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ずっと忘れていたが、自分は全裸であった。ふんどし一枚で生活する事もあったため、それがなくとも違和感がなかった。
トウからもらった着物着心地の良さに驚いた。
「どうかな? 君の浅黒い肌によく似合うよ」
赤という色に初めて手を通した。
そもそも、身に着ける物は落ちている物を適当羽織っていたで元の色がよくわからないほど汚れていた。
「これ……?」
「君がいた村で買った」
「え?」
彼の容姿なら、『鬼』だとすぐわかりそうなものだ。
「店主に何も言われなかったのか?」
「何も言わないよ」トウはヘラヘラと笑った。「彼らはいつもこころよく品物くれるよ」
トウが家にいることが村の人間に知られた理由が分かった。
彼に言った通り、村を出る事になった事を後悔していない。むしろ良かったと思っている。
「店に顔を出すだけでたいては、好きな物を持っていっていいと言うよ」
『鬼』が来たらそうなるだろう。ただ、トウが相手を脅す気がない事が意外であった。
じっとトウの顔を見ると彼は子供のように首を傾げた。
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