本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

文字の大きさ
87 / 153
第四章

転生者は異世界で何を見る? -プロローグ1-

しおりを挟む
「ぶえっっっくしょん!!!!」

 ピシャーーーーーーン!!!

 くしゃみと同時に今まさに放とうとしていた神の裁きが天から地表へと降り注ぐ。

「……へっ?」

 間抜けな声を出したのは、真っ白な髭を三十センチも伸ばしたご老人である。薄いグレーの布を何重にも巻いた衣服を着ており、さながら仙人のようである。
 頭髪はなく、光を百パーセント反射しそうな頭皮をしているが、生憎と周囲は暗闇に囲まれており、星明りなのかキラキラと輝くほのかな光源があるのみで眩しくはない。
 というか上下左右どこを見渡しても星明りのキラキラした空間が広がるのみである。宇宙空間に浮いているような感覚だ。
 そんな老人だが、足元の一点を凝視していたかと思うと急に頭を抱えてしゃがみこむ。

「や……、やってもうた……」

 そう呟いてしばらく同じ格好でうずくまっていたが、おもむろに立ち上がると言葉を続ける。

「一人で凹んでてもしゃーない……。なんとかするしかないのぅ」

 どうも独り言が多いらしい。
 もう一度さっきまで凝視していた地点に視線を向けると、そちらへと右手を差し出して何かを引っこ抜くようなジェスチャーをする。

「ほいやっ」

「――うわああああぁぁぁっ!!?」

 ジェスチャーと掛け声と共に一人の少年がその場に現れたのである。

「な、なな、何っ!?」

 周囲をキョロキョロとしながら見回して何があったのか確認しようとしているが、急に薄暗いところにきたせいで何も見えないのだろうか。

「なんなんだよ! いきなり目の前が光ったかと思ったら、今度は真っ暗闇……ってここどこだよ!!?」

 よくよく見るとその少年はなぜか半透明のようで、向こう側が透けて見えるようだ。

「落ち着かんか」

 ひたすらパニクる少年に老人が声を掛けるが、声が聞こえないのかまだ慌てたままである。
 無視された老人がサッと右手を振って虚空から杖のようなものを取り出すと、少年を殴りつけた。

「イテェ!!」

「うおおっ!!?」

「きゃっ!」

 なのになぜか悲鳴が三つ上がった。

「むぅ?」

 老人が訝しむ声と共に殴りつけた少年から顔を上げると、そこには四つん這いになって慌てている黒髪のオッサンと、金髪の少女がいたのである。
 少年はいきなり場面が切り替わったことに慌てていたようだが、オッサンと少女はいきなり地面が消失したかのような感覚に陥っているのかもしれない。

「な、なんじゃと? ……もしかしてワシ、またやらかした……?」

 そんな二人を目にした老人の顔が一気に青褪める。

「いきなりなにすんだよじいさん!」

 そこへ杖で殴りつけられた少年が、表情を一気に青褪めさせた老人へと怒鳴りながら文句をつけた。
 怒鳴られた老人が文句を言われたことで一瞬で我に返る。

「お、おお……、すまぬ。少しばかり、自分の馬鹿さ加減に呆れておったところじゃ。
 ……そちらの二人もすまなんだな」

 老人の言葉を聞いて初めて後方にも誰かがいることに気付いたのか、少年が振り返って確認している。

「それはいいけど……、どこなんだよここは……」

 殴られて落ち着いたのか、現状確認をしたはいいが地面・・がないことに気づき真っ青になる少年。

「おお、重ねてすまん。……ほいっと」

 少年の様子に理由がわかったのか、手に持っていた杖を地面に打ち付ける。
 と、あっという間に地面が畳敷きの茶の間に変わる。

「「「――っ!!?」」」

「先に自己紹介でもしようかのぅ。わしはカラミエル。この世界の神をやっとるもんじゃ」

「……はぁ?」

「まだ何が起こったのか整理がついとらんかもしれんが……、少年よ。
 わしの手違いがあって、そなたは事故に遭って死んでしもうたんじゃよ……」

「……」

 あまりに突飛な話しすぎたのか、少年は何も反応ができない。
 が、オッサンと少女は多少余裕があるのか、カラミエルと名乗った老人と同じ卓へと腰を下ろす。
 それを見た少年もハッと気づいたかのように、とりあえずといった感じで腰を下ろした。

「おう、すまんの。茶も出さずに」

 カラミエルはそういうと、杖を持っていない左手を一振りすると、ちゃぶ台の上に湯気を立てるお茶が四つ現れる。

「す……、すごいです……」

 少女は素直に驚きを表し、オッサンも驚きながらではあるが出てきたお茶をためらいもなく啜っている。

「うめー」

「……」

 そして少年は固まったまま動かない。

「詫びようと少年を呼んだはいいが、……どうも手違いがあったのか、そちらの二人も巻き添えでここに呼んでしまったらしいのぅ……」

「そうなんですね。……あ、おいしい」

「……あんまり驚いてないのぅ。っつーかくつろぎすぎじゃね?」

 お茶をのみながら周囲を観察するオッサンと、落ち着いて受け応えする少女にカラミエルは突っ込むのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...