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憑依魔法習得
9話 やり直しができない契約
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とにかくマリモと相談する。
「とりあえずこれで九右衛門の試練にエントリーできる。それだけで良くないか?」
「私もそう思う。あいつの事だし、ゲーム内のチートスキル利用して試練達成とかケチ付けそうだし」
「だな。あえてこの憑依魔法とやらは使わないのもありかもな」
意見が一致した。
そのまま今日はお開きに。
「じゃあねえ」
「ああ」
ログアウトして半透明になるマリモに手を振った。
今日はもう寝るとしよう。
「・・・・・・こいつ、メニューに出しゃばるのか」
ログアウトする前に何となくメニュー画面を空中に出した。
その右端に・・・・・・貧相な帽子被ったデフォルメされたゴーストのイラストが表記されていた。
†††††
目が覚めた。
カーテンから漏れ出る日光がやたら明るい。
これは多分・・・・・・昼だ。
「次郎! いい加減起きなさい! 片付かないでしょ!」
「・・・・・・!」
母さんの怒鳴り声が聞こえた。
慌てて飛び起きて階段を下りる。
「焼きそばか」
思わずつぶやいた。
寝起きにはちとキツいメニューの匂いが漂ってる。
「あんたね。いくら夏休み中だからってダラけすぎでしょ」
「母さん。何度も言ってるだろ? 今年だけは大目に見てやってくれよ」
「あ、兄貴」
珍しい。
平日の真っ昼間なのに兄貴が食卓で焼きソバとサラダを頬張ってる。
どちらにしろ、今回は兄貴は俺の味方か。
「次郎、座れ」
「ああ」
「まずは説教だ」
「は、はあ?」
味方かと思ったら、なんだか機嫌が悪い。
なんなのか。
「なんだよ?」
冷蔵庫を開けてコップにオレンジジュース注いでから座る。
正直兄貴が説教とか珍しい。
「なんでレッサーゴーストとなんか契約した?」
「・・・・・・」
「おい、聞いてるのか?」
まさかのゲームの話だった。
それは24才の会社員が真顔で弟に言うことなのか。
「なんで兄貴がそれ知ってんの?」
もそもそと焼きそばを食べながら適当に聞いた。
「お前昨日付けでランクAになったからな」
「へ、へえ」
「エーテルランドストーリーのA級プレーヤーは大まかなステータスやスキルがネットに公開されるんだよ」
「え? そうなの?」
知らなかった。
それにいろいろ不可解だ。
「それって俺の個人情報も世間にさらされてるってこと?」
「もちろん。むしろ若はそれが望み」
「若。ねえ」
そういえば命尾グループ御曹司の九右衛門。
グループ内で若って呼ばれてるらしい。
「とにかく頼むぞ。お前が若のお付きになんかなれたらな、社内での俺の立場もグンと上がる」
「って自分のためかよ?」
「そうだ」
やけに協力的なのはそういう事か。
まあそれを堂々と言うところは好感が持てるが。
†††††
食事が終わった。
皿やコップを台所に置いて、インスタントコーヒーのフタを開ける。
「兄貴も飲むか」
「頼む」
リビングに移動した。
説教はまだ続くらしい。
「まあもう契約してしまったものは仕方ない。レッサーゴーストの能力をいかに有効に使うか考えないとな」
いつの間にか兄貴はテーブルにホワイトボードを広げてた。
「ちょっと太郎。それ、あとでちゃんと戻しときなさいよ」
「わかってるって」
台所で洗い物をしている母さんの声が聞こえてきた。
そういえばそのホワイトボードにはいつもスーパーのお得セールの情報とかメモってある。
「いいか、次郎。お前はおそらく近いうちに特定プレーヤーのみで争うイベントに召集される」
「召集?」
なにやら説明が始まった。
†††††
兄貴はスマホ片手に熱心に語る。
「エーテルランドストーリーではA級プレーヤー同士のイベントにかぎって、プレーヤーへの攻撃が可能になる」
「ああ、それは何となく聞いたことある。動画サイトでお祭りになる奴だろ」
「そう。ゲーム中のリアルな戦いは見る人に取っては格闘技の試合やスポーツより見応えあるからな。エーテルランドをプレーしないで、視聴するだけの層も増えてきてる」
そうらしい。
血しぶきが上がったりはしないが、ルールほぼ無しの実践に近い戦いを見れる。
それが動画サイトで人気がうなぎ上りな理由だとか。
「えっと、エーテルランドストーリー以外のゲームのプレーヤー同士の戦いも視聴者に人気あるの?」
「いや、全然」
「そうなんだ」
「エーテルランドほどプレーヤーを細かく再現できるゲームは今のところないからな。一強状態」
「ふーん」
「そんなことより、聞け! 繰り返すが、契約したからにはレッサーゴーストの能力をフルに生かさないといけない」
熱が入ってきた。
サッカー以外でこんなに熱くなってるのは初めて見た。
「あのさ、なんか知らないけどそんなに契約したのが気にくわないなら別のと契約すればいいだろ?」
気軽に言った。
それを聞いた兄貴は呆れた表情を返す。
「エーテルランドストーリーの憑依魔法の契約って奴は取り返しがつかないぞ」
「え?」
「まあデータ消して登録し直すなら別だけどな」
「・・・・・・」
迂闊だった。
昨日はもう少し考えて行動すべきだったかもしれない。
「でもまあ、憑依魔法とか使わないつもりだったんだけど」
昨日マリモと話した件を兄貴に伝える。
「いやあ、命尾流古武術の免許皆伝。多分憑依魔法を使いこなすことも試練の一つだぞ」
したり顔で返された。
「根拠は?」
「いや、勘だけど」
