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第2話 強制連行
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目を覚ますと見慣れた天井があった。
覚醒しない頭で、あたりを見回すと見慣れた自分の自室であった。ミヅキはベッドから起こすと部屋から出ていく母をぼーっと見ていた。
「夢……?」
夢にしては鮮明に内容を覚えており不思議な感覚であった。
扉の所にある大きな荷物が視界に入るため息がでた。
それはこれから魔法学園に行くための荷物だ。
学校なんてめんどうくさい所には行きたくなかった。
ベッドに座ったまま動かないでいると、扉を叩く音が聞こえ部屋の主の返事を待たずに開いた。
「おはよう。いい天気だな」
元気よく部屋に入ってきたのは父だ。元気だけがとりえで声もでかい。
「何を座っているんだ。早く準備しなさい」
「……うん」
「なんだ、元気がないな。嫌なのか」
「うん」
はっきり答えると父は困った顔をした。彼はため息をついて乱暴にベッドの横の椅子に座った。椅子が悲鳴をあげたが気にせずにミヅキの目をじっと見てきた。
ため息またついて、体を大きく揺らした。そのたびに椅子が悲鳴をあげている。
「なんだ? 昨日行くと自ら言ったんじゃないか」そう言って、立ち上がる椅子が音を立てて倒れたが、彼は気にせず窓を開けた。「あのな。お前は選ばれたんだよ。平民が魔法学校に通えるなんて名誉なことなんだ」
窓の外からは人の声が聞こえた。嫌な予感がして、外を見ると村の人が大勢いて弾幕を掲げていた。
ベッドからも見える自分を応援する弾幕に思わず顔隠した。
父は嬉しそうに外の様子を見た。
「嬉しいか」
「そんな訳がない」
恥ずかしくて、恥ずかしくてベッドの中に隠れたかった。
「なんでだ」外の人に手を振りながら父は窓を閉めた。「魔法学園に行ける平民なんて名誉だ。村の人は応援しているぞ」
「いらない。私の意志関係なしに入学証が送られてきて“入れ”だよ?」
「それは、お前が先日の魔力検査で優秀な数値を出したからじゃないか。学費も学園寮の生活費も国もちだぞ」
素晴らしいことだと語る父に嫌気がさした。
「だから? お金さえあれば国民を思い通りにできると考えている国が最悪だよ」
「……」
父が悲しそうな顔したのでいたたまれなくなった。
「ごめん。お父さんのせいじゃないよね。これ受けないと村が国から咎められるんだよね」
「どうして、それを」
父が動揺した。
「……行けば、莫大な支援が村にくる。しかし卒業後、国の機関に5年も勤めなくてはならないんでしょ。しゃないと支援金を戻さないといけないだよね? 村が」
「……だから、承諾したのか?」
「うん。村の人がわざわざ言いにきたよ」
父は肩を落とし床をみた。
「父さんの説明に理解を示したと思っていた」
それはないと言いたかったが飲み込んだ。そして、これでもないくらい深刻な顔を作った。父も真面目な顔をしているので重い空気になった。
「強制なんだろうとは思っていたよ。けど、村を巻き込むなんてえげつないね」
何も言わない父を横目に荷物を持つと階段を下りた。すると、そこには母がいた。彼女はミヅキを見るなり駆け寄って来て抱きしめた。
「どうしても行きたくないなら“相談”のるよ?」
覚悟を決めた顔で“相談”と言うに母の愛を感じた。もう母と会えないかと思うと心が痛かったが心配させまいと笑顔を作った。
「そんなことしたら、村八分どころじゃすまないでしょ」
涙を浮かべる母を抱きしめ返した。母を抱きしめるのは幼少以来だ。自分より小さくなった母だが強い愛を感じて心が熱くなった。
「村、出てもいいよ」
「指名手配になるんだよ? 国外逃亡する気?」
鼻で笑うと母は「それもいいね」と冗談ぽく言ったが笑っていない目をみるとゾクリとした。
「いや、行くよ。今までありがとう」
そう言って玄関まで来ると外からの声が聞こえなかった。自室にいた時は騒がしかったのに今は不気味なほど静かだ。
そっと、扉を開けて顔出すとさきほど同様、村人が大勢いた。しかし、誰も言葉を発していない。家を出るとすぐにその理由がわかった。
家の目の前に大きな球体が止まっていた。地面から、数センチ浮いている。
なんじゃコリャと大声を出しそうになったが必死にこらえた。それでなくても村の人が注目しているので、ソレを避けて進もうとした。その時、球体からぬっと手が出てきてミヅキの手を掴んだ。
「……ひぃ」恐怖で悲鳴にならない変な声が出た。
思考回路が働く前に、球体に引き込まれた。
球体の中に勢いよく引き込まれ入った途端、手を離されたので尻もちをついた。衝撃を食らったおしりを抑えながら顔を上げると自分よりかなり年下に見える少年が立っていた。
情報量が多すぎて言葉が全くでなかった。
「フン。間抜けな面だ」
少年は目を細めるとミヅキを見下した。
意味が分からなくて目をパチクリさせた。
「あの……」
「うん?」少年は大きな目を更に大きくしてミヅキを見た。「魔力はあるようなだな」
何度か頷いたあと、小さく息を吐いた。
「平民で魔法学園に入れるのだから当たり前か」
「あ、あの……どなたでしょうか?」
遠慮がち言うと、少年を見ると彼に睨まれた。
「あ?」少年は、顎に手を当てて考えた。「俺はユウキ・ショータ。魔法学園の2年だ」
自分よりも年上なことに驚いた。外見は私よりは5歳以上は下に見える。
ポカンとしているとユウキはニヤリと笑った。
「なんだ? 俺の年齢を気にしているのか? 10歳だ」
「え?」
年下だったこと以上に、魔法学園入学年齢に達していないのに制服を着ていることに驚いた。
「なんだ? 入学年齢の話なら俺は優秀だから飛び級だ」とうんざりした顔をした。
「……」
「俺は有名なんだが、平民は知らないか」
大きくため息をした。
「私は……」
「いらない。君のことは知っている」
自己紹介をしようとしたら、ハエでも追い払うように手を動かした。彼の平民を軽んじる態度に腹が立った。
「本来は平民がくる学校ではないのが、君は魔力が非常に高いから入学を許された」
「要は監視ですよね」
きっぱりというとユウキは目を丸くした。
「高い魔力を持つ者が平民にいると反乱を起こされたとき面倒だから監視、管理したいですよね」
「ふーん」
ユウキはニヤリと笑って、椅子に座ると手を上げた。すると、乗っていた球体がガタリと動き始めた。
「俺に意見するとは面白いな」
「お貴族様に意見したから、入学権利剥奪ですか?」
嬉しそうに笑うミヅキにユウキは目を丸くした。
「なんだ? 入学したくないのか?」
「はい」
はっきりと答えた。
誰もが学園に入りたがっているという考え方が気に入らなかった。
できるならば今すぐに村に引き返したかった。村での生活に満足していたし幸せを感じていた。
この国の押しつけがましい考え方は好きにならないが、国の運営には不満はなかった。
「あははは」ユウキは大笑いした。すぐに真面目な顔になりミヅキをみた。
「さっき、君が言った理由で入学拒否はできない」
「そうですか」
拒否できないことは知っていたためここでごねるつもりはなかった。ただ、この厚かましいガキに物申したかった。
「それにしてもいつまで床に座っているつもりだ。椅子に座れ」
そう言われて椅子みた。フワフワなクッションの豪華な椅子があった。
立ち上がるのが面倒くさかった。
床のカーペットもふわふわであり気持ちよかったので「床でいい」と答えた。
「私は平民なので、椅子なんてお恐れ多いです」と嫌味をいうとユウキはフンと鼻をならした。
しばらくして、乗っていた球体が止まった。
「着いたようだな」
「コレ、乗り物だったですね」
「俺が開発した魔道具だ」聞かれたのが嬉しかったようでユウキはニヤリと笑った。「国に一つしかないんだ」
「そうですか」
魔道具と聞いて、幼い頃あった少年のことを思い出した。5,6年前くらいだった。色々な魔道具を丁寧に説明して見せてくれた。魔道具で姿を撮られた時は驚いた。
少年と自分が映った画像をみた時は感動した。それがほしかったがその時は、そんなわがまま言えなかった。
その時の少年と同じくらいの年齢であるユウキは彼に比べて、傲慢だ。貴族だからだろうなと思った。
鼻息を荒くして偉そうにしているユウキを見てため息をついた。
すごい魔道具なのだろうが、どうでも良かった。
そもそも歩いて行くつもりであったから入学式1週間前に出たというのに1日もかからずついてしまった。
入学式まで暇だ。
「興味ないのか? この俺が作ったものだぞ」
「あー、すごいですね」
構ってほしそうなユウキがめんどうくさくて、適当に手を叩いて、適当に褒めた。
「で、どうやって降りるのですか?」
「……」
不満そうな顔をしながらユウキは何もない壁を指さした。
「そうですか」そう言って、壁に触れるとすっと手がすり抜けた。
ミヅキは頷いて、球体からでた。後ろで、何やらユウキの文句を言う声が聞こえたが無視した。
俺様男とこれ以上会話したくなかった。
