桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
110 / 131

109限目 盗聴器の交換

しおりを挟む
 リョウは対面するレイラとまゆらの間の席に座った。

 3方向に3人が座り、しばらく沈黙が続いた。

 レイラは2人の言葉を待っていた。
 リョウは何も言わずにいると、まゆらが痺れを切らした。

「リョウさんが言わないのでしたら、私が全て話ますよ」
「いや、私が話しますよ」

 そう言って、リョウはレイラの方を向いた。彼は罰の悪そうな顔をしていた。
 レイラはまゆらが眼鏡に向かって話をした時点で、リョウが何をしていたのか想像がついていた。しかし、本人に口から話すのを待っていた。

「えっとですね。レイラさんの眼鏡は僕が選んで、レイラさんの専属家政婦だったトメに購入したをお願いしたです。その時に盗聴器を仕込みました」
「……」

 予想通りの出来事にレイラはため息をついた。

「ちなみに、まゆらさんが使っていた眼鏡にも、ついていますよ」
「え……?」

 リョウだけではなく、まゆらの方もだったことにレイラは驚いた。

「私はリョウさんと違い、レイラさんの監視目的ではありませんよ。元々自分の眼鏡でしたから。あくまで自己防衛のためです」
「……そうですわよね」

 まゆらの言い分に、レイラは違和感を持ちながらも同意すると、即座にリョウが意義を唱えた。

「それは、交換する時伝えなかった時点で私と同罪ですよね」

(だよな)

 すると、まゆらは下を向いて瞳だけを動かしてレイラの顔を見た。眼鏡が少しずれてその間から覗く寂しそうにな顔はレイラの胸に矢を突き刺した。

(やべ、その顔は反則だろう。もともと俺はまゆタソの顔が好みだんだよ)

「ごめんなさい。レイラさんの事が知りたかったです」

 更に追い討ちの謝罪。レイラを骨抜きするには十分な言葉だった。

「いいですわ。そんなに知りたいならいくらでも。お兄様、お兄様からもらったペンダントのついになる物を持ってきたください。それで、お兄様の今回の行いは許しますわ」
「……それは、私が用意したもので」
「では、私は家を出ますわ」
「え、そんな……。大道寺を出て生きてはいけませんよ」

(大丈夫だって。施設生活は悪くない。それに、俺(レイラ)の成績なら桜華の特待いけるだろ)

 慌てて止めるリョウにレイラは何も言わずにニヤリと笑った。

「まゆらさん、貴女も何か言ってください。もし、レイラさんが本当に家を出たら、あなたもここで暮らせなくなりますよ」
「いいですよ。桜華の特待受かりましたし、それでレイラさんと一緒に暮らしますわ」
「中学生が借りられるところなんてないですよ」
「そうですね。どうしましょう。毎日ホテルも難しいですよね……」

 チラリとまゆらはレイラは見た。

「それは、そうですけど。まゆらさんは私(わたくし)が“大道寺”でなくても構いませんの?」
「私は“大道寺家の令嬢”ではなく、レイラさん自身と一緒にいたいです」

(なんで、こんなに好かれてるんだ? なにしたっけ? でも、マジ嬉しいな。レイラになってから誰もが“大道寺家の令嬢”としか見てなかったしな。本当、まゆタソはいいこだな。もう結婚したい)

「まゆらさん」

 見つめ合う二人にリョウは大きなため息をついた。

「わかりましたよ。その代わり、まゆらさん。レイラさんが持っている貴女の眼鏡の対になる機械くださいね」

 そう言って、まゆらの返事を待たずに「失礼します」とリョウは部屋を出て行った。

「リョウさんって短気ですね」
「……」

 まゆらは立ち上がると、持ってきたックから四角い箱を取り出してテーブルの上に置いた。レイラがそれをじっと眺めているとまゆらは椅子に座った。

「これが盗聴器で拾った音を受信する機械です。レイラさんのペンダントの方が性能がいいのでそれをもらえるならコレは渡してもいいです」
「そうですか」
「それにしても、レイラさんはリョウさんに愛させていますわね。妹を常に監視するなんて大変な労力ですよね」
「……」

(兄貴が俺(レイラ)を愛しているだって? そうなのか?)

「でも、私の方がレイラさんを好きですからね。リョウさんの家族愛とは違いますよ」
「ありがとうございます」

(もし、まゆらか自分が男だったらの彼女と一緒になれたかもしれないな。だけど、まゆらと同性である以上、彼女と結ばれることはない。でも好かれるのはとても嬉しいな)

「あ、そうです。以前の家政婦、えっと伊藤カナエさん。なんで、まだ雇ってるのですか? レイラさんのお父様が心配していましたよ」
「彼女も被害者ですわ。でも、もう二度と私(わたくし)とは接触できませんわ」

 レイラは寂しそうに言った。その時、扉をノックする音がした。まゆらはすぐに扉に向かい開けるとリョウが手のひらサイズの丸い物を持って現れた。それをまゆらに渡すと、彼はレイラを見た。

「これでいいですか?」
「はい」

 暗い顔をするリョウにレイラは笑顔見せた。その間に、まゆらはテーブルに置いてあった箱をリョウの方に持って言った。

「監視もほどほどにしてくださいね」
「貴女に言われたくありませんよ」
「私はレイラさん公認です」
「それは私も同じです」

 レイラに聞こえない声で二人は小さな火花を散らしていた。

「明日は入学式ですから、それそろ休みましょう」

 レイラの言葉で、2人は言い争いをやめた。
 リョウは「失礼します」と言ってその場を去って言った。彼が去ったのを見送ると、レイラもまゆらに挨拶をして部屋を出て自室に向かった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...