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109限目 盗聴器の交換
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リョウは対面するレイラとまゆらの間の席に座った。
3方向に3人が座り、しばらく沈黙が続いた。
レイラは2人の言葉を待っていた。
リョウは何も言わずにいると、まゆらが痺れを切らした。
「リョウさんが言わないのでしたら、私が全て話ますよ」
「いや、私が話しますよ」
そう言って、リョウはレイラの方を向いた。彼は罰の悪そうな顔をしていた。
レイラはまゆらが眼鏡に向かって話をした時点で、リョウが何をしていたのか想像がついていた。しかし、本人に口から話すのを待っていた。
「えっとですね。レイラさんの眼鏡は僕が選んで、レイラさんの専属家政婦だったトメに購入したをお願いしたです。その時に盗聴器を仕込みました」
「……」
予想通りの出来事にレイラはため息をついた。
「ちなみに、まゆらさんが使っていた眼鏡にも、ついていますよ」
「え……?」
リョウだけではなく、まゆらの方もだったことにレイラは驚いた。
「私はリョウさんと違い、レイラさんの監視目的ではありませんよ。元々自分の眼鏡でしたから。あくまで自己防衛のためです」
「……そうですわよね」
まゆらの言い分に、レイラは違和感を持ちながらも同意すると、即座にリョウが意義を唱えた。
「それは、交換する時伝えなかった時点で私と同罪ですよね」
(だよな)
すると、まゆらは下を向いて瞳だけを動かしてレイラの顔を見た。眼鏡が少しずれてその間から覗く寂しそうにな顔はレイラの胸に矢を突き刺した。
(やべ、その顔は反則だろう。もともと俺はまゆタソの顔が好みだんだよ)
「ごめんなさい。レイラさんの事が知りたかったです」
更に追い討ちの謝罪。レイラを骨抜きするには十分な言葉だった。
「いいですわ。そんなに知りたいならいくらでも。お兄様、お兄様からもらったペンダントのついになる物を持ってきたください。それで、お兄様の今回の行いは許しますわ」
「……それは、私が用意したもので」
「では、私は家を出ますわ」
「え、そんな……。大道寺を出て生きてはいけませんよ」
(大丈夫だって。施設生活は悪くない。それに、俺(レイラ)の成績なら桜華の特待いけるだろ)
慌てて止めるリョウにレイラは何も言わずにニヤリと笑った。
「まゆらさん、貴女も何か言ってください。もし、レイラさんが本当に家を出たら、あなたもここで暮らせなくなりますよ」
「いいですよ。桜華の特待受かりましたし、それでレイラさんと一緒に暮らしますわ」
「中学生が借りられるところなんてないですよ」
「そうですね。どうしましょう。毎日ホテルも難しいですよね……」
チラリとまゆらはレイラは見た。
「それは、そうですけど。まゆらさんは私(わたくし)が“大道寺”でなくても構いませんの?」
「私は“大道寺家の令嬢”ではなく、レイラさん自身と一緒にいたいです」
(なんで、こんなに好かれてるんだ? なにしたっけ? でも、マジ嬉しいな。レイラになってから誰もが“大道寺家の令嬢”としか見てなかったしな。本当、まゆタソはいいこだな。もう結婚したい)
「まゆらさん」
見つめ合う二人にリョウは大きなため息をついた。
「わかりましたよ。その代わり、まゆらさん。レイラさんが持っている貴女の眼鏡の対になる機械くださいね」
そう言って、まゆらの返事を待たずに「失礼します」とリョウは部屋を出て行った。
「リョウさんって短気ですね」
「……」
まゆらは立ち上がると、持ってきたックから四角い箱を取り出してテーブルの上に置いた。レイラがそれをじっと眺めているとまゆらは椅子に座った。
「これが盗聴器で拾った音を受信する機械です。レイラさんのペンダントの方が性能がいいのでそれをもらえるならコレは渡してもいいです」
「そうですか」
「それにしても、レイラさんはリョウさんに愛させていますわね。妹を常に監視するなんて大変な労力ですよね」
「……」
(兄貴が俺(レイラ)を愛しているだって? そうなのか?)
