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ルイの気持ち

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 そろそろ太陽が沈み始める頃、ルカの自室へ叔父とアーサー共に向かった。オリビア侯爵令嬢の誕生パーティーの話をするためである。
 ルカさん部屋にきてみてればサラが飛び出していた。少し前までは日常的な光景だったがルカが女性の記憶を取り戻したのを境にそれがなくなった。

 サラに何かキツイ事、言ったのかな?

 首を振り思い直した。ルカのアレは平民差別ではなくただの人見知りであることが半年前わかった。ルカは母が中心になり育児を行うといった特徴な育てられ方をしている。

 だから、他者へ警戒心が強い。
 
 半年前、ルカが突然変わってしまったようだった。しかし、今思い返せば最近は以前のルカぽさを感じることも多い。図書室に閉じこもるとき衛兵がいないのがいい証拠である。ルカはそばに心許さない人間がいるのを嫌っていたから衛兵から逃げて図書室にいたのだろう。
 
 記憶が戻った当日は騎士館に出向いたり、宰相の所へ行ったという話を聞いた時は驚愕した。
 時間がたち二つの記憶がルカの中で入り混じりはじめているのかも知れない。
 
 ルカの部屋に入るとテーブルに座り、オリビア侯爵令嬢の話をしようとした。しかし、ルカがサラの事を僕が思っているより気にしており話はサラに方に流れた。

 ルカが暗い顔をしている。心なしか身体が震えているように見える。アーサーが“サラは以前はよくルカの部屋を飛び足した”と言った。そこから母を思い出したのだろう。サラがルカの専属侍女となったのは母が亡くなってからだから余計に母の死とその話は結びつく。
 
 あの時は僕はほとんどルカと関わることができなかった。ルカにはっきりと“来ないで”と言われたのもあるがあの時の誰しものが彼をまるで腫れ物に触るような扱いをしていた。つまり誰もルカの侍女を敬遠してサラに押し付けたである。
 本来、専属侍女は生まれてすぐに決まる。この年になっての決定は前代未聞であった。

 押し付けたと言っても誰が侍女の最終決定をしたんだろう。

 当時、どんな思いがありサラを追い出しているのか僕は知らなかった。噂通り平民嫌いなのかと思っていた。

 しかし、ここ半年ルカと関わるようになりそれは違うと理解したはずであった。ルカの優しさにも触れていたのだからルカがサラを気にしていないわけがない。
 
 サラの話をせずにオリビア侯爵令嬢の話をしようとしたのは強引だったと反省した。
 
 クラーク侯爵が貧困地域に通っていると言う噂の真相を知りたいと思い事を急いでしまったと後悔した。

 「ルカ、サラと何があったか教えて欲しい」

 アーサーは“いつものこと”として片付けようとしているがそれは問題がある。ルカにはこれからオリビア侯爵令嬢にあってもらうのだ。ここは丁寧に対応しないとそれが難しくなってしまう。

 事情を知らない二人はオリビア侯爵令嬢の誕生パーティーに参加しなくていいと思っているのかもしれない。

 ルカは僕の方向に顔向けた。まだ、その顔は青く今にも泣きそうである。

 「あの…時は、サラに話かけようとした」

 声に自信がないが僕に対応敬語でないことに安心した。
 やっと僕を叩く事ができるぐらい心を開いてくれたのにそれが以前のように閉ざしてしまったのかと心穏やかではいられなかった。

 「サラは食事の準備をしてくれていて、その時私から…声をかけた」

 ゆっくりと小さな声で僕だけを見て話してくれた。叔父やアーサーがいるのに二人に視線を送ることはない。今のルカには気持ちに余裕がなく、もしかしたら二人の存在を忘れているのかもしれない。
 大体、二人に話すなら敬語を使うはずである。つまり、今の言葉は全て僕あてのものであるということだ。

 それがとても嬉しかった。

 叔父もアーサーもそれに気づいているようだか特に何も言わずに頷きながらルカの話を聞いている。

 ルカの特別は叔父やアーサーなく自分だと思うと高揚した。アーサーへのモヤモヤした気持ちなどなくなっていた。

 「すると、サラが私のそばにいたんだ。そしたら、何も伝えられなくなり身体が震えて自分自身が制御できなくなった。そうして良いかわからず、サラに退室を願うことが精一杯だっただよ」 

 そこまでで言葉を止めると視線が降りてしまった。唇をかみ、手が震えている。その時の事を思い出しているのだろう。

 「つまり、サラと話そうとすると極度の緊張におそわれるってことだよね」

 僕がルカの言葉をまとめて確認すると「サラだけじゃないけど」とルカはボソリつぶやいた。ゆっくりと叔父とアーサーが僕を見て頷いている。その目は“オリビア侯爵令嬢と会うのは無理ではないか”と言っているようであった。
 しかし、コレを克服しないとルカは前に進むことができないと思う。

 しかし、無理はできない…。
 
 
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