本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

文字の大きさ
88 / 153
第四章

転生者は異世界で何を見る? -プロローグ2-

しおりを挟む
「……えっ? おれ……、死んだの……?」

 いまだ一人茫然としていた少年が復帰したのか、カラミエルに言われたことを繰り返している。
 ……復帰はまだのようだ。

「うむ。まぁわしが言うのもなんじゃが、そう悲観するでない。
 ……ほれ、あれじゃ、最近流行っとるじゃろ。……つまりあれじゃ」

 何を言いたいのかさっぱりわからないが、とにかく大丈夫だということを言いたいらしい。

「……つまり生き返れる……ってことか?」

 通じたのかどうかはわからないが、少年が希望の灯った瞳でカラミエルを見つめている。
 どうやら混乱は脱したようである。

「似たようなもんじゃの。元通りにはならんがの……。なんせおぬしの肉体はぐちゃぐちゃになってしもうたからのぅ……」

 なぜか遠い目をしながらつぶやくカラミエル。

「ぐ、ぐちゃぐちゃ……?」

不慮・・の事故のせいでな……」

 どうやらこのじじいは他人のせいにしたいらしい。一応の説明のために最初は『自分の手違いで』と本当のことを言っていたが。

「そんな強調しなくても……」

 オッサンがポツリと突っ込むがカラミエルはスルーを決め込む。

「ああ、そうそう思い出した。転生というやつじゃな」

 不利な方向へ逸れそうだった話題を無理やり戻すと話を続ける。

「すでに葬式が行われとる世界に元通りに戻してやることはできん。
 異世界にはなってしまうが、記憶をそのままにして肉体もわしが用意してやろう」

「……異世界」

 少年の返事を待たずにカラミエルはオッサンと少女のほうへと顔を向ける。

「おぬしらは……、肉体はそのままあるようじゃから問題ないの」

「よく見たらあんた……、体が透けて見えるな……」

 オッサンが少年をまじまじと見つめながら興味深そうに観察している。

「ほんとうですね……」

 少女も同じくだ。

「えっ? う、うわっ!? す、透けてる……!!?」

 少年も今気づいたのか、今更驚いている。
 自分の胸や腕を触っているがすり抜けたりはしていないようだ。自分自身なんだから当たり前かもしれないが。
 ただしオッサンの手は通り過ぎた。面白くなったのか遊んでいる。

「ちょ……! 気持ち悪いからやめろ!!」

 少年が自分の胸から生える腕に身震いするように叫んでいる。

「こら、マコト! かわいそうだからやめてあげて」

 それを見ていた少女がオッサンを窘めている。

「へーい」

 そんな様子を見ていたカラミエルは若干呆れかえった様子である。

「おぬしら……自由じゃの……」

「……本当にもう戻れないのか?」

 縋るような眼差しで見つめるが、カラミエルはかぶりを振ると言葉を続ける。

「残念じゃが、神であるわしにもできないことがあるんじゃよ……。申し訳ないことじゃ」

 その言葉に少年は項垂れると「そうか」と呟いてしばらく黙ってしまった。

「で、異世界とやらに行くのはいいとして、その世界は安全なのか?」

 ずうずうしくもお茶のお代わりを要求しながらオッサンが疑問を呈している。
 もっともな疑問ではある。転生なんぞしないほうがマシだと思えるようなところでは意味がない。

「そこは安心せい。直近の危機という意味では、きっちりと安全な場所へ送ってやろう」

 どうにも引っかかる言い方である。

「ただし、世界全体として見れば、命の価値の安い世界ではある。おぬしらがおった地球とは違い、魔法があり魔物がひしめく世界じゃ」

「――はぁっ!?」

 聞き捨てならないとでも思ったのだろうか。少年がカラミエルの言葉に反応した。

「……魔法があるだって?」

 いや違った。興味津々だった。自分が一度死んだことも忘れているに違いないと思えるほどにいい笑顔だ。

「うむ。せっかくわしの手で転生させるのじゃし、すぐに死んでもらっても困るでの。ちょっとした能力を授けてやるわい」

「へぇ」

 オッサンがニヤリと笑い、少女も瞳をキラキラとさせて期待の表情に変わっている。

「ど……、どんな能力なんだ?」

「異世界間通信とかできたらいいな……」

 少年とオッサンの言葉に今度はカラミエルがニヤリと口元を歪める。

「それは向こうに行ってからのお楽しみじゃ。先に何でも知ってしまうと面白くなくなるぞい」

「そりゃそうか……」

「……わかっておるでわないか」

「あの……、どうやったらその能力について確認ができるんでしょうか?」

 頷きあっている少年とカラミエルを尻目に、少女がもっともな疑問を挙げたのだが。

「ん? ああ、そこはほれ、一般人と比較してだな……」

 などという曖昧な返事が返ってきた。
 まあ確かに。才能が何か最初からわかってるのも面白くないということなのだろうか。
 だからと言って一生気づかなければ意味がないわけで。とは言えすぐに死なないための能力なのだろうから、そんなことになることはないだろうが。

「さて、他に質問はあるかね?」

 カラミエルの言葉に三人とも無言で肯定する。

「では送ろうかの。達者でな」

 三人が光に包まれたかと思うと、その光の本流は瞬く間に周囲へと広がっていく。
 空間全体が真っ白になったかと思った瞬間に元の暗闇へと戻ると、そこには一人の老人の姿があるだけだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。 そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。 両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。 気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが…… 主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

処理中です...