葉を聞いて勢いよく顔を上げるがそこには満面の笑みがあった。

「ありがとうございます!」

「これがフィアの分として、あと適当に選ぶか」

「はい!」

 元気よく返事をするフィアと共に、ブローチ、ヘアバンド、カチューシャ、イヤリングなどのアクセサリーを手持ちの籠へと次々と放り込む。
 すると、今まで微笑ましく、またはリア充爆発しろとばかりにこちらを窺っていた人々の顔が、程度の差はあれど全員顰められたような気がした。

「これください!」

 元気よくフィアが、アクセサリーで山盛りになった籠を一つ置くと、俺もそれに続いて籠を二つ置いた。

「あ、これも一緒で」

「え、あ……、はあ……。
 あの、ホントにこんなに買うんですか?」

 店員さんは激しく疑問形である。迷惑そうにしていないのでちょっと安心した。

「はい。お願いします」

「わ、わかりました」

 再度お願いすると店員さんも諦めたようで、後ろを振り返って応援を呼んでいる。さすがにこの量を一人では無理だったか。
 会計に時間をかけること十五分ほど、ようやく支払いまでが終わった。

「あ、ありがとうございました……」

 高くても千円程度しかしない雑貨屋寄りのお店で十万円の買い物をする客なぞ今までいなかっただろう。店員は茫然として俺たちを見送るのみだった。
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