39 / 49
番外編
39 夏の話 10
しおりを挟む
気心が知れた同級生ってのは楽だ。少し、わかってしまった。
とは言っても別に北見のことは今はどうこう思ってない。友達としてはやっぱり好きだけども。おそらくあの電話でなんかおかしいコイツ、と思ったのだろう。その行動力には驚くがさすが北見というか。いい奴なんだよな、ホントに。ハグは……俺が死にそうな顔でもしてたんだろうか。うさぎじゃあるまいし。
そんなこんなで歩いていける距離にある大型スーパーでしこたま惣菜とおにぎりを買って帰った。先に買ったカップ麺もパンもストックってことでいい。
さすがに食べ物をベッドに広げてピクニック気分、ってのはないだろうと、俺の机と同室者の机二つ使って出来合いディナーとなった。惣菜は和洋中揃っている。
こんな風に二人して机に座ってると半年前までの気分になる。でも最後は俺はほっとしてたんだっけ。部屋替えは寂しい、でも四六時中拗らせた想いを押し殺さなくていいんだ、と。ある意味俺は男運が悪いのか。
「このエビチリうま。北見もほら」
俺の机にあったエビチリのパックを手渡す。
「サンキュ。から揚げ……ってそっちにもあったのか」
場所のトレードとばかりに北見はから揚げのパックを手に取ったが俺の机を見て手を離した。
「から揚げたくさん食いたいじゃん。2パックかごに入れたのよ」
「俺は魚の方が好きだな」
「あらそう。俺はおこちゃまらしいからな」
から揚げの話をしたらまたそう言いそうだ。や、もうすることもないか。
「鶏肉の定番と言えなくもないし、俺の小学校のリクエスト給食はいつも一位だったぞ」
「はいはい、俺は子供だよ」
小学生と一緒にすな。
「それはそうと、去年は家に帰ってたろ。今年はやめたのか」
北見は五個目のおにぎりに手を伸ばした。部活男子だけあってか食いっぷりはいい。米好きだしな。惣菜もほぼ空いて、残るはポテサラとから揚げが少々。
「まあ勉強しないといけないとは俺も思っててさ。ここなら静かだし」
嘘塗れだ。一度は帰ったくせに。
「確かに長期休暇中は静かな環境になるな。同室の奴が帰省すればなおさら」
まだひとっつもやってないけどな。
「北見、わざわざ来てくれてありがとな」
ディナーももう終わりだ。そしてデザートを買ってなかったなと気付き。今度こそアイスの自販機行くか。
「お前だって、もし俺が落ち込んでたら同じことしただろ?」
「でも別に俺落ち込んでなんかないのよ?」
格好をつけるわけじゃないが、北見のフィールドと俺のフィールドの重なるところで何かがあったわけじゃない。何かがあったんだろう、と思ってくれるのは嬉しいが話せるかどうかは別の話だ。コメントしようのない話をしても困らせるだけだ。一緒に飯を食ってくれるだけでありがたい。
「そうか。迷惑だったか?」
「まさか。お前が迷惑なんて一度も思ったことないよ、俺」
楽しいとか嬉しいとか、そんな中にぽつんと切ない気持ちもあったが、それはもう空へ消えていった。
「なあ、お前は? もしかして何かあった?」
少しだけ思ったことを訊いてみた。ハグなんてこれまでしたこともないことまでやって。
「いや、何もない。お前が気になったから来ただけだ」
「そか。まあつまんねえ嘘ついたしな」
結局、電話を切られたのはここに来るためだったのか、用事のついでに寄ったのか。その辺何も言わないんだよな。
「話さなくていいとは言ったが、お前無理してないか?」
「無理なんかしてねえよ? そもそも何を無理し」
急に誰かが廊下を全力で走っているような音がしたと思ったら、この部屋のドアが勢いよく開いた。
……いや、ノックぐらいしろよ。
振り返れば肩から小振りのスポーツバッグを提げてぜいぜいと荒い息で立っていたのは樫木。
「あゅ……多田」
「なんですか?」
なんでここにいんだよ、宿直室は一階だし、宿直だとしても担任だとしても通常教員が生徒の部屋までくることはない。禁止されてるのかは知らないが、寮母さんしか見たことないような。
「うす」
北見が冷めた目で樫木を見ている。岸さんにといい、結構強気なんだよな北見って。でも優等生的な北見が樫木に睨まれることはないだろうから別に敵対するようなことはないはずなのにな。前は樫木に頼れなんて言ってたのに。
でもここに樫木が来たことで北見も思うところがあるかもしれない。訊かれた時ははぐらかさずにちゃんと答えよう。もう終わってんだけどって。
で、その格好。スーツにスポーツバッグ。仕事帰り、か?
