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52限目 夢乃と藤子

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 2人が立ち上がり頭を下げると、レイラは荷物を持ち同じようにお辞儀をして、その場を去っていった。
 その頃には教室には他の生徒はいなく、レイラがいなくなったため二人きりになった。
 レイラが見えなくなると、夢乃は椅子の背もたれに寄りかかった。

「中村彩花、ムカつくわ」

 レイラがいる時とは全く違う荒々しい声を上げたのは夢乃だ。藤子は彼女の前の席の椅子に座り向い合わせになった。

「藤(ふじ)、部活行かなくて良いの?」
「うん、明日からだよ。夢(ゆめ)ちゃんは?」
「私も明日からよ」
「そっかぁ。なら、今日一緒に帰れるね」
「いつも帰ってるでしょ。私の方が片付けがあって遅いだらか先帰れば良いのに」
「えー。やだよ。それじゃなくても一緒にいる時間短いのに」

 ムスっと膨れ机に潰れた藤子の頭を夢乃は優しくなぜた。藤子は猫っ毛であり、それをサイドにまとめている。

「ふわふわして気持ちいい毛よね」
「いくらでも触って良いから、もっと一緒にいてよ」
「休日も一緒にいるでしょ。だから、成績落ちたのよ。今日はもう帰るわよ。レイラ様から出された課題やらなくちゃ」
「あ、あ、もしかして、レイラ様が課題を出したとき渋った様な態度とったのって」

 藤子は手を握りしめて心底嬉しそうな顔した。
 夢乃は真っ赤になって、横を向くと荷物をカバンに入れ始めた。

「バカ藤、うるさいわね。帰るわよ」
「はぁい」

 藤子は怒鳴り散らす夢乃に楽しそうに返事をして自分の席に行き、自分の荷物を鞄に入れた。藤子が帰りの準備を終える頃には夢乃はもう教室の扉に立っていた。

「わぁ、待ってよ」
「藤子さん、教室出るから言葉遣い直しなさいよ」
「はい。特待のルールよね」

 2人は姿勢を正して、玄関に向い廊下を歩いていった。外からは運動部の練習する声が聞こえた。通りすぎる教室にも残っている生徒がいるらしく話し声がするところもあった。

 しばらく進むと、藤子の瞳に見覚えのある影が映った。夢乃も気づいたらしく、一瞬足を止めたがその影を追った。

「え? 夢乃さん?」

 慌てて、彼女の後を追うと彼女は藤子の方を向いて人差し指を口の前に立てるとすぐに進行方向を向いた。
 影は階段を上がった。

 夢乃が、影に見つからない様にそっと追うので藤子も同じように静かに彼女の後をついて行った。

 影は空き教室に入っていた。
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