「・・・・・・」
まあ深く考えないようにしよう。
こういうのはいつものことだ。
「とりあえずこれで九右衛門の試練にエントリーできる。それだけで良くないか?」
「私もそう思う。あいつの事だし、ゲーム内のチートスキル利用して試練達成とかケチ付けそうだし」
「だな。あえてこの憑依魔法とやらは使わないのもありかもな」
意見が一致した。
そのまま今日はお開きに。
「じゃあねえ」
「ああ」
ログアウトして半透明になるマリモに手を振った。
今日はもう寝るとしよう。
「・・・・・・こいつ、メニューに出しゃばるのか」
ログアウトする前に何となくメニュー画面を空中に出した。
その右端に・・・・・・貧相な帽子被ったデフォルメされたゴーストのイラストが表記されていた。
†††††
目が覚めた。
カーテンから漏れ出る日光がやたら明るい。
これは多分・・・・・・昼だ。
「次郎! いい加減起きなさい! 片付かないでしょ!」
「・・・・・・!」
母さんの怒鳴り声が聞こえた。
慌てて飛び起きて階段を下りる。
「焼きそばか」
思わずつぶやいた。
寝起きにはちとキツいメニューの匂いが漂ってる。
「あんたね。いくら夏休み中だからってダラけすぎでしょ」
「母さん。何度も言ってるだろ? 今年だけは大目に見てやってくれよ」
「あ、兄貴」
珍しい。
平日の真っ昼間なのに兄貴が食卓で焼きソバとサラダを頬張ってる。
どちらにしろ、今回は兄貴は俺の味方か。
「次郎、座れ」
「ああ」
「まずは説教だ」
「は、はあ?」
味方かと思ったら、なんだか機嫌が悪い。
なんなのか。
「なんだよ?」
冷蔵庫を開けてコップにオレンジジュース注いでから座る。
正直兄貴が説教とか珍しい。
「なんでレッサーゴーストとなんか契約した?」
「・・・・・・」
「おい、聞いてるのか?」
まさかのゲームの話だった。
それは24才の会社員が真顔で弟に言うことなのか。
「なんで兄貴がそれ知ってんの?」
もそもそと焼きそばを食べながら適当に聞いた。
「お前昨日付けでランクAになったからな」
「へ、へえ」
「エーテルランドストーリーのA級プレーヤーは大まかなステータスやスキルがネットに公開されるんだよ」
「え? そうなの?」
知らなかった。
それにいろいろ不可解だ。
「それって俺の個人情報も世間にさらされてるってこと?」
「もちろん。むしろ若はそれが望み」
「若。ねえ」
そういえば命尾グループ御曹司の九右衛門。
グループ内で若って呼ばれてるらしい。
「とにかく頼むぞ。お前が若のお付きになんかなれたらな、社内での俺の立場もグンと上がる」
「って自分のためかよ?」
「そうだ」
やけに協力的なのはそういう事か。
まあそれを堂々と言うところは好感が持てるが。
†††††
食事が終わった。
皿やコップを台所に置いて、インスタントコーヒーのフタを開ける。
「兄貴も飲むか」
「頼む」
リビングに移動した。
説教はまだ続くらしい。
「まあもう契約してしまったものは仕方ない。レッサーゴーストの能力をいかに有効に使うか考えないとな」
いつの間にか兄貴はテーブルにホワイトボードを広げてた。
「ちょっと太郎。それ、あとでちゃんと戻しときなさいよ」
「わかってるって」
台所で洗い物をしている母さんの声が聞こえてきた。
そういえばそのホワイトボードにはいつもスーパーのお得セールの情報とかメモってある。
「いいか、次郎。お前はおそらく近いうちに特定プレーヤーのみで争うイベントに召集される」
「召集?」
なにやら説明が始まった。
†††††
兄貴はスマホ片手に熱心に語る。
「エーテルランドストーリーではA級プレーヤー同士のイベントにかぎって、プレーヤーへの攻撃が可能になる」
「ああ、それは何となく聞いたことある。動画サイトでお祭りになる奴だろ」
「そう。ゲーム中のリアルな戦いは見る人に取っては格闘技の試合やスポーツより見応えあるからな。エーテルランドをプレーしないで、視聴するだけの層も増えてきてる」
そうらしい。
血しぶきが上がったりはしないが、ルールほぼ無しの実践に近い戦いを見れる。
それが動画サイトで人気がうなぎ上りな理由だとか。
「えっと、エーテルランドストーリー以外のゲームのプレーヤー同士の戦いも視聴者に人気あるの?」
「いや、全然」
「そうなんだ」
「エーテルランドほどプレーヤーを細かく再現できるゲームは今のところないからな。一強状態」
「ふーん」
「そんなことより、聞け! 繰り返すが、契約したからにはレッサーゴーストの能力をフルに生かさないといけない」
熱が入ってきた。
サッカー以外でこんなに熱くなってるのは初めて見た。
「あのさ、なんか知らないけどそんなに契約したのが気にくわないなら別のと契約すればいいだろ?」
気軽に言った。
それを聞いた兄貴は呆れた表情を返す。
「エーテルランドストーリーの憑依魔法の契約って奴は取り返しがつかないぞ」
「え?」
「まあデータ消して登録し直すなら別だけどな」
「・・・・・・」
迂闊だった。
昨日はもう少し考えて行動すべきだったかもしれない。
「でもまあ、憑依魔法とか使わないつもりだったんだけど」
昨日マリモと話した件を兄貴に伝える。
「いやあ、命尾流古武術の免許皆伝。多分憑依魔法を使いこなすことも試練の一つだぞ」
したり顔で返された。
「根拠は?」
「いや、勘だけど」
「・・・・・・」
まあ深く考えないようにしよう。
こういうのはいつものことだ。
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