「いや、北見、お前た」
「晩飯がないんで二人で買いに行って食べてました。終わったら部屋に戻りますよ、規則違反するつもりはないです」
遮るように北見はドア口で立ち尽くす樫木をじっと見て言った。樫木は何を言おうとしてたんだ。
「お、おう……」
「多田、俺は部屋に戻る」
「あ、うん、サンキュな」
食い散らかした惣菜のパックやおにぎりの包みを全部スーパーのビニール袋に入れて北見はゴミ一つ残さずに部屋を出て行った。
とは言っても別に北見のことは今はどうこう思ってない。友達としてはやっぱり好きだけども。おそらくあの電話でなんかおかしいコイツ、と思ったのだろう。その行動力には驚くがさすが北見というか。いい奴なんだよな、ホントに。ハグは……俺が死にそうな顔でもしてたんだろうか。うさぎじゃあるまいし。
そんなこんなで歩いていける距離にある大型スーパーでしこたま惣菜とおにぎりを買って帰った。先に買ったカップ麺もパンもストックってことでいい。
さすがに食べ物をベッドに広げてピクニック気分、ってのはないだろうと、俺の机と同室者の机二つ使って出来合いディナーとなった。惣菜は和洋中揃っている。
こんな風に二人して机に座ってると半年前までの気分になる。でも最後は俺はほっとしてたんだっけ。部屋替えは寂しい、でも四六時中拗らせた想いを押し殺さなくていいんだ、と。ある意味俺は男運が悪いのか。
「このエビチリうま。北見もほら」
俺の机にあったエビチリのパックを手渡す。
「サンキュ。から揚げ……ってそっちにもあったのか」
場所のトレードとばかりに北見はから揚げのパックを手に取ったが俺の机を見て手を離した。
「から揚げたくさん食いたいじゃん。2パックかごに入れたのよ」
「俺は魚の方が好きだな」
「あらそう。俺はおこちゃまらしいからな」
から揚げの話をしたらまたそう言いそうだ。や、もうすることもないか。
「鶏肉の定番と言えなくもないし、俺の小学校のリクエスト給食はいつも一位だったぞ」
「はいはい、俺は子供だよ」
小学生と一緒にすな。
「それはそうと、去年は家に帰ってたろ。今年はやめたのか」
北見は五個目のおにぎりに手を伸ばした。部活男子だけあってか食いっぷりはいい。米好きだしな。惣菜もほぼ空いて、残るはポテサラとから揚げが少々。
「まあ勉強しないといけないとは俺も思っててさ。ここなら静かだし」
嘘塗れだ。一度は帰ったくせに。
「確かに長期休暇中は静かな環境になるな。同室の奴が帰省すればなおさら」
まだひとっつもやってないけどな。
「北見、わざわざ来てくれてありがとな」
ディナーももう終わりだ。そしてデザートを買ってなかったなと気付き。今度こそアイスの自販機行くか。
「お前だって、もし俺が落ち込んでたら同じことしただろ?」
「でも別に俺落ち込んでなんかないのよ?」
格好をつけるわけじゃないが、北見のフィールドと俺のフィールドの重なるところで何かがあったわけじゃない。何かがあったんだろう、と思ってくれるのは嬉しいが話せるかどうかは別の話だ。コメントしようのない話をしても困らせるだけだ。一緒に飯を食ってくれるだけでありがたい。
「そうか。迷惑だったか?」
「まさか。お前が迷惑なんて一度も思ったことないよ、俺」
楽しいとか嬉しいとか、そんな中にぽつんと切ない気持ちもあったが、それはもう空へ消えていった。
「なあ、お前は? もしかして何かあった?」
少しだけ思ったことを訊いてみた。ハグなんてこれまでしたこともないことまでやって。
「いや、何もない。お前が気になったから来ただけだ」
「そか。まあつまんねえ嘘ついたしな」
結局、電話を切られたのはここに来るためだったのか、用事のついでに寄ったのか。その辺何も言わないんだよな。
「話さなくていいとは言ったが、お前無理してないか?」
「無理なんかしてねえよ? そもそも何を無理し」
急に誰かが廊下を全力で走っているような音がしたと思ったら、この部屋のドアが勢いよく開いた。
……いや、ノックぐらいしろよ。
振り返れば肩から小振りのスポーツバッグを提げてぜいぜいと荒い息で立っていたのは樫木。
「あゅ……多田」
「なんですか?」
なんでここにいんだよ、宿直室は一階だし、宿直だとしても担任だとしても通常教員が生徒の部屋までくることはない。禁止されてるのかは知らないが、寮母さんしか見たことないような。
「うす」
北見が冷めた目で樫木を見ている。岸さんにといい、結構強気なんだよな北見って。でも優等生的な北見が樫木に睨まれることはないだろうから別に敵対するようなことはないはずなのにな。前は樫木に頼れなんて言ってたのに。
でもここに樫木が来たことで北見も思うところがあるかもしれない。訊かれた時ははぐらかさずにちゃんと答えよう。もう終わってんだけどって。
で、その格好。スーツにスポーツバッグ。仕事帰り、か?
「いや、北見、お前た」
「晩飯がないんで二人で買いに行って食べてました。終わったら部屋に戻りますよ、規則違反するつもりはないです」
遮るように北見はドア口で立ち尽くす樫木をじっと見て言った。樫木は何を言おうとしてたんだ。
「お、おう……」
「多田、俺は部屋に戻る」
「あ、うん、サンキュな」
食い散らかした惣菜のパックやおにぎりの包みを全部スーパーのビニール袋に入れて北見はゴミ一つ残さずに部屋を出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる