94 / 153
第四章
転生者は異世界で何を見る? -初仕事-
しおりを挟む
「ほれ、お前らのカードだ」
デクストと名乗ったオッサン職員が俺たちに冒険者ギルドカードを差し出してきた。
仮身分証と同じサイズだが、材質がよくわからないのはこちらも一緒だった。表面には名前とランクを示す文字が書かれているとのことだったが、何と書かれているのか俺たちには読めない。
「そういやカードの説明は聞くか?」
「はい。お願いします」
「よしきた。ここには名前とランクが記載されていると言ったが、他にも記載されるものがある。それは直近で受けた依頼の難易度だな」
冒険者にはランクが付けられており、依頼も難易度によってランク分けされている。
これは自分に合わない難易度の仕事を選んで自滅しないようにとの措置ではあるが、自分のランクよりも一つ上下の依頼も受けることができる。
一概には言えないが、カードに直近で受けた依頼の難易度を記載することにより、冒険者自身がカードに記載のランクの上と下のどっち寄りかを判断する材料にはなる。もちろん成功か失敗の表示も含めてだ。
ギルドのルールも聞いてみたが、概ね常識内のことだった。
「で、仮身分証持ちのランクはGだ」
普通はFランクから始まるらしいのだが、仮身分証持ちはGランクからとのことだった。『G』という言葉に妙に憐憫の感情が入っている気がする。
余りにも憐憫の目で見てくるので理由を聞いてみたのだが、よっぽどの田舎者で身分証を持っていなくても、入街税を払えないことはないらしい。
それなのに無一文というところを見ると、盗賊かコボルドに襲われたんだろうということだったが、女性が無事にいるところを考えるとコボルドということになる。
どうもこの世界のコボルドは、なぜか渡すものを渡せば見逃してくれるらしいのだ。ただし、鉄貨一枚でも出し渋ると問答無用で襲ってくるとのことで、討伐対象にもなっているモンスターなのだが割と弱い部類らしく。
まあ弱くても数が多ければやられるのは間違いない。
というわけで、手ぶらで無一文な俺たちは、コボルドに襲われて命からがら逃げてきた……、と思われているらしかった。
「……」
否定したいところだが、本当のところを説明するのも面倒なので黙っておく。
……しかしコボルドは一体何にお金を使うというのか。謎である。
「……コボルドって、モンスターですよね?」
フィアも同じ思いだったようだ。理解できないといった表情でデクストに尋ねている。
「そうだな。だがなぜヤツらが金まで集めてるのか理由はわからん」
どうやらそこまで詳しいモンスターの習性などまではわからないらしい。そこって大事なところじゃないですかね。それとも弱すぎるモンスターの情報なんぞ不要ってことですか。そうですか。
「ま、そういうわけだ。草原にもモンスターは出る。街の外に出る依頼はやめておけ」
「わかりました……。ありがとうございます」
カウンターの前を離れて依頼が張り付けてある掲示板の前へとやってきた。とりあえず依頼を受けて完遂せねば借金返済どころか今晩の飯や宿がない。
なのだが。
「……読めない」
そういえばこの世界の文字は読めないんだった。
やべーぞこれは。
「どうしよう……」
瑞樹はオロオロしている。
フィアは頬に人差し指を当てて小首をかしげている。
仕事を探すでもなく、掲示板の前で固まってる俺たち三人を見かねたのか、カウンターの向こうにいた厳ついオッサンが近づいてきた。
「……もしかして字が読めないのか?」
「ええ……、残念ながら読めないです」
こんなところで見栄を張ってもしょうがないので正直に告げる。
「……三人ともか?」
念のためだろうが、俺たち三人を見回して確認してくる。
「「はい……」」
二人そろっての返事を聞いたデクストは、さらに気の毒そうな表情だ。
「おいおい……、字が読めない三人でよく旅ができたな……。無謀すぎたんじゃねーか?」
いやそんなこと言われても。怪しい神に放り出されたんだからしょうがない。
「まあ言ってもしょうがねーか。んならこの依頼受けとけ」
デクストはそう言うと、掲示板の左端にあった依頼票を引き剥がして俺に押し付けてきた。
「……これは?」
渡された依頼票を見ても読めないので、デクストの顔や周囲を見回してみる。
やはりというか、周囲からも憐憫の眼差しを集めてしまっているようだ。解せぬ。いや理由はわかったけども。
「引っ越しの手伝いだ。普通はこんな仕事は冒険者ギルドにゃ回ってこねーんだが、なんでも危険物有りなんだとよ。
それでGランクの割にちょっと報酬もいいらしい。お嬢ちゃん二人にはちときついかもしれんが、まぁ冒険者にゃ危険はつきものだ」
言うだけ言うと、俺たちの反応も見ることなくカウンターへと取って返し、依頼受理の手続きを勝手に始めるデクスト。
「おい、何突っ立ってんだ。手続きやるからギルドカード持って来いよ」
カードが必要になったのか、カウンターの向こうから声が聞こえる。
なんとなく断れる雰囲気でもなくなってきたし、どうせ文字も読めなくて他の依頼も選べない。
俺はフィアと瑞樹と顔を見合わせると、肩をすくめてカウンターへとカードを提出するのだった。
デクストと名乗ったオッサン職員が俺たちに冒険者ギルドカードを差し出してきた。
仮身分証と同じサイズだが、材質がよくわからないのはこちらも一緒だった。表面には名前とランクを示す文字が書かれているとのことだったが、何と書かれているのか俺たちには読めない。
「そういやカードの説明は聞くか?」
「はい。お願いします」
「よしきた。ここには名前とランクが記載されていると言ったが、他にも記載されるものがある。それは直近で受けた依頼の難易度だな」
冒険者にはランクが付けられており、依頼も難易度によってランク分けされている。
これは自分に合わない難易度の仕事を選んで自滅しないようにとの措置ではあるが、自分のランクよりも一つ上下の依頼も受けることができる。
一概には言えないが、カードに直近で受けた依頼の難易度を記載することにより、冒険者自身がカードに記載のランクの上と下のどっち寄りかを判断する材料にはなる。もちろん成功か失敗の表示も含めてだ。
ギルドのルールも聞いてみたが、概ね常識内のことだった。
「で、仮身分証持ちのランクはGだ」
