本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

文字の大きさ
127 / 153
第四章

転生者は異世界で何を見る? -噂-

しおりを挟む
「ああ……、あれは私の兄のビリーズです」

 変な表情の俺に気が付いたのか、苦笑しながら弟さんが告げる。
 ええっと……、ああ……、なんか見たことあると思ってたけど、キャンプの人か。
 思わず浮かんだのは昔流行ったどこかのダイエットDVDだった。

「あ……、そうなんですか。そりゃ似てるわけだ……」

「はい。双子ではないんですけどね……。で、私が弟のブルートです」

 そこはブートさんじゃないんですね。
 後ろから瑞樹が小さく噴き出す声が一瞬だけ聞こえた。

「マコトです。よろしく」

 自己紹介をする俺に続いてフィアと瑞樹もそれぞれ自分の名前を告げていく。

「これはご丁寧に。
 ……では早速ですが、素材を拝見させていただいてよろしいでしょうか」

「あ、はい」

 見た目に似合わずな丁寧な対応に恐縮しつつも、アイテムボックスから次々と獲物を出していく。

「ほぅ……、これはかなりの数ですね……」

 獲物を確認しながら木の板になにやら書き込みつつ感嘆の声を上げるブルート。

「では、この35番の番号札を渡しておきますね。三十分ほどで査定が終わりますので、後ほど買取カウンターへとお越しください」

 前回と同じく番号札を渡されたので、俺たち三人は倉庫を後にしてギルド内へと戻ることにした。

「三十分で終わるらしいが、どうしようか」

「……お腹空いた」

 両腕を組んで思案する俺に、瑞樹がお腹に手を当ててぽつりと呟く。

「私もお腹空きました」

「じゃあ先に飯でも食うか」

 フィアにも同意されたとなれば断る理由もない。実際に俺も腹が減ってるし。
 そして三人でギルドを出ようとしたところであったが、そこに声を掛けてくる人物がいた。

「なあ、あんたら。……南東の森に行ってたんだって?」

 話しかけてきたのは二十歳過ぎほどの男女二人組の冒険者だった。
 いつものフィアと瑞樹を目当てに話しかけてくるやからとは雰囲気が違う気がする。

「んん? ああ……、そうだけど」

 怪訝な表情で二人組を見返す。
 どちらも獣人族のようで頭の上にもふもふとした耳が生えていた。男の方は犬耳で、女の方は猫耳だろうか。
 一度は獣人の耳をもふもふしてみたいな……。

「じゃ、じゃあさ! 南東の森の向こう側からドラゴンが出たっていう噂は知ってる!?」

 前のめりで興奮した様子でぐいぐい乗り出してくる犬耳冒険者。
 近くにドラゴンが出たという話らしいが恐れる様子がない。この世界でのドラゴンの立ち位置ってどんなもんだったっけ?
 にしてもドラゴンの噂ねぇ。
 聞いたことはないが、あれはやっぱりドラゴンだったってことなのかな。

「……噂?」

 フィアが心当たりなどないとばかりに小首をかしげている。
 瑞樹の反応も同じだ。

「噂は聞いたことはないが、それっぽい空飛ぶ飛行生物なら見たぞ」

「ほ、本当ですかっ!?」

 猫耳女も身を乗り出して興奮状態である。ドラゴンってそんないいもんなのか。

「……あ、ああ。どうも土煙を上げて逃げる何かを追いかけてたようだったが……」

 後ずさりながらなんとか言葉を絞り出す。

「あの……、ドラゴンって恐ろしい生物じゃないんですか? 街の近くに現れたのに……」

 ナイスだ瑞樹。それは俺も気になってたところだ。

「ええぇぇっ!? し、知らないんですか!?」

 大げさに驚いて見せる猫耳女だが、知らないものは知らないのだ。俺たち三人ともこの世界の住人ではないのだし。

「あー、そうだ。俺たちこれから飯にしようと思ってたんだが、そっちもまだなら続きは飯食いながらにしないか?」

 ついでとばかりに飯に誘ってみると、二人は顔を見合わせて頷いた。

「ええ、かまいませんよ!」

「じゃあ行きましょうか!」



 二人の名前は犬耳男がポチ、猫耳女がタマと言った。
 聞いた瞬間にもちろん吹き出しましたとも。瑞樹も一緒に。
 「お前らペットかよ!」と心の中でツッコんだがしょうがないと思う。声に出なかっただけ俺はよくやったと思う。
 そんなこともあって、こっちに来て日の浅い俺たちは二人に案内されてギルド近くの酒場へとやってきていた。

「へ~、ドラゴンって幸運の象徴なんだ?」

 俺は焼き鳥っぽいものをつつきながらポチへと確認する。

「ええ、そうですよ。ドラゴンを目撃した人には幸運が訪れるって話です」

「そうそう。持病が治ったとか、探し物が見つかったとか軽いモノから、金鉱山を掘り当てたとかカジノで一発当てたとか、話だけならたくさん聞くわね」

 ポチとタマの話を聞いて瑞樹は微妙な表情だ。

「……それってホントにドラゴンを目撃したからなんですか?」

 ごもっともな疑問である。俺もそう思う。何か関連があるとは思えない。
 ドラゴンを見かけた人がたまたま運がよかったとか、そういう話ではないんだろうか。

「確かにそういう話だけなら胡散臭いんですけどね。でもちゃんと噂の元になった事実があるんですよ」

 おい、最近の話はお前も胡散臭いと思ってんのかよ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

オリジナルの桜間トオルは死にました

青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。 混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。 もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。 「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」 思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。 その時、見知らぬ声が響く。 「私のことがわかるか? 13人目の桜間トオル?」 これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

処理中です...