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第四章
転生者は異世界で何を見る? -世話焼き-
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夜が明け始めた頃、主に瑞樹が身だしなみを整え、主に瑞樹が固いベッドで寝たせいで凝り固まった体をストレッチでほぐした後に、冒険者ギルドへと顔を出すことにした。
その頃にはもう宿の女将さんたちは動き出しており、大通りにも人をちらほらと見かけるようになっていた。
やはりこういった世界では夜明けとともに起床し、日没とともに就寝するという生活サイクルになるのだろうか。
冒険者ギルドの中はもうすでに活動している人たちがいるようだった。
人数としては最初にこのギルドを訪れたときとそう変わらないだろうか。そしてカウンターにいる職員もその時と変わらないように思えた。もしかしてブラックなのだろうか。
「おう、早いな。お前ら。昨日はよく眠れたか?」
目ざとく俺たちを見つけたデクストがカウンターの向こう側から声を掛けてきた。
「はい、おかげさまで」
宿では寝てないが、一応そう答えておく。実際に寝てた人もいるしね。……とっても不満顔だったけど。
「そりゃよかった。……で、今日も朝から依頼探しか?」
「そうですね。何せ一文無しなので……」
「ははっ、ちげぇねえ」
昨日の稼ぎの残りは五十リル。鉄貨五枚である。まだ物価は把握できていないが、これでは朝食も満足に食える気がしない。
「それで、薬草採集なんて依頼がないか確認しに来たんですが……」
「あん? 薬草採取はまあ常時依頼だから、どのランクの冒険者でも受付せずに直接持ってきてもらっても問題ないが……。本気か?」
眉を寄せてこちらを心配するように確認してくるデクスト。心配というか、正気を疑うような感じも含まれているように思う。
常時依頼か……。常に不足してるってことかな。
「ええ、本気です」
「草原は比較的モンスターはそんなに出ないが、森はそんなこたぁねえぞ?」
暗にコボルド相手に逃げ出すお前らで大丈夫か、という意味であろうか。まあ安心してください。こちとらチート組なので。
「大丈夫ですよ。それにちょっと、試してみたいこともあるので」
さすがに街中で瑞樹に魔法を教えるのはどうかと思っている。何もないだだっ広い草原でやるのが一番だ。
「……そうか。まぁ準備だけは怠るなよ。……といってもそんな金はねえか。
でもさすがに素手ってのはいただけない。訓練用の木剣だが、Gランクにゃタダで貸し出しもしてるんで、持って行け」
デクストは「ちょっと持ってくるから待ってろ」とだけ言い残してカウンターから姿を消した。
断るのもなんだし、貸してもらえるんなら持っていくか。アイテムボックスには一応、各種世界で手に入れた初期装備一式が入ってたりするが、ここで取り出して装備するわけにはいかないし。
「ふぅ……、よかった。薬草採集があって」
後ろからは安堵のため息が聞こえる。これでギリギリの生活がちょっとはマシになると思ったのだろうか。
でも安心してくれ。お前にはアイテムボックスの中身を披露してやるから。食うに困らないどころか、野営で快適に数か月は暮らせるくらいの蓄えがあるぞ。
「待たせたな。ほれ、これだ。持ってけ」
カウンターの向こう側から姿を現したデクストが、長さの異なる三本の木剣を渡してきた。
「ああ、ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」
即アイテムボックス行きだがな。
とは言え作りはしっかりした木剣のようだ。力のない瑞樹に金属製のショートソードを持たせるよりは振り回せそうな気がするが、短剣や魔法発動の触媒になる杖と言った武器があるのでそっちのほうがいいだろうが。
まぁ、他の世界の杖がこの世界でも通用すればの話だが。
「期間は入街税を払い終えてGランクを脱却までだ。壊したら弁償してもらうが、基本的に貸し出し料金とかは取ってねぇから安心しろ」
受け取った木剣を後ろの二人にも渡す。
「で、薬草採集の説明をするぞ――」
木剣を受け取った俺たちに、聞いてもいないのにデクストは薬草採集の説明を始めた。案外面倒見のいいオッサンなのかもしれない。
話によると、薬草は俺たちが街に入ってきた南側の門から草原に出て、南東方向にある森に群生しているらしい。
見本として木の板に描かれた薬草を見せられたが、見た目はヨモギのようだった。
で、草原と森に現れるモンスターの話が続く。
草原に出るのはウルフというモンスターと、グラスラビットというモンスターの二種類らしい。……狼とウサギかな?
ウルフは群れで襲ってくるがそこまでの集団ではなく、コボルドよりも雑魚らしいのでそこまで脅威ではないらしい。ウサギに至っては大人しく、肉は街でも売れるので捕まえられるのであれば捕まえて来いとのことだった。
ただし問題は森である。ウルフとグラスラビットに加えてコボルトとワイルドボア、そしてまれにではあるがゴブリンが出るらしい。
コボルドは昨日言った通りで、ワイルドボアは猪突猛進で単純攻撃しかしてこないが、体力はあるので最後まで油断はするなとのことだ。
で、ゴブリンである。
やはりというかなんというか、こいつの醜悪さは異世界物語では共通なのかね。……たまに主人公だったりするのもあるけどそれは除外な。
この世界のゴブリンも例外ではなく、他種族のメス個体を利用して繁殖するという話であった。
その頃にはもう宿の女将さんたちは動き出しており、大通りにも人をちらほらと見かけるようになっていた。
やはりこういった世界では夜明けとともに起床し、日没とともに就寝するという生活サイクルになるのだろうか。
冒険者ギルドの中はもうすでに活動している人たちがいるようだった。
人数としては最初にこのギルドを訪れたときとそう変わらないだろうか。そしてカウンターにいる職員もその時と変わらないように思えた。もしかしてブラックなのだろうか。
「おう、早いな。お前ら。昨日はよく眠れたか?」
目ざとく俺たちを見つけたデクストがカウンターの向こう側から声を掛けてきた。
「はい、おかげさまで」
宿では寝てないが、一応そう答えておく。実際に寝てた人もいるしね。……とっても不満顔だったけど。
「そりゃよかった。……で、今日も朝から依頼探しか?」
「そうですね。何せ一文無しなので……」
「ははっ、ちげぇねえ」
昨日の稼ぎの残りは五十リル。鉄貨五枚である。まだ物価は把握できていないが、これでは朝食も満足に食える気がしない。
「それで、薬草採集なんて依頼がないか確認しに来たんですが……」
「あん? 薬草採取はまあ常時依頼だから、どのランクの冒険者でも受付せずに直接持ってきてもらっても問題ないが……。本気か?」
眉を寄せてこちらを心配するように確認してくるデクスト。心配というか、正気を疑うような感じも含まれているように思う。
常時依頼か……。常に不足してるってことかな。
「ええ、本気です」
「草原は比較的モンスターはそんなに出ないが、森はそんなこたぁねえぞ?」
暗にコボルド相手に逃げ出すお前らで大丈夫か、という意味であろうか。まあ安心してください。こちとらチート組なので。
「大丈夫ですよ。それにちょっと、試してみたいこともあるので」
さすがに街中で瑞樹に魔法を教えるのはどうかと思っている。何もないだだっ広い草原でやるのが一番だ。
「……そうか。まぁ準備だけは怠るなよ。……といってもそんな金はねえか。
でもさすがに素手ってのはいただけない。訓練用の木剣だが、Gランクにゃタダで貸し出しもしてるんで、持って行け」
デクストは「ちょっと持ってくるから待ってろ」とだけ言い残してカウンターから姿を消した。
断るのもなんだし、貸してもらえるんなら持っていくか。アイテムボックスには一応、各種世界で手に入れた初期装備一式が入ってたりするが、ここで取り出して装備するわけにはいかないし。
「ふぅ……、よかった。薬草採集があって」
後ろからは安堵のため息が聞こえる。これでギリギリの生活がちょっとはマシになると思ったのだろうか。
でも安心してくれ。お前にはアイテムボックスの中身を披露してやるから。食うに困らないどころか、野営で快適に数か月は暮らせるくらいの蓄えがあるぞ。
「待たせたな。ほれ、これだ。持ってけ」
カウンターの向こう側から姿を現したデクストが、長さの異なる三本の木剣を渡してきた。
「ああ、ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」
即アイテムボックス行きだがな。
とは言え作りはしっかりした木剣のようだ。力のない瑞樹に金属製のショートソードを持たせるよりは振り回せそうな気がするが、短剣や魔法発動の触媒になる杖と言った武器があるのでそっちのほうがいいだろうが。
まぁ、他の世界の杖がこの世界でも通用すればの話だが。
「期間は入街税を払い終えてGランクを脱却までだ。壊したら弁償してもらうが、基本的に貸し出し料金とかは取ってねぇから安心しろ」
受け取った木剣を後ろの二人にも渡す。
「で、薬草採集の説明をするぞ――」
木剣を受け取った俺たちに、聞いてもいないのにデクストは薬草採集の説明を始めた。案外面倒見のいいオッサンなのかもしれない。
話によると、薬草は俺たちが街に入ってきた南側の門から草原に出て、南東方向にある森に群生しているらしい。
見本として木の板に描かれた薬草を見せられたが、見た目はヨモギのようだった。
で、草原と森に現れるモンスターの話が続く。
草原に出るのはウルフというモンスターと、グラスラビットというモンスターの二種類らしい。……狼とウサギかな?
ウルフは群れで襲ってくるがそこまでの集団ではなく、コボルドよりも雑魚らしいのでそこまで脅威ではないらしい。ウサギに至っては大人しく、肉は街でも売れるので捕まえられるのであれば捕まえて来いとのことだった。
ただし問題は森である。ウルフとグラスラビットに加えてコボルトとワイルドボア、そしてまれにではあるがゴブリンが出るらしい。
コボルドは昨日言った通りで、ワイルドボアは猪突猛進で単純攻撃しかしてこないが、体力はあるので最後まで油断はするなとのことだ。
で、ゴブリンである。
やはりというかなんというか、こいつの醜悪さは異世界物語では共通なのかね。……たまに主人公だったりするのもあるけどそれは除外な。
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