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悠は普段から昼食は食堂でとっている。食堂と言っても持参した弁当を食べることもできるし談話室や自習室としても使用される場所だ。
食堂は混んでいたため、席を探すことに苦戦したが、木山恵が見つけてくれた。
この席を探す行為が悠にとっては新鮮であった。普段は女の子の誰かが席をとって弁当を用意してくれる。
「あっ」悠が大きな声を上げた。
「どうした?」正樹は首を傾げた。
先に座っていた木山恵と可沼一香の二人は立っている悠を見上げた。
「いや、大丈夫。ご飯買ってくるね」
食堂には数多くの売店があるが、どこも混んでいた。
一回学校を出てコンビニへ行こうかと思った瞬間、手首を捕まれた。
「え?」
「俺、弁当多めに作ってるから食えよ」
悠はゆっくりと振り向いた。
正樹はテーブルの上に弁当を広げていた。唐揚げにウズラのゆで卵、きゅうりとおにぎりという内容は普通であった。しかし、ゆで卵に顔ありおにぎりはクマの形をしている。
ファンシーな弁当に心が躍った。
「可愛い」
「だろう」正樹は嬉しそうにした。
ふと、木山恵と河沼一香と方を見ると彼らはコンビニのおにぎりとサンドイッチを食べていた。
「朝からそれだけも物作れるのはすごいわよね」河沼一香が感心した。
それは同意意見だ。
「食べていいの?」
「どうぞ」
正樹は椅子を引いて悠を席に促した。そんな事をしてもらったのは初めてであったため戸惑ったが礼を言って座った。
正樹からもらった箸で、唐揚げに手を付けた。カリカリでジューシーな唐揚げはとても美味しかった。
「いつも弁当作っているの?」
「いや」正樹は首を振った。「今日はゆうちゃんと一緒に食べられそうだと一香から連絡もらったから」
自分のためだとはっきり言われるとときめいた。正樹はかっこいいと改めて感じた。
「なぁ、いつも昼どうしてんだ?」
「え」悠は食事の手を止めた。「周りにいる女の子たちが弁当を作ってきてくれるから」
その瞬間、悪寒がはしった。
「そうなんだ」正樹は笑顔で頷いているが、さっきまでの笑顔とは違った。チラリと目の前で食べている二人の顔を見た。河沼一香は引きつった笑顔をしていたが木山恵は気にせずにおにぎりを食べている。
「じゃ、これからは俺が作るから。それ以外食べないで」
優しい口調であったが、有無を言わさない雰囲気があった。
「そうだ、朝も夜も作りに行くよ。ゆうちゃんは俺のご飯だけを食べていて。ちゃんと健康には気を付けるからさ」
「……うん」正樹に迫力に頷いてしまった。「でも、大変でしょ」
「大丈夫だよ」
「そっか」
河沼一香が何かを言おうとしたが、笑みを浮かべた正樹と目が合うと口を閉じた。
木山恵は『いいんじゃない』とでもいうように河沼一香の手を優しく撫ぜていた。
何かあると思っていたがテーブルの下で正樹に手を繋がれるとどうでも良くなった。
食堂は混んでいたため、席を探すことに苦戦したが、木山恵が見つけてくれた。
この席を探す行為が悠にとっては新鮮であった。普段は女の子の誰かが席をとって弁当を用意してくれる。
「あっ」悠が大きな声を上げた。
「どうした?」正樹は首を傾げた。
先に座っていた木山恵と可沼一香の二人は立っている悠を見上げた。
「いや、大丈夫。ご飯買ってくるね」
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一回学校を出てコンビニへ行こうかと思った瞬間、手首を捕まれた。
「え?」
「俺、弁当多めに作ってるから食えよ」
悠はゆっくりと振り向いた。
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ファンシーな弁当に心が躍った。
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「どうぞ」
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正樹からもらった箸で、唐揚げに手を付けた。カリカリでジューシーな唐揚げはとても美味しかった。
「いつも弁当作っているの?」
「いや」正樹は首を振った。「今日はゆうちゃんと一緒に食べられそうだと一香から連絡もらったから」
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「なぁ、いつも昼どうしてんだ?」
「え」悠は食事の手を止めた。「周りにいる女の子たちが弁当を作ってきてくれるから」
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