51 / 146
アーサーの驚き
しおりを挟む「先ほど王妃が息を引き取った」
その報告を僕にしたのはオリバーだった。自室にもどるなりいつもと変わらない口調で話すから僕の方が戸惑った。姉の死に対して気落ちした様子も見せない事に驚いたが良かったと思う。
これからくる嵐に備えなくてはならない。
「それで今後の予想を聞かせて欲しい」
オリバーは自室のテーブルに着くと眉間にシワを寄せて僕を見る。テーブルの上で組まれた手には力が入っているようで血管が浮き出ていた。僕もオリバーと対面になるように席に着いた。
姉が亡くなったというのにその冷静さはすごいね。
1日の半分近くフィリップと関わっている彼にとって、今は悲しんでいる暇がない事をよく理解していた。
「フィリップは恐らくオリバーの予想通りだと思うよ。あとルカも問題かな」
流石に、この状況で笑うわけにも行かず、口を結び目をあける。余り目がよくないため目をあけると視界がぼやける。
「そうか」
真っ黒な瞳でまっすぐに僕を見て、オリバーは頷く。組んだ手に入った力は緩めずゆっくり深呼吸をした。まるで覚悟を決めているようだ。
僕はオリバーの覚悟ならどんな事でも支援するよ。
「来た」
オリバーの言葉に扉の方向くと数秒後に扉を叩く音が聞こえオリバーが返事をした。
「相変わらず凄いね。僕は足音なんて聞こえないよ」
「普通だ。我が家は父以外できる」
騎士でもできないって。
ホワイト兄弟の身体能力には驚かされる事が多い。
「失礼致します」
衛兵が扉をあけて入ってきたのは宰相のエマであった。オリバーのもう一人の姉である。
エマはドレスの裾を持ち丁寧お辞儀をした。
「姉さん、ありがとう」
オリバーは立ち上がり丁寧に礼を言うと彼女を席までエスコートした。訳がわからなかったが僕も慌てて立ち上がり挨拶をする。驚いていたとはいえ随分無粋な挨拶になってしまった。エマもオリバーもそれに対して特に気にする様子なく着席する。
「驚かせてすまない。一刻も早く行動したかった」
オリバーが申し訳なさそうに眉を下げる。その横でエマは姿勢
正してオリバーと同じ黒い瞳で僕を見つめいる。オリバーと同じ覚悟をした顔をしている。どうやら事はもう決まっているらしい。
「相談じゃなくて、協力要請?報告?」
まぁ、何でも君たち兄弟には協力するよ。
「二人で決めたわけではない。同じ考えであった」
僕に相談しなかった訳ではないと言いたいのだろう。そんな事は知っている。君達兄弟は事前打ち合わせもなくお互いの都合のよいようによく動いている。
オリバーの考えがわかるエマをいつも羨ましく思っていたよ。
エマはチラリとオリバーの顔を見て頷くとまた僕を見て一呼吸置くと口を開いた。
「国王陛下の事は任せて。私が姉を継ぐわ」
僕は言葉が出なかった。なるべく、感情を表に出さないように心がけいるがこの時は表情に出ていたと思う。オリバーが珍しくニヤリと笑っていた。
「オリバーもそんな表情ができるのね」
エマが楽しそう口に手を当て笑っている。上品で優雅な笑顔である。僕は珍しい表情よりもエマが王妃になると宣言したことの方が気になった。
「エマ、君は…」
僕たち王族を好いてはいなかったではないか。我が国にきたのだって姉のためである。我が国の王妃は、王妃という職業でもあり仕事も責任も多くまかされる。しかし、ただの職業の宰相とは違う。王妃は国王の妻という意味もある。
それを確認しようとしたが人差し指を僕前出します。言わなくても分かってあるという意味であろう。
「フィリップ国王陛下って素敵な顔なのよね。」
似たような台詞を聞いたことがあった。
ルナ・ホワイト・アレクサンダー王妃である。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
201
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる