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裁判

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 裁判は全て記録されている。そこには国王を筆頭に王妃、摂政、宰相、騎士団で行われていた事が着れている。騎士団は護衛が仕事であるため発言権はない。裁判を進行するのは宰相である。そこに役職もない王子ごときが参加するなど異例すぎる。私は断ろうと口を開けた瞬間、叔父が私に手の平を見せて止めた。

「裁判の規定は国王が判決を下すのみだ」

 叔父の言葉は正しい。法律に関する書籍は全て読み頭に入っている。我が国の裁判の規定は“国王が判決を下す”のみしかない。つまり誰が参加しても構わないし尋問や証人の有無も決まっていないのだ。この国の法律はあまり詳細ではない。先代のやり方をそのまま引き継ぐ。後は国王判断になるのだ。今ここで国王が私に裁判参加を強要すれば断れない。

 国王がじっと私を見ている。その瞳は蛇の様に絡みついてくるようで逃げられない。まるで蛙の気分だ。

「この件はル……兄上も協力して下さいました」

「ならば、ルイの参加も許可する」

 国王の重い声が響く。ここでルイの名前を出せば必ず許可を出すと思った。ルイの許可なく名前を出して申し訳ないようと思うが私にとって彼の存在は大きい。それに私が言えば喜んで参加してくれる気がする。 
 この件は依頼しているような口ぶりだが実際は強制だろう。国王が命令すれば否定はできない。
 そもそも、私を裁判に参加させる目的は分からない。私は調べていただけで不倫の真相をしらない。

 私は裁判参加の承諾をした。ルイも一緒ならば心強い。
 国王の話は聞いたので、本来の目的であるオリビア嬢の従者ルーク訪問について報告をしようとした。今更、彼に聞くことはないがオリビア嬢は、城に呼んでしまったから婚約しなくてはならないだろう。それは、結果的には良かったと思う。中身がおじさんだから私に男を求めないと予想される。

「良かった」

 突然の砕けた言い方に誰の言葉か分からずに戸惑った。その声は紛れもなく国王の声であった。私が驚いていると「兄上」と言いながら叔父が怖い顔して国王を見ている。私は何も言えずに目をキョロキョロと動かした。

「もう国王は終わりだよ」

 へらへらと笑う国王には今まであった威厳が全くない。叔父は険しい顔をしているが何も言わない。私は目をシロクロさせながら国王と叔父を交互に見つめた。

「驚いているね。やっと、ルカと親子になれるのだよ」

 全く話に追いついていけない。国王が意味の分からない事を言って大喜びしている。これから自分の妻の不倫相手を裁判にかけるにこの能天気ぶりは理解する事ができない。
 私は無意識に国王を睨んでいたのだろう。叔父に「説明するからそんな目をしないでほしい」と頼まれた。そんな叔父の顔も十分怖い。

「我が国には国王に対する規則がたくさんある。その中に一つに“子どもとは王としてしか接してはいけない”というのがある。それは、我が国の王が持つ権限は大きいためだ」
 初めて知った規則だ。この世界にきてから“実は”というのが多い。私は漫画をもっと楽に読んでいた気がする。

 国王が口を開こうとすると叔父が国王に手のひらを見せた。あまり表情は変わらないのだが面倒くさいという雰囲気が叔父から感じられた。

 国王の規則について更に詳しく説明を求めると叔父は頷いた。 


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