本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

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第四章

転生者は異世界で何を見る? -危険物-

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「ここか?」

 木造建築の多いこの街において、珍しく石造りの一階建て平屋の建物の前で確認をする俺。
 ここは冒険者ギルドから街の中央を挟んで反対側にある、住宅街の外れだった。
 危険物の運搬と聞いたが、実際にその場所に来て納得だ。外れで頑丈な石造りとは言え、危険物が住宅街にあれば周りからは反発が出るだろう。
 どういう危険物かどうかはギルドでは把握しておらず聞いていないが、そんな引っ越し依頼が来たのも頷けるというものだ。

「たぶんここでしょ。石造りの家って他にないもの」

「だね」

 フィアに続いて瑞樹も同意する。

「うっし、じゃあ行くべ」

 石造りの建物の扉を勢いよくノックする。
 ――が、何も反応がない。

「んん?」

 疑問に思いながらももう一度激しくノックをするが、やはり家から反応が返ってこない。

「……留守なのかな?」

 いや、家の中からは人の気配がするのは確かだ。ノックをしたにもかかわらずピクリとも動かないが。
 フィアの呟きに俺は首を横に振って否定する。

「人の気配はするぞ」

「……気配?」

 瑞樹が俺の言葉に疑問を挙げている。俺には【気配察知】があるのでわかるのだが、普通の日本人にそんな芸当は無理な話だ。
 疑問に思われても仕方がないが、もしかすると緊急事態かもしれないのでスルーすることにする。

「危険物ありの家の中に、動かない人間って、ヤバい気がするぞ」

 緊急を要する事案だということをフィアと瑞樹にも伝えると、二人の顔色も変わる。

「とりあえず開けるぞ」

 同意を待つことなく家の扉を開け放つ。どうやらカギはかかっていなかったようだ。不用心だが今回は助かったと思うことにする。
 念のためにこっそりと毒ガスの可能性を考慮して、家の中の空気がこっちに来ないように風魔法を発動させておく。

「お、おい! 大丈夫なのかよ!?」

 瑞樹はここでも不安なのか腰が引けている。厳ついオッサンの時もそうだったが、瑞樹はビビり君なのかね。まったく男らしくない。あ、いや、女だったか。

「行くよ」

 フィアは俺の後ろにピッタリとくっついて一緒に建物の中に入って行く。

「瑞樹、別にそこで待っててもいいんだぞ」

 俺は振り返ってニヤリと笑い、ビビっている瑞樹を挑発する。

「くっ……、わかったよ! おれも行けばいいんだろ!」

 男としての矜持もまだ残っていたのだろうか。軽い逡巡の後に付いてくることを決めたようだ。

「じゃあ俺から離れないようにしろよ」

 風魔法で防御してるからな。という言葉は飲み込んでおく。
 異常耐性もあるみたいだし、多少なら大丈夫だろ。……たぶん。
 瑞樹がフィアの後ろにくっついたことを確認し、家の中へとゆっくりと進んでいく。三メートルほど先に、部屋へと続く扉が廊下の左右についている。
 開けて確認するがキッチンと寝室のようだが誰もいない。人の気配は奥だったのでいないのはわかってはいたが、フィアと瑞樹に見せるために開けた。
 そして一番奥の部屋だ。ゆっくりと扉を開けると、薄暗い室内の真ん中にうつ伏せで倒れている人物を発見した。
 足元まであるグレーのローブを纏い、倒れた勢いなのかどうかわからないが、フードも頭にかかっていて性別や年齢すらも判別できない。
 むしろローブから覗く手と足から、「人」だと判別できた程度だ。

「おい! 大丈夫か!?」

 後ろにいたとはいえ、俺の右側にはフィアが、左側には瑞樹が顔を出していたので発見は同時だ。
 瑞樹が思わず声を掛け、俺は部屋を見回している。どうも窓は開いてるみたいだな。
 奥にあるテーブルには、怪しげな煙を吹き出すようなものなど置かれていないし、毒ガスということはないだろう。
 それによく見ると、倒れている人の手の先に黒っぽい石のようなものが転がっている。なんとなくあれが怪しい気がするんだが……。

「生きてはいるみたいだな……」

 呼吸はしているようで、うつぶせになった背中が上下している。
 ひとまずは安心か。ということで気になる石を鑑定してみる。

 ――――――――――――――――――
 【魔吸石(強)】
 触れると魔力を吸収する石。
 本来の吸収力はそれほどでもないが、どうやって成長したのか段違いの吸収力となった物。
 あまりの吸収力に近づくだけで魔力を吸われる。
 ――――――――――――――――――

 原因はこれかーーーー!!
 魔力枯渇で体調にどう影響するか知らないが、もしかしたらここで倒れてる人みたいに意識を失ったりするのかもしれない。

「あの石が原因みたいだぞ。魔吸石と言って、魔力を吸収する石らしい」

「へっ?」

「あ、鑑定したの?」

 何ソレ? と言った感じの瑞樹だが、フィアが的確にフォローしてくれる。

「ああ、しかも強力版みたいだな。近づくだけで魔力を吸われるだとさ」

「へぇ」

 納得顔のフィアであるが、瑞樹に至っては何のことかわかっていないようで眉に皺が寄ったままだった。
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