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第四章
転生者は異世界で何を見る? -理科の実験-
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「失礼。ここにマコト殿はおられるか」
無駄に高級なホテルっぽい宿で朝食を摂っていると、ドワーフ然とした風体をした髪の毛のないがっしりとした男が周囲を見渡しながら立っていた。
「なんでしょう?」
瑞樹が男を見ながらこっそりと疑問を呟いている。
「もしかしてザニー工房の人だったり?」
フィアもこっそりと予想を呟いている。
でもまぁ本人に聞いてみれば早いよね。
「誠は俺だけど」
男に聞こえる声量で返事を返してやると、向こうも気づいたのかこちらに近づいてきた。
「食事中に失礼。ワシはザニー工房のザルムヴングという者だ」
「これはどうも」
なんとも礼儀正しい人だな。食事中というのがアレだけど、少なくとも見た目が荒っぽい人に見えるだけあって、余計に礼儀正しく感じてしまう。
しかしホントにザニー工房の人だったよ。LEDライトを渡したのは昨日だけど、釣れるの早かったな。
「お話があるのだが、食事の後で時間をもらえないだろうか」
「ええ、かまいませんよ」
やっぱり礼儀正しいな。思わず俺も丁寧口調になってしまった。
「それはありがたい。ではロビーで待たせていただく」
それだけ簡潔に言うと、ザルムヴングは踵を返して宿の食堂から出て行った。
「へー。この世界にも常識のある人っているんだね」
瑞樹が変なところで感心している。まぁ言いたいことはわからないでもないけど。
魔物がいる世界は例にもれず荒っぽい人間が多いと感じることはある。
「みたいだな」
「悪い感じはしなかったし、いい話が聞けるかもしれないね」
みんなにとっても第一印象はいいらしい。
待たせるわけにもいかないので、俺たちは朝飯を詰め込んでロビーへと向かった。
「お待たせ」
ソファに座ってLEDライトをいじくりまわしているザルムヴングに声を掛ける。
……が、どうも集中しているようでこちらに気付いた様子がない。
瑞樹が前に回り込んで目線を合わせるように前かがみになっているが、フィアがそれを慌てた様子で制止している。
そんな目の前のやり取りにようやく気が付いたようで。
「……おや、すみません。……集中すると周りが見えなくなるもので」
ザルムヴングが立ち上がって会釈をする。
「いえいえ、お気になさらず。ところで話というのは……、ソレのことですか」
俺はザルムヴングが手に持っているLEDライトを指さす。
「ええそうです。実に興味深い道具です……。職人として研究せずにはいられません」
ふむ、やっぱり職人さんだったか。話をしたいと寄越したただのお迎えの人かとも一瞬思ったが、やっぱり見た目通りの人間だったらしい。
とりあえず俺はザルムヴングの向かいのソファーへと座り、世間話でもする口調で話しかける。
「興味を持ってもらえてこっちとしてもありがたい。確か交渉材料になるんだっけか」
「ええ、そうです」
念のための確認を取るが、お互い認識は合っているようだ。
「で、そいつの何が知りたい?」
LEDライトを指し示すが、俺も電池の詳しい原理を知っているわけじゃない。
電解質がどうのこうのとかさっぱりだ。
「これも……、電気で動いているんですよね?」
「ああ、そうだな」
ザルムヴングの言葉に俺は鷹揚に頷いて見せる。
「これは……、どうやって電気を作り出しているんでしょうか」
やっぱりそうくるよな。
うーん、どう説明したもんか……。
「……そんなに知りたいか?」
「ええ、とても」
勿体付けるような言葉を吐きながら、内心では時間稼ぎだ。
昔学校で習ったようなことしか知らないが、その記憶自体もあいまいになっている。
……でもまぁなんとかなるかな。
「じゃあちょっと実験するか」
「……実験、ですか?」
「ああ。電気で光る部品みたいなのはあるか?」
「……ええ、手持ちにはないですが、工房に行けばいくつか」
ザルムヴングの言葉に俺は口角を上げる。
「じゃあ場所を変えよう。買いたい材料もあるし」
「……わかりました。工房まで案内いたしましょう」
訝しげに立ち上がったザルムヴングに案内され、俺たちは工房へと向かった。
□■□■□■
「……ま、まさか、こんなことが……」
場所を変えたザニー工房の一角である。
ザルムヴングに提供された豆電球のようなパーツが弱弱しい明かりを発していた。
結果からわかるように、俺の実験は無事成功と言ったところだ。
この結果を目の当たりにした職人であるザルムヴングは、目を見開き顎が外れんばかりに口を開いて震えている。
もう十分くらいこのままなんだが、そろそろ正気に戻ってくれないかな。
テーブルの上に鎮座しているのは何のことはない。市場で買ったフルーツだ。
そのフルーツに硬貨が刺さっており、それに豆電球もどきが繋がっている。
……なんのことはない、レモン電池の再現だ。理科の実験や自由研究としてやった人もいることだろう。
とは言えこの世界にレモンなんぞはないので、それっぽいフルーツを選んでいる。
また豆電球もどきも現代日本にあるような性能ではなく、抵抗値が大きいのかすぐには光らなかった。
しょうがないのでフルーツを直列に二十個ほどつないでようやくといったところだ。念のためいっぱい買っといてよかったよ。
電極に硬貨を使っているのもあるだろう。まぁそこは研究してくれ。日本に戻って調べてもいいが、異世界にしかない金属や電解質もあるだろう。
ミスリルとかオリハルコンがあるかどうか知らないし、まして電気を通すかどうか知らないが、もしかするとそういったものが威力を発揮するかもしれないし。