「でも、私の方がレイラさんを好きですからね。リョウさんの家族愛とは違いますよ」
「ありがとうございます」
(もし、まゆらか自分が男だったらの彼女と一緒になれたかもしれないな。だけど、まゆらと同性である以上、彼女と結ばれることはない。でも好かれるのはとても嬉しいな)
「あ、そうです。以前の家政婦、えっと伊藤カナエさん。なんで、まだ雇ってるのですか? レイラさんのお父様が心配していましたよ」
「彼女も被害者ですわ。でも、もう二度と私(わたくし)とは接触できませんわ」
レイラは寂しそうに言った。その時、扉をノックする音がした。まゆらはすぐに扉に向かい開けるとリョウが手のひらサイズの丸い物を持って現れた。それをまゆらに渡すと、彼はレイラを見た。
「これでいいですか?」
「はい」
暗い顔をするリョウにレイラは笑顔見せた。その間に、まゆらはテーブルに置いてあった箱をリョウの方に持って言った。
「監視もほどほどにしてくださいね」
「貴女に言われたくありませんよ」
「私はレイラさん公認です」
「それは私も同じです」
レイラに聞こえない声で二人は小さな火花を散らしていた。
「明日は入学式ですから、それそろ休みましょう」
レイラの言葉で、2人は言い争いをやめた。
リョウは「失礼します」と言ってその場を去って言った。彼が去ったのを見送ると、レイラもまゆらに挨拶をして部屋を出て自室に向かった。
3方向に3人が座り、しばらく沈黙が続いた。
レイラは2人の言葉を待っていた。
リョウは何も言わずにいると、まゆらが痺れを切らした。
「リョウさんが言わないのでしたら、私が全て話ますよ」
「いや、私が話しますよ」
そう言って、リョウはレイラの方を向いた。彼は罰の悪そうな顔をしていた。
レイラはまゆらが眼鏡に向かって話をした時点で、リョウが何をしていたのか想像がついていた。しかし、本人に口から話すのを待っていた。
「えっとですね。レイラさんの眼鏡は僕が選んで、レイラさんの専属家政婦だったトメに購入したをお願いしたです。その時に盗聴器を仕込みました」
「……」
予想通りの出来事にレイラはため息をついた。
「ちなみに、まゆらさんが使っていた眼鏡にも、ついていますよ」
「え……?」
リョウだけではなく、まゆらの方もだったことにレイラは驚いた。
「私はリョウさんと違い、レイラさんの監視目的ではありませんよ。元々自分の眼鏡でしたから。あくまで自己防衛のためです」
「……そうですわよね」
まゆらの言い分に、レイラは違和感を持ちながらも同意すると、即座にリョウが意義を唱えた。
「それは、交換する時伝えなかった時点で私と同罪ですよね」
(だよな)
すると、まゆらは下を向いて瞳だけを動かしてレイラの顔を見た。眼鏡が少しずれてその間から覗く寂しそうにな顔はレイラの胸に矢を突き刺した。
(やべ、その顔は反則だろう。もともと俺はまゆタソの顔が好みだんだよ)
「ごめんなさい。レイラさんの事が知りたかったです」
更に追い討ちの謝罪。レイラを骨抜きするには十分な言葉だった。
「いいですわ。そんなに知りたいならいくらでも。お兄様、お兄様からもらったペンダントのついになる物を持ってきたください。それで、お兄様の今回の行いは許しますわ」
「……それは、私が用意したもので」
「では、私は家を出ますわ」
「え、そんな……。大道寺を出て生きてはいけませんよ」
(大丈夫だって。施設生活は悪くない。それに、俺(レイラ)の成績なら桜華の特待いけるだろ)
慌てて止めるリョウにレイラは何も言わずにニヤリと笑った。
「まゆらさん、貴女も何か言ってください。もし、レイラさんが本当に家を出たら、あなたもここで暮らせなくなりますよ」
「いいですよ。桜華の特待受かりましたし、それでレイラさんと一緒に暮らしますわ」
「中学生が借りられるところなんてないですよ」
「そうですね。どうしましょう。毎日ホテルも難しいですよね……」
チラリとまゆらはレイラは見た。
「それは、そうですけど。まゆらさんは私(わたくし)が“大道寺”でなくても構いませんの?」
「私は“大道寺家の令嬢”ではなく、レイラさん自身と一緒にいたいです」
(なんで、こんなに好かれてるんだ? なにしたっけ? でも、マジ嬉しいな。レイラになってから誰もが“大道寺家の令嬢”としか見てなかったしな。本当、まゆタソはいいこだな。もう結婚したい)
「まゆらさん」
見つめ合う二人にリョウは大きなため息をついた。
「わかりましたよ。その代わり、まゆらさん。レイラさんが持っている貴女の眼鏡の対になる機械くださいね」
そう言って、まゆらの返事を待たずに「失礼します」とリョウは部屋を出て行った。
「リョウさんって短気ですね」
「……」
まゆらは立ち上がると、持ってきたックから四角い箱を取り出してテーブルの上に置いた。レイラがそれをじっと眺めているとまゆらは椅子に座った。
「これが盗聴器で拾った音を受信する機械です。レイラさんのペンダントの方が性能がいいのでそれをもらえるならコレは渡してもいいです」
「そうですか」
「それにしても、レイラさんはリョウさんに愛させていますわね。妹を常に監視するなんて大変な労力ですよね」
「……」
(兄貴が俺(レイラ)を愛しているだって? そうなのか?)
「でも、私の方がレイラさんを好きですからね。リョウさんの家族愛とは違いますよ」
「ありがとうございます」
(もし、まゆらか自分が男だったらの彼女と一緒になれたかもしれないな。だけど、まゆらと同性である以上、彼女と結ばれることはない。でも好かれるのはとても嬉しいな)
「あ、そうです。以前の家政婦、えっと伊藤カナエさん。なんで、まだ雇ってるのですか? レイラさんのお父様が心配していましたよ」
「彼女も被害者ですわ。でも、もう二度と私(わたくし)とは接触できませんわ」
レイラは寂しそうに言った。その時、扉をノックする音がした。まゆらはすぐに扉に向かい開けるとリョウが手のひらサイズの丸い物を持って現れた。それをまゆらに渡すと、彼はレイラを見た。
「これでいいですか?」
「はい」
暗い顔をするリョウにレイラは笑顔見せた。その間に、まゆらはテーブルに置いてあった箱をリョウの方に持って言った。
「監視もほどほどにしてくださいね」
「貴女に言われたくありませんよ」
「私はレイラさん公認です」
「それは私も同じです」
レイラに聞こえない声で二人は小さな火花を散らしていた。
「明日は入学式ですから、それそろ休みましょう」
レイラの言葉で、2人は言い争いをやめた。
リョウは「失礼します」と言ってその場を去って言った。彼が去ったのを見送ると、レイラもまゆらに挨拶をして部屋を出て自室に向かった。
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