「おい、待て」
後から俺様男が降りてきた。
並んだ、彼は自分より頭1つ以上低いことに驚いた。そんな彼をマジマジと見ながら見下ろしていると睨まれた。
「言っておくけど、俺の身長は年齢相応だから」
そう言われて彼が10歳であることを思い出した。
村にいた10歳の子どもと言えば畑を手伝っていた。しかし、いたずらして怒られることが多かった。それでも、親に抱きしめられている姿もあった。
この魔法学園は全寮制だ。
2年ということは9歳の時から親元を離れて生活しているのだろう。
同情した。
怒って先に行ってしまったが、10歳の子どもだと思うと怒りも自然と収まった。
ミヅキは目の前の大きな門を見上げた。門の横にある守衛室でユウキが話していた。
門の奥には城みたいに大きな建物があった。
「おい」
気づくと、目の前にユウキが眉を寄せ居ていた。
「なんで、ついてこない」
「へ? 言われてないからですよ」
「案内役の俺について来るのは普通だろ」
彼が案内役であることを初めて知った。
やっていることは誘拐犯と変わらない。
魔法学園の制服を着ているから黙ってついてきたが、着ていなかったらあの球体で暴れていた。
「早く来い」
何も言わないミヅキにイライラしたらしく、手を掴み引っ張った。ミヅキにはそれが、幼い子どもが大人を遊びに誘っているように思えた。
よく見れば顔も可愛らしい。
わがままな弟を持つ姉の気分になった。
わがままな弟につれてこられたのは、『生徒会室』と書かれていた部屋の前だ。
「これから、アキヒト様や他の生徒会メンバーに挨拶する。全員貴族だ。失礼な態度とるなよ」
そう言いながらユウキは自分の制服を整え、深呼吸をした。
「生徒は全員、挨拶するのですか?」
「馬鹿か、君は。これから生徒会メンバーになるからに決まっているだろ。特待で入学するのだから当たり前だ」
そんな、当たり前は知らない。
入学証には、入学許可と入学時期しか書いてなかった。だから、それに間に合うように家をでようとしたら、この少年が現れた。
村人から色々な情報を聞いたが、噂も含まれているためどれが本当だか分からない。
呆然と扉を見ていると、ユウキは大きなため息をついた。
「まさか、生徒会メンバーを知らないとか言うか?」
「言います」
はっきりと返事をしてうなずいた。
平民の自分は貴族の名前なんて知らない。唯一知っているのは王様の名前はくらいだ。
ましてや、その子どもなんて知るわけがないし、知ろうとも思わない。
「はぁ」ユウキは頭を大きく振って額を抑えた。「君は魔力が高いだけで、無知なんだな。おろかな」
10歳のガキは世間を知らないらしい。
「貴方は平民の生活水準をしらない、無知なんですね」
面倒くさいからはっきり言ってやった。
子どもだからと思ったが、平気で“無知”や“愚か”と言うのは少し躾が必要らしい。
「魔道具を作っていますが、それは誰がなんのために使うでのすか? お貴族様の娯楽ですか?」
「なにを言っている。俺の魔道具が世界を救い、豊かにするんだ」
売り言葉の買い言葉。
ユウキは感情をむき出しにして、反論した。
「その、“世界”とはお貴族様しかいないようですね」
「そんな訳ないだろう」
「では、なぜ平民の私が貴族の名前を知らないかご存じですか?」
「知るか。ただの無知だろ。勉強しなからだ。怠けている」
もう笑うしかなかった。
頭が良くても、魔力が強くても所詮はガキだ。
「私たち貴族とは財源が違う。働かない貴族の子は勉強する時間がある。しかし、平民は物心ついたころから働いているんだよ」
突然、後ろから穏やかな声がして驚いた。
ユウキは、声の主の顔を見るとすぐに頭を下げて挨拶をした。それをポカンと見ていると、慌てたユウキに手を引かれ無理やり頭を下げさせられた。
覚醒しない頭で、あたりを見回すと見慣れた自分の自室であった。ミヅキはベッドから起こすと部屋から出ていく母をぼーっと見ていた。
「夢……?」
夢にしては鮮明に内容を覚えており不思議な感覚であった。
扉の所にある大きな荷物が視界に入るため息がでた。
それはこれから魔法学園に行くための荷物だ。
学校なんてめんどうくさい所には行きたくなかった。
ベッドに座ったまま動かないでいると、扉を叩く音が聞こえ部屋の主の返事を待たずに開いた。
「おはよう。いい天気だな」
元気よく部屋に入ってきたのは父だ。元気だけがとりえで声もでかい。
「何を座っているんだ。早く準備しなさい」
「……うん」
「なんだ、元気がないな。嫌なのか」
「うん」
