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体調を確認されると、あっという間に生家に向かう馬車に乗らされた。
アルベルトは遠ざかるシドニー家の見ているうちに眠気に襲われた。普段はカトリーナと一緒の馬車に乗っているため気を張っているが今はその必要はない。アルベルトは抵抗することなく瞼を閉じた。
「アル」
金切り声と頬の衝撃に驚いて目を覚ました。
「侍従が私の前で居眠りとはいい身分ね」
「――ッ」
目の前に顔を赤くして怒り狂ったカトリーナがいた。
「申し訳ございません」
アルベルトは揺れる馬車の床に跪き頭を下げた。しかし、アルベルトは一人で馬車に乗ったような気がした。だが、実際カトリーナが目の前にいる。違和感を持ったがそれを顔に出さないように堪えた。
「しっかりしてよね。これからエドワード様に会いに行くのだから」
「……はい」
カトリーナが頬を染めた。
確かに、エドワードが住む王宮に向かう予定があったと記憶にはあるがそれが夢のような曖昧に感覚があった。
「エドワード様は素晴らしいの。顔もお綺麗で知識も豊富でお優しいわ」
聞いてもいない事を自分に言い聞かせる様にカトリーナ話した。
そのセリフはどこかで聞いた事があった気がしたが思い出せない。
馬車は門の前で止められた。門番と御者が何かを話している。
「一体何事?」突然、馬車を止められた事にカトリーナ怒鳴った。「いつもはすぐに中に入れるじゃない」
「お待ちください」
アルベルトが馬車を降りると、門番が近づくと彼は頭を下げた。彼の話によるとエドワードは不在らしい。約束をしている事を伝えると門番は返答に困った。不在である事を謝罪されたがエドワードの所在地については口を閉ざした。
ありのままをカトリーナに伝えると烈火のごとく怒り叩かれた。避けようと思えばできる程度の攻撃だったが、アルベルトは全て受けた。カトリーナの小さな手は赤くなり、セットされた髪は乱れ、顔は涙でぐちゃぐちゃであった。
「なんで、なんでよ。私、頑張ったのに」
この日のために、勉学や王妃教育、楽器も全て寝る間も惜しんで終わらせ更におしゃれに二時間以上かけた。
その仕打ちがこれではあまりに不憫であった。
一通り暴れると、カトリーナはアルベルトの腕の中で眠った。
アルベルトの頬は赤く腫れあがり、腕にはひっかき傷があった。アルベルトはじっと自分の傷を見た後、寝ているカトリーナの顔を見た。
目がはれ上がり顔全体がむくんでいる。
自分の腕の傷はカトリーナの心の傷だ。
アルベルトは御者に迂回してゆっくりと屋敷に戻るように伝えた。
村に入ると、若い男女が手を繋いでいるのが見えた。
「……私を好きな人と一緒にいたい」
腕の中から小さな声が聞こえた。
カトリーナはアルベルトの赤く腫れあがった頬に触れた。
「私は嫌な人間。嫌われて当たり前……」
「お嬢様」
アルベルトは自分の頬に触れるカトリーナの手をそっと包んだ。
「私はお嬢様が好きです。ずっと一緒にいますよ」
カトリーナに恋愛感情はないが、大切な人間だ。だから、傷つけ無駄に浪費させるエドワードに対して良い感情を持っていなかった。
「ありがとう」カトリーナは小さく笑った。「エドワード様に好かれるように頑張るから。王妃になれるように、お父様やお母様にも褒めてもらえるように頑張るから」
小さな身体にたくさんのモノが乗っていた。
『頑張らなくていいよ。私がなんとかするから』と言える立場にない自分を呪った。所詮は伯爵家の次男坊。カトリーナの側にいて身の回りの世話をする事しか出来ない無能な人間だ。
「ん?」
馬車からエドワードの姿が見えた。錯覚だと思ったが王族独特の金色に青い瞳を持つ、美しい人間を見間違えるはずがなかった。
「どうしたの?」
「いえ」
アルベルトはカトリーナを抱きかかえ、外が見えない様にした。
「今日はお疲れでしょうからおやすみ下さい」
そっと、カトリーナの瞳の上に手をやると、彼女は安心したようで目を閉じた。
アルベルトは横目で、また窓の外を見た。馬車が進んでいるため、エドワードは小さくなっていた。たが、彼が黒髪の女性と仲睦まじい姿ははっきりと見えた。
村外れのこの場所は殆ど往来がないため、彼らは油断したのだろう。少し離れた所に、小さな馬車が止まっていた。王族の紋はないが質の良い作りしている。見る人が見れば上流階級の物だと分かる。
王族や貴族が側室や遊び相手を持つのは珍しくはない。しかし、それが許されるのは男のみ。女は、特に王家に入る場合、異性との接触が発覚すれば極刑だ。
「……」
アルベルトは腕の中で、眠る小さな少女を見た。