普通はFランクから始まるらしいのだが、仮身分証持ちはGランクからとのことだった。『G』という言葉に妙に憐憫の感情が入っている気がする。
余りにも憐憫の目で見てくるので理由を聞いてみたのだが、よっぽどの田舎者で身分証を持っていなくても、入街税を払えないことはないらしい。
それなのに無一文というところを見ると、盗賊かコボルドに襲われたんだろうということだったが、女性が無事にいるところを考えるとコボルドということになる。
どうもこの世界のコボルドは、なぜか渡すものを渡せば見逃してくれるらしいのだ。ただし、鉄貨一枚でも出し渋ると問答無用で襲ってくるとのことで、討伐対象にもなっているモンスターなのだが割と弱い部類らしく。
まあ弱くても数が多ければやられるのは間違いない。
というわけで、手ぶらで無一文な俺たちは、コボルドに襲われて命からがら逃げてきた……、と思われているらしかった。
「……」
否定したいところだが、本当のところを説明するのも面倒なので黙っておく。
……しかしコボルドは一体何にお金を使うというのか。謎である。
「……コボルドって、モンスターですよね?」
フィアも同じ思いだったようだ。理解できないといった表情でデクストに尋ねている。
「そうだな。だがなぜヤツらが金まで集めてるのか理由はわからん」
どうやらそこまで詳しいモンスターの習性などまではわからないらしい。そこって大事なところじゃないですかね。それとも弱すぎるモンスターの情報なんぞ不要ってことですか。そうですか。
「ま、そういうわけだ。草原にもモンスターは出る。街の外に出る依頼はやめておけ」
「わかりました……。ありがとうございます」
カウンターの前を離れて依頼が張り付けてある掲示板の前へとやってきた。とりあえず依頼を受けて完遂せねば借金返済どころか今晩の飯や宿がない。
なのだが。
「……読めない」
そういえばこの世界の文字は読めないんだった。
やべーぞこれは。
「どうしよう……」
瑞樹はオロオロしている。
フィアは頬に人差し指を当てて小首をかしげている。
仕事を探すでもなく、掲示板の前で固まってる俺たち三人を見かねたのか、カウンターの向こうにいた厳ついオッサンが近づいてきた。
「……もしかして字が読めないのか?」
「ええ……、残念ながら読めないです」
こんなところで見栄を張ってもしょうがないので正直に告げる。
「……三人ともか?」
念のためだろうが、俺たち三人を見回して確認してくる。
「「はい……」」
二人そろっての返事を聞いたデクストは、さらに気の毒そうな表情だ。
「おいおい……、字が読めない三人でよく旅ができたな……。無謀すぎたんじゃねーか?」
いやそんなこと言われても。怪しい神に放り出されたんだからしょうがない。
「まあ言ってもしょうがねーか。んならこの依頼受けとけ」
デクストはそう言うと、掲示板の左端にあった依頼票を引き剥がして俺に押し付けてきた。
「……これは?」
渡された依頼票を見ても読めないので、デクストの顔や周囲を見回してみる。
やはりというか、周囲からも憐憫の眼差しを集めてしまっているようだ。解せぬ。いや理由はわかったけども。
「引っ越しの手伝いだ。普通はこんな仕事は冒険者ギルドにゃ回ってこねーんだが、なんでも危険物有りなんだとよ。
それでGランクの割にちょっと報酬もいいらしい。お嬢ちゃん二人にはちときついかもしれんが、まぁ冒険者にゃ危険はつきものだ」
言うだけ言うと、俺たちの反応も見ることなくカウンターへと取って返し、依頼受理の手続きを勝手に始めるデクスト。
「おい、何突っ立ってんだ。手続きやるからギルドカード持って来いよ」
カードが必要になったのか、カウンターの向こうから声が聞こえる。
なんとなく断れる雰囲気でもなくなってきたし、どうせ文字も読めなくて他の依頼も選べない。
俺はフィアと瑞樹と顔を見合わせると、肩をすくめてカウンターへとカードを提出するのだった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました
チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。
完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。
【捕食】
それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。
ゴブリンを食べれば腕力を獲得。
魔物を食べれば新スキルを習得。
レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。
森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。
やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。
これは――
最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに
試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。
そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。
両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。
気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが……
主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。
ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる
ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
半世紀の契約
篠原皐月
恋愛
それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。
一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる