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第11話 男の娘

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「ここだよ」

祐介はそう言ってマンションの中にはいると、入り口でセキュリティーを解除をするとエレベーターに乗った。姫路はマンションの様子を見ながら祐介の後を追った。

マンションから様々な人の声が頭に流れてきて、姫路はそれに集中した。

住人は高収入の家庭が多く、子どものいる世帯は少ないようであった。

室内に入り居間に案内されて、姫路はローテーブルに座った。祐介は手を洗ってきて、おしぼりと冷たい麦茶を「どうぞ」と言って置いた。
姫路はそれを受け取るとおしぼりで手を拭いて、麦茶を一口含んだ。

「あの、えっとひめちゃんだっけ? ごめんね。名前聞いてなかったね」
「いえ」

今日限りの人間に自分の情報を与える気がなかった姫路は適当に返事をした。祐介は“ひめちゃん”と呼んでいいかというので許可した。

「今からお風呂わかすけど入る? それとも何か食べる?」

姫路の様子を伺いながら祐介は話をした。

(ご飯いらないって言ったから聞いちゃまずかったかな。風呂は……もしかして、進めるのはマズイ感じかな)

色々とごちゃごちゃと悩んでいる祐介に、姫路はなんとも表現しずらい気持ちになった。損得なしで気遣われるとくすぐったい気持ちになった。

「……では、シャワーを貸してください」
「勿論、場所は部屋を出て右の扉だよ。あ、そっか」

(服が……、必要だよね。あったかなぁ)

祐介は立ち上がると、「待っていて」と言って部屋を出て行った。姫路は、祐介の言葉を無視して立ち上がると、風呂場に向かった。
家族向けな作りであるため、風呂も数名で入れるくらい広かった。

姫路は服を脱いで、洗濯機の上に畳んでおくと浴室に入った。水道をひねりシャワーを出すとそれがとても気持ちよく感じた。

その時、脱衣場の扉を叩く音がして開いた。姫路はシャワー止めて脱衣場を見た。

「シャワー中、ごめんね。妹の服で申し訳ないんだけど……置いとくね」

そう言って、椅子の上に服を置く祐介の影を姫路はじっと見つめていた。彼は洗濯機の上にあった姫路に服を見つけるとそれに触れた。姫路はそんな彼をキッと睨みつけた。

(これ……、う~ん)

祐介は服を持ち上げて、顔の前に持ってくるとそれをくるくると動かしている。姫路はその様子に“やはりコイツも他と変わらないか”と思いため息をついた。そして、扉に手を掛けて開けた。

「あのさ、人の服で興奮するのやめ……」
「あ、ひめちゃん。勝手に服を触ってごめんね。コレどうやって洗うのかな? タグみたんだけどよく分からなくて…」

そう言いながら、スーツから短パンとシャツに着替えた祐介は顔を上げてると目を大きくして姫路の股間を凝視した。

(お、男の子……?)

祐介は彼の股間にあるモノをみると安堵したようでニコリと微笑んだ。

(そっか。男の子だったか。しかし、最近の子どもはでかいな……)

「男の子だったんだね。気づかなくてごめん。で、服はどう洗ったらいいのかな?」

姫路は自分の裸を見た祐介の反応が予想外で言葉が出なかった。呆然とその場に立ち尽くしていると、祐介は服を洗濯機の上に置いてタオルも持った。そして、姫路の身体をタオルで丁寧に拭いた。

「アレ? 頭洗ってないの?」

そう言って祐介はタオルをカゴに入れると、姫路を浴室に戻した。そして、祐介はシャツとズボンを脱ぐと腰にタオルを巻いてから下着に脱いだ。

股間のモノは見せびらかすモノでないが、祐介から絶対に見せたくないという意思が感じられ不思議の思った。

浴室に入ってきた祐介に姫路は椅子に座らせられ頭にシャワーを掛けられた。

「髪長いから大変だね」
「……」

祐介はシャンプーを姫路の頭につけると丁寧に洗っていった。

(痛くないかな)

リンスもつけて洗い終わると、ボディタオルに石鹸をつけると泡立てて祐介は姫路に渡した。

「同性だけど、流石に前は自分で洗ってね」

姫路がそれを受け取り、身体を洗っているともう一つのボディタオルを出して背中を洗った。
全てが終わると、祐介は姫路からボディタオルを受け取ると、彼にシャワーを掛けて泡を全て流した。

「これで大丈夫かな。じゃ、俺このまま風呂はいるから。タオル足りなかったら出して」

そう言われて、姫路は浴室から追い出された。
姫路がさっき使っていたタオルを手して身体を拭いた。

浴室の扉が閉まり、すこし立つと中からは、祐介の鼻歌が聞こえた。

(男の子だったかぁ。うん、本当によかった)

祐介の声は機嫌よく、姫路からしたら訳が分からなかった。裸を見せたのに、襲われることも股間のモノにニヤつく様子もなかった。
タオルで隠れていたため、定かではないが彼の股間のモノも反応はしていなかった。

ただ、洗われた。

姫路は身体を拭き終わると、用意されたシャツ着た。

「ピッタリ」

そして、ズボンを履くときに、替えのパンツがなく、どうしようか悩んだが履いていた物を履く気になれず直接ズボンを履いた。

「冷たい……」

髪から水分が滴り落ちた。
服が濡れ、それが気持ち悪くてため息をついた。

髪をタオルで巻き、トボトボ居間にいった。
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