スマホアプリのJKが俺の家にやってきた

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休日の二人

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「おかえりなさい」

 結局今日も帰りが遅くなってしまった。それでも遥は嫌な顔を見せずに笑顔で俺を迎えてくれる。

「ただいま。……すまん、今日も遅くなってしまった」

 ここしばらく帰りが遅い日が続いていた。早く帰ろうと思っても上司が仕事を振ってくるのだ。帰ったら遥が待っているというのに、ままならないものだ。
 遥と話をすることがあまりできていない。

「いえ、拓海さんは毎日がんばってくれていますし、気にしないでください」

 一瞬だけ寂しそうな表情がかすめるが、すぐに笑顔になる遥。だけど我慢をさせているみたいで俺が心苦しくなるばかりだ。

「いや……、でも……」

 気にするなと言われて気にせずにいられるわけもない。だからといって俺には返す言葉が見つからない。早く仕事を終わらせるということを実践するしかないのだ。

「だから、今はこれで拓海さん成分を補給しておきますね」

 気づかないうちに足元に視線が下がっていたが、ふわりと甘い香りが漂う。気が付けば俺は、遥に抱きしめられていた。
 ハッとして視線を上げると、いたずらが成功したみたいな顔をした遥がいる。

「きゃっ!」

 思わず抱きしめ返すと、弾力のある柔らかな体が腕の中に感じられた。勢いで遥の顔が俺の胸へとうずめられる。そのまま頭をなでていると、胸元から「えへへ」と声が聞こえてきた。可愛すぎるだろこれ……。

「今日もご飯冷めないうちに食べてくださいね」

 しばらくそうしていると、遥が顔を上げて促してくる。言われるがままにリビングへと向かうと、二人で夕飯を食べた。



 金曜日の夜。いつものように二人で夕飯を食べている時だった。

「明日は土曜日ですね」

 嬉しそうに遥がいつもよりニコニコと笑顔で告げてくる。

「そうだな」

 だけど俺の気分は沈んだままだ。

「どうかしたんですか?」

 そんな俺に気が付いたのか、不安そうに遥が尋ねてくる。

「ごめん……、明日は仕事なんだ」

 あんのクソ上司め……。定時直後に仕事を押し付けやがって、自分はライブがあるから休めないだと……!?
 内心の怒りを面に出さないように気を付けつつ、遥には謝ることしかできない。

「そう……、なんですか」

 しゅんとする遥に心が締め付けられる。遥が来てくれてから初めての休みだったのに、なんで仕事なんだ。こんなに寂しそうにしている遥をどうにかしてやりたい。

「でもほら、明後日は休みだから、二人で出かけよう」

 俺の言葉にハッと顔を上げる遥。

「本当ですか!?」

「絶対に明日で全部仕事を終わらせる」

「約束ですよ!」

「ああ、約束だ」

 嬉しそうにする遥に俺は気合を入れなおす。
 翌日、気合で仕事を終わらせた俺は日曜日を手に入れることに成功した。



「えへへ、これ美味しいですよ」

 食べかけのチュリトスが差し出されると、若干躊躇しつつも一口もらう。

「うん、美味しいな」

 俺は今まで遥自身のことには触れないようにしてきた。もちろん物理的に触れることもだ。スマホアプリから出てきただけに、何かあったら消えてしまわないかと怖かったこともある。

 それが……、間接……だと!?

 いやすでに食べた後だけど。躊躇しすぎるのも不自然かと思って食べてしまったあとだけど!
 まぁ深刻に考えるのはやめよう。遥と二人で楽しく過ごすのだ。せっかくの休日出勤を終えた日曜日なのだ。楽しく過ごさないと遥に悪い。

「ほら、これなんて拓海さんに似合うと思いますよ」

 そう言いながら、今度は黄緑色のジャケットを俺の体の前に当てて嬉しそうだ。

「そうかなぁ。あんまり派手なのは……」

 とかいいつつ、遥がいいって言うならいいのかな? と思考を放棄しそうな自分に苦笑いが浮かぶ。

「えー、一度着てみてくださいよ」

 ぷくーっと頬を膨らませながら言われたら、そりゃ着るしかない。それにジャケットならわざわざ試着室に入らなくてもいいし。

「わぁ、やっぱり似合いますよ!」

 仕方なさをおもてに出しつつ着てみると、賞賛の言葉が飛んできた。

「そうかな?」

 そう言われるとまんざらでもない気分になってくる。うん、買っちゃおうかコレ。
 決めた後は早いことに、紙袋を抱えてお店を出る。反対側の腕には遥がぎゅっと捕まっていて、その表情をみると上機嫌だ。そろそろおなかが減ってきたし、夕飯も外食にするか。

「はい、拓海さん。あーん」

 遥の注文したオムライスがスプーンに載せられて、俺へと向けられている。なんかこの年になって恥ずかしく思いつつも、口を開いてかぶりつく。すでに一回やったし、躊躇はない。そして美味い。

「じゃあ遥も」

 俺も自分のハンバーグをフォークに刺すと、遥へと食べさせる。

「美味ひぃです」

 咀嚼しながらしゃべるものだから、ちゃんと言葉になっていない。そんな様子の遥も可愛くてたまらない。こうして遥との日曜日は過ぎていく。

「はー、疲れました……」

 ふと気が付くと遥の眉間にしわが寄っている。ちょっと遊びすぎたかな。スマホで時間を確認するともう21時だ。電池残量も10%を切ってるし、そろそろ充電しないとな。

「そうだな。帰ろうか」

「はい!」

 こうして一日中デートを楽しんだ俺たちは、二人で手をつないで家路についた。
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