モーニングコーヒーはぬるめで

慶野るちる

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本編

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 さすがに宿直室でそのままセックスというわけにはいかなくて(当たり前だ!)、翌日、宿直を終えた樫木が家に帰る車に乗せてもらって。……寮の門を出た少し離れたところで車で拾ってもらうとか、こそこそ甚だしいことをせざるを得ないことに仕方ないと思いつつも面倒でもあって。一人で歩いていくには距離がある。まあ、時間がかかることが問題ではなく、「今すぐやりたい」ということで。樫木が!
 さらに教職員住宅などという、ステルスゲーム張りのスリルは必要ない。それでもポストに一番近い、つまり車を建物につけてすぐドア、的な位置にある樫木の部屋に行くしかない。まあ今日は日曜で、独身者専用のここもみんな外出してることだろう、独身社会人の行動なんて知らないが。
「ちょ、まって」
 がっつかれることが嬉しいかというとそうでもない。樫木の癖なのか。こっちの気まで急かされてるようで、それ系の人形みたいな扱いだと思わないこともない。
 ちゃんとベッドの上だ。別に逃げる予定も早く帰る予定もないのだから、ゆっくりすりゃいいのに。
「なんだ」
 樫木はなぜ止められたのかわからないらしくきょとんとして顔を上げた。
「もう少しゆっくりしてくれるといいんですけど」
 瞼に落とされた樫木のキスは順に下へと降りて行って、今やわき腹あたりを吸っているが、この後もう一度上からやり直して何往復かするんですかという勢いで。じゃないとこのまま降りて行って扱かれて俺は達って、時間にして五分強。そんなのあるか。
「あ、すまん。気持ち良くなかったか?」
「そんなことはないですけど……もう少し情緒が欲しいですよ」
 手順を踏めばいいと、あれをやってこれをやれば挿入スタンバイです、なんてなると思ってるのかよ。そんなに人間上手くできてない。やる気があれば即OKじゃないだろ。
「なるほどな、ついお前に挿れることだけ考えてたな」
 おい……。時間内で何回出せるかとかそんな基準で致してるのか、もしかして。
 その後、仕切り直しだと俺の言い分を考慮した樫木はそれはもうねちねちと頭から足の先まで身体中を舐めて、背中を通って尾骶骨あたりに来た頃には身体すべてが性感帯になった気がして痙攣のように身体が震えていた。
「極端……なんだ、よ……」
 やりすぎだ、今度は。わざとかよ。
 短い間隔で吐き出される息が熱を持って、その先を勝手に強請る。
「お前が声を我慢するからついな。北見だったら出るのか?」
 まだ北見の名前を出すのか。敵対心丸出しはやめろ。俺はここにいるのに。
 ……まあそうかもしれない。淡くそんな思いもあったのかもしれない。無理だとわかっていても。でももう単なる癖でしかない。
「堪えるのも、手を噛むのもやめろ」
 そう言って、俺の腕をとってベッドから起こすと背中から抱き竦めた。背中にぬくもりを感じるのは嫌いじゃない、と樫木にそうされて知った。気が抜けて安心する。
「お前の本当の姿が知りたいよ、多田」
 だらりと垂らしていた左手に樫木の指が絡むと首筋に舌が滑った。
「ん……っ」
 樫木の右手が亀頭をゆっくりと撫でて竿をやんわりと擦る。
「……っ……んぅ」
 すっかり出来上がってる身体は早くどうにかなりたくて、そんな呑気に扱かれるのが辛くて。
「達き、たい……」
 自分から口にするなんて初めてだ。求められることに応えるばかりだった。セフレとの何の感情もないセックスはそれが正解だ。淡々と快楽を追求してグズグズとした心を空っぽにして。半分は罰のようなものだったし。
「よく言えたな、いい子だ」
 濡れた舌が耳孔に滑り込み、水音をたてながら脳を犯していく。
「ぅ……っん……ふ……」
 背中から快感が駆け上がって思わず仰け反ったのと同時にペニスへの刺激が強いものへと変わった。
「あぁっ……!」
 声を殺すタイミングなどはかれなくて。閉じ方を忘れたように口から声が零れて。
「っあ……ぅ、ああ……あぁっ」
「いいんだ、それで」
「あ……ぁ、もう……い、く…………っ……」
 白濁したとろりとした液が樫木の手の中に放たれ、一気に脱力した。
「少し寝るか?」
 疲れただろう、と樫木は俺の背中を抱えたまま髪を撫でた。
「いや……俺だけイって、ダメだろ……」
 確かに疲労感はある。だが俺のケツあたりに当たってるあんたのソレはかなり元気だ。
「駄目じゃない。お前が起きるまで待てばいい話だ」
 どうすんだよそれ。
「元気なお前に挿れるのが至上というもんだ」
 何言ってんだ。
「いいから寝とけ」
 抱えられたまま半ば強引にベッドに横になると身体を思い切り緩められる安堵感に瞼が落ちて。背中のぬくもりが更に眠りへと誘う。自分だけ気持ち良くなってと申し訳なく思いながらも意識が遠のいていった。
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