「私は貴女に何ができるのだろうか」
アルベルトは遠ざかるシドニー家の見ているうちに眠気に襲われた。普段はカトリーナと一緒の馬車に乗っているため気を張っているが今はその必要はない。アルベルトは抵抗することなく瞼を閉じた。
「アル」
金切り声と頬の衝撃に驚いて目を覚ました。
「侍従が私の前で居眠りとはいい身分ね」
「――ッ」
目の前に顔を赤くして怒り狂ったカトリーナがいた。
「申し訳ございません」
アルベルトは揺れる馬車の床に跪き頭を下げた。しかし、アルベルトは一人で馬車に乗ったような気がした。だが、実際カトリーナが目の前にいる。違和感を持ったがそれを顔に出さないように堪えた。
「しっかりしてよね。これからエドワード様に会いに行くのだから」
「……はい」
カトリーナが頬を染めた。
確かに、エドワードが住む王宮に向かう予定があったと記憶にはあるがそれが夢のような曖昧に感覚があった。
「エドワード様は素晴らしいの。顔もお綺麗で知識も豊富でお優しいわ」
聞いてもいない事を自分に言い聞かせる様にカトリーナ話した。
そのセリフはどこかで聞いた事があった気がしたが思い出せない。
馬車は門の前で止められた。門番と御者が何かを話している。
「一体何事?」突然、馬車を止められた事にカトリーナ怒鳴った。「いつもはすぐに中に入れるじゃない」
「お待ちください」
アルベルトが馬車を降りると、門番が近づくと彼は頭を下げた。彼の話によるとエドワードは不在らしい。約束をしている事を伝えると門番は返答に困った。不在である事を謝罪されたがエドワードの所在地については口を閉ざした。
ありのままをカトリーナに伝えると烈火のごとく怒り叩かれた。避けようと思えばできる程度の攻撃だったが、アルベルトは全て受けた。カトリーナの小さな手は赤くなり、セットされた髪は乱れ、顔は涙でぐちゃぐちゃであった。
「なんで、なんでよ。私、頑張ったのに」
この日のために、勉学や王妃教育、楽器も全て寝る間も惜しんで終わらせ更におしゃれに二時間以上かけた。
その仕打ちがこれではあまりに不憫であった。
一通り暴れると、カトリーナはアルベルトの腕の中で眠った。
アルベルトの頬は赤く腫れあがり、腕にはひっかき傷があった。アルベルトはじっと自分の傷を見た後、寝ているカトリーナの顔を見た。
目がはれ上がり顔全体がむくんでいる。
自分の腕の傷はカトリーナの心の傷だ。
アルベルトは御者に迂回してゆっくりと屋敷に戻るように伝えた。
村に入ると、若い男女が手を繋いでいるのが見えた。
「……私を好きな人と一緒にいたい」
腕の中から小さな声が聞こえた。
カトリーナはアルベルトの赤く腫れあがった頬に触れた。
「私は嫌な人間。嫌われて当たり前……」
「お嬢様」
アルベルトは自分の頬に触れるカトリーナの手をそっと包んだ。
「私はお嬢様が好きです。ずっと一緒にいますよ」
カトリーナに恋愛感情はないが、大切な人間だ。だから、傷つけ無駄に浪費させるエドワードに対して良い感情を持っていなかった。
「ありがとう」カトリーナは小さく笑った。「エドワード様に好かれるように頑張るから。王妃になれるように、お父様やお母様にも褒めてもらえるように頑張るから」
小さな身体にたくさんのモノが乗っていた。
『頑張らなくていいよ。私がなんとかするから』と言える立場にない自分を呪った。所詮は伯爵家の次男坊。カトリーナの側にいて身の回りの世話をする事しか出来ない無能な人間だ。
「ん?」
馬車からエドワードの姿が見えた。錯覚だと思ったが王族独特の金色に青い瞳を持つ、美しい人間を見間違えるはずがなかった。
「どうしたの?」
「いえ」
アルベルトはカトリーナを抱きかかえ、外が見えない様にした。
「今日はお疲れでしょうからおやすみ下さい」
そっと、カトリーナの瞳の上に手をやると、彼女は安心したようで目を閉じた。
アルベルトは横目で、また窓の外を見た。馬車が進んでいるため、エドワードは小さくなっていた。たが、彼が黒髪の女性と仲睦まじい姿ははっきりと見えた。
村外れのこの場所は殆ど往来がないため、彼らは油断したのだろう。少し離れた所に、小さな馬車が止まっていた。王族の紋はないが質の良い作りしている。見る人が見れば上流階級の物だと分かる。
王族や貴族が側室や遊び相手を持つのは珍しくはない。しかし、それが許されるのは男のみ。女は、特に王家に入る場合、異性との接触が発覚すれば極刑だ。
「……」
アルベルトは腕の中で、眠る小さな少女を見た。
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