「これが電池の原理だな。電解質や電極はそっちで研究してくれ」
詳細はすっ飛ばして、丸投げする俺であった。
無駄に高級なホテルっぽい宿で朝食を摂っていると、ドワーフ然とした風体をした髪の毛のないがっしりとした男が周囲を見渡しながら立っていた。
「なんでしょう?」
瑞樹が男を見ながらこっそりと疑問を呟いている。
「もしかしてザニー工房の人だったり?」
フィアもこっそりと予想を呟いている。
でもまぁ本人に聞いてみれば早いよね。
「誠は俺だけど」
男に聞こえる声量で返事を返してやると、向こうも気づいたのかこちらに近づいてきた。
「食事中に失礼。ワシはザニー工房のザルムヴングという者だ」
「これはどうも」
なんとも礼儀正しい人だな。食事中というのがアレだけど、少なくとも見た目が荒っぽい人に見えるだけあって、余計に礼儀正しく感じてしまう。
しかしホントにザニー工房の人だったよ。LEDライトを渡したのは昨日だけど、釣れるの早かったな。
「お話があるのだが、食事の後で時間をもらえないだろうか」
「ええ、かまいませんよ」
やっぱり礼儀正しいな。思わず俺も丁寧口調になってしまった。
「それはありがたい。ではロビーで待たせていただく」
それだけ簡潔に言うと、ザルムヴングは踵を返して宿の食堂から出て行った。
「へー。この世界にも常識のある人っているんだね」
瑞樹が変なところで感心している。まぁ言いたいことはわからないでもないけど。
魔物がいる世界は例にもれず荒っぽい人間が多いと感じることはある。
「みたいだな」
「悪い感じはしなかったし、いい話が聞けるかもしれないね」
みんなにとっても第一印象はいいらしい。
待たせるわけにもいかないので、俺たちは朝飯を詰め込んでロビーへと向かった。
「お待たせ」
ソファに座ってLEDライトをいじくりまわしているザルムヴングに声を掛ける。
……が、どうも集中しているようでこちらに気付いた様子がない。
瑞樹が前に回り込んで目線を合わせるように前かがみになっているが、フィアがそれを慌てた様子で制止している。
そんな目の前のやり取りにようやく気が付いたようで。
「……おや、すみません。……集中すると周りが見えなくなるもので」
ザルムヴングが立ち上がって会釈をする。
「いえいえ、お気になさらず。ところで話というのは……、ソレのことですか」
俺はザルムヴングが手に持っているLEDライトを指さす。
「ええそうです。実に興味深い道具です……。職人として研究せずにはいられません」
ふむ、やっぱり職人さんだったか。話をしたいと寄越したただのお迎えの人かとも一瞬思ったが、やっぱり見た目通りの人間だったらしい。
とりあえず俺はザルムヴングの向かいのソファーへと座り、世間話でもする口調で話しかける。
「興味を持ってもらえてこっちとしてもありがたい。確か交渉材料になるんだっけか」
「ええ、そうです」
念のための確認を取るが、お互い認識は合っているようだ。
「で、そいつの何が知りたい?」
LEDライトを指し示すが、俺も電池の詳しい原理を知っているわけじゃない。
電解質がどうのこうのとかさっぱりだ。
「これも……、電気で動いているんですよね?」
「ああ、そうだな」
ザルムヴングの言葉に俺は鷹揚に頷いて見せる。
「これは……、どうやって電気を作り出しているんでしょうか」
やっぱりそうくるよな。
うーん、どう説明したもんか……。
「……そんなに知りたいか?」
「ええ、とても」
勿体付けるような言葉を吐きながら、内心では時間稼ぎだ。
昔学校で習ったようなことしか知らないが、その記憶自体もあいまいになっている。
……でもまぁなんとかなるかな。
「じゃあちょっと実験するか」
「……実験、ですか?」
「ああ。電気で光る部品みたいなのはあるか?」
「……ええ、手持ちにはないですが、工房に行けばいくつか」
ザルムヴングの言葉に俺は口角を上げる。
「じゃあ場所を変えよう。買いたい材料もあるし」
「……わかりました。工房まで案内いたしましょう」
訝しげに立ち上がったザルムヴングに案内され、俺たちは工房へと向かった。
□■□■□■
「……ま、まさか、こんなことが……」
場所を変えたザニー工房の一角である。
ザルムヴングに提供された豆電球のようなパーツが弱弱しい明かりを発していた。
結果からわかるように、俺の実験は無事成功と言ったところだ。
この結果を目の当たりにした職人であるザルムヴングは、目を見開き顎が外れんばかりに口を開いて震えている。
もう十分くらいこのままなんだが、そろそろ正気に戻ってくれないかな。
テーブルの上に鎮座しているのは何のことはない。市場で買ったフルーツだ。
そのフルーツに硬貨が刺さっており、それに豆電球もどきが繋がっている。
……なんのことはない、レモン電池の再現だ。理科の実験や自由研究としてやった人もいることだろう。
とは言えこの世界にレモンなんぞはないので、それっぽいフルーツを選んでいる。
また豆電球もどきも現代日本にあるような性能ではなく、抵抗値が大きいのかすぐには光らなかった。
しょうがないのでフルーツを直列に二十個ほどつないでようやくといったところだ。念のためいっぱい買っといてよかったよ。
電極に硬貨を使っているのもあるだろう。まぁそこは研究してくれ。日本に戻って調べてもいいが、異世界にしかない金属や電解質もあるだろう。
ミスリルとかオリハルコンがあるかどうか知らないし、まして電気を通すかどうか知らないが、もしかするとそういったものが威力を発揮するかもしれないし。
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