本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

文字の大きさ
145 / 153
第四章

転生者は異世界で何を見る? -ザニー工房-

しおりを挟む
「うわっ、すげーなこりゃ……」

 教えてもらったザニー工房の外観を見た瞬間の感想が思わず漏れた。
 どこの大工場だという規模の建物だ。これが魔工都市と言われる所以なのだろうか。
 いやでもここって街の外れだしな……。

 鈍色に輝く建物は学校の体育館ほどの大きさがある。煙突が何本も突き出ており、黒い煙を吐き出すものや白い湯気のようなものを吐き出すもの様々だ。
 そんな建物がいくつも並んでいるのだ。建物同士の間はかなり広くとられており、その間をバイクや車っぽい乗り物が行きかっている。
 フィアと瑞樹も目の前の光景に圧倒されているようで、目が丸くなっている。
 日本にもこれくらいの工場はあるだろうが、瑞樹は見たことがないのだろうか。まぁ工場の敷地内など社会科見学でもなければ高校生が入ることなどないだろうが。

「「すごい……」」

 なんにしろここで見学だけしていても乗り物は手に入らない。
 ……そういえばこの『乗り物』って、何か名前ついてないのかな。
 魔導バイクとか……、ってそれじゃ二輪だけか。……いやそもそもこの世界のバイクが二輪だとは限らないけど。
 いやそういえば三輪バイクもあったっけ。

「まぁ行くか」

 名前なんて工房の人に聞けばいいか。
 無駄な予想はやめてさっさと中に入ることにした。
 一番手前にある、乗り物の看板がかかっている建物へと入る。外が明るかったせいか、建物の奥は目が慣れていなくてまだよく見えない。

「……んん? お客さんかい?」

 入り口横にカウンターがあり、その奥から声が掛かった。
 もちろん客だけど、それ以外にいるとでもいうのか。

「ああ、もちろんそうだけど……」

 受付のお姉さんだろうか。その浅黒い肌の上には、体のラインが浮き出るジャケットを羽織り、細身ではあるが引き締まった肉体をしているのが見て取れる。
 胸部に鎮座する大質量の物体をカウンターの上に乗せ、両肘をついて手で顔を支えていた。

「そうかい。まぁ好きなように商品を見ていきな」

 なんともサバサバとした感じの人である。
 促されるように改めて店の奥へと視線を向けると。

「――うおっ」

 ようやく慣れてきた目に飛び込んできたのは、無数の乗り物たちだった。
 車輪の付いたものが多いが、中には空を飛びそうな形をした乗り物がある。
 一人乗りから数人は乗れそうなタイプまで様々だ。
 ただしその形は四角いものが多い。先端が尖ったタイプなどもあるが、それも角ばっていてやはりごついイメージがある。
 いくら魔工都市として発達した街だとしても、さすがに流体力学などといったものは発達していないか。
 ただし風の抵抗は受けるということはわかるのだろう。

「すごいねー」

「……カッコいい!」

 瑞樹は瞳をキラキラと輝かせている。割と車やバイク好きなんだろうか?
 しばらく三人ばらばらになって展示されている乗り物を物色していく。
 やはり車輪の着いたものが多く、空を飛びそうなものは数少ないながらも、ほとんどが一人乗り用と思われるものしか見当たらない。
 俺は入り口横にあるカウンターにまで戻ると、受付のお姉さんに尋ねてみることにした。

「なあ。ここに空飛ぶタイプの四人くらい乗れるやつってあるか?」

「んんん? ……ないことはないけど、またえらいハイスペックタイプの魔導まどうギアを選ぶんだな」

 おお、魔導ギアってのか、コレは。

「おう、現に今三人いるしな。山越えとかもしたいから、できれば空を飛びたい」

 俺の言葉にニヤリと笑った受付のお姉さん。

「予算やコネはあるのかい?」

 ……コネ? んなもんはないが……、もしかしてないと買えないのか……?
 なんとなく不安に思いながらもこればっかりは聞いてみるしかない。

「いんや、どっちもないが。……ただまぁ具体的な値段や入手方法を全く知らなかったから、それを聞きたいってのもある」

「……なるほど」

 腕を組んで右手を顎に当てながら何かを考えているお姉さん。

「……ところで、あんたらは冒険者かい?」

「ああ」

「ふむ。ランクは?」

「まだなり立てでね。ランクはFだ」

「なるほど。ランクA以上だったら直接責任者と交渉ができたんだけどね……」

 ふむ……、交渉ってなんだろうな? いきなりの価格交渉か? よくわからん……。

「ちょっと待て。……さっきからコネや交渉って言ってるが、何なんだそれは。金があれば買えるってわけじゃないのか?」

 まずは整理しよう。よくわからんまま話を進められても困る。

「そうね。……ここに展示してあるやつは全部お金があれば買えるものだけよ。で、あんたの言うハイスペックの魔導ギアになると、お金だけじゃ買えない」

 なるほど……。金だけじゃダメなのか……。

「そこで『交渉』ね……」

「そうよ。コネや、冒険者ランクA以上であればすぐに交渉に入れる。それがないとなると、まずは最低金額を払ってもわらないとね……。
 ――あ、珍しい魔道具なんかでもいいわよ。……そんなものがあればだけど」

 この魔工都市に工房を構える人間が『珍しい』と言える魔道具などそうそう用意できないだろう、とでも言いたげな表情だ。
 スタイルのいいお姉さんだがなんだかイラっとした。
 しかし珍しい魔道具ね。……LEDライトなんぞ出したら興味を示すかな。
 とりあえず余ってるやつがあるし、試してみるか。魔工都市というくらいだ……、フィアの国よりこういうものの研究は進んでるかもしれない。
 アイテムボックスからソーラー式のLEDライトをカウンターに置くと、「どうぞ」と言わんばかりに手を差し出した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...