はっきり答えると父は困った顔をした。彼はため息をついて乱暴にベッドの横の椅子に座った。椅子が悲鳴をあげたが気にせずにミヅキの目をじっと見てきた。
ため息またついて、体を大きく揺らした。そのたびに椅子が悲鳴をあげている。
「なんだ? 昨日行くと自ら言ったんじゃないか」そう言って、立ち上がる椅子が音を立てて倒れたが、彼は気にせず窓を開けた。「あのな。お前は選ばれたんだよ。平民が魔法学校に通えるなんて名誉なことなんだ」
窓の外からは人の声が聞こえた。嫌な予感がして、外を見ると村の人が大勢いて弾幕を掲げていた。
ベッドからも見える自分を応援する弾幕に思わず顔隠した。
父は嬉しそうに外の様子を見た。
「嬉しいか」
「そんな訳がない」
恥ずかしくて、恥ずかしくてベッドの中に隠れたかった。
「なんでだ」外の人に手を振りながら父は窓を閉めた。「魔法学園に行ける平民なんて名誉だ。村の人は応援しているぞ」
「いらない。私の意志関係なしに入学証が送られてきて“入れ”だよ?」
「それは、お前が先日の魔力検査で優秀な数値を出したからじゃないか。学費も学園寮の生活費も国もちだぞ」
素晴らしいことだと語る父に嫌気がさした。
「だから? お金さえあれば国民を思い通りにできると考えている国が最悪だよ」
「……」
父が悲しそうな顔したのでいたたまれなくなった。
「ごめん。お父さんのせいじゃないよね。これ受けないと村が国から咎められるんだよね」
「どうして、それを」
父が動揺した。
「……行けば、莫大な支援が村にくる。しかし卒業後、国の機関に5年も勤めなくてはならないんでしょ。しゃないと支援金を戻さないといけないだよね? 村が」
「……だから、承諾したのか?」
「うん。村の人がわざわざ言いにきたよ」
父は肩を落とし床をみた。
「父さんの説明に理解を示したと思っていた」
それはないと言いたかったが飲み込んだ。そして、これでもないくらい深刻な顔を作った。父も真面目な顔をしているので重い空気になった。
「強制なんだろうとは思っていたよ。けど、村を巻き込むなんてえげつないね」
何も言わない父を横目に荷物を持つと階段を下りた。すると、そこには母がいた。彼女はミヅキを見るなり駆け寄って来て抱きしめた。
「どうしても行きたくないなら“相談”のるよ?」
覚悟を決めた顔で“相談”と言うに母の愛を感じた。もう母と会えないかと思うと心が痛かったが心配させまいと笑顔を作った。
「そんなことしたら、村八分どころじゃすまないでしょ」
涙を浮かべる母を抱きしめ返した。母を抱きしめるのは幼少以来だ。自分より小さくなった母だが強い愛を感じて心が熱くなった。
「村、出てもいいよ」
「指名手配になるんだよ? 国外逃亡する気?」
鼻で笑うと母は「それもいいね」と冗談ぽく言ったが笑っていない目をみるとゾクリとした。
「いや、行くよ。今までありがとう」
そう言って玄関まで来ると外からの声が聞こえなかった。自室にいた時は騒がしかったのに今は不気味なほど静かだ。
そっと、扉を開けて顔出すとさきほど同様、村人が大勢いた。しかし、誰も言葉を発していない。家を出るとすぐにその理由がわかった。
家の目の前に大きな球体が止まっていた。地面から、数センチ浮いている。
なんじゃコリャと大声を出しそうになったが必死にこらえた。それでなくても村の人が注目しているので、ソレを避けて進もうとした。その時、球体からぬっと手が出てきてミヅキの手を掴んだ。
「……ひぃ」恐怖で悲鳴にならない変な声が出た。
思考回路が働く前に、球体に引き込まれた。
球体の中に勢いよく引き込まれ入った途端、手を離されたので尻もちをついた。衝撃を食らったおしりを抑えながら顔を上げると自分よりかなり年下に見える少年が立っていた。
情報量が多すぎて言葉が全くでなかった。
「フン。間抜けな面だ」
少年は目を細めるとミヅキを見下した。
意味が分からなくて目をパチクリさせた。
「あの……」
「うん?」少年は大きな目を更に大きくしてミヅキを見た。「魔力はあるようなだな」
何度か頷いたあと、小さく息を吐いた。
「平民で魔法学園に入れるのだから当たり前か」
「あ、あの……どなたでしょうか?」
遠慮がち言うと、少年を見ると彼に睨まれた。
「あ?」少年は、顎に手を当てて考えた。「俺はユウキ・ショータ。魔法学園の2年だ」
自分よりも年上なことに驚いた。外見は私よりは5歳以上は下に見える。
ポカンとしているとユウキはニヤリと笑った。
「なんだ? 俺の年齢を気にしているのか? 10歳だ」
「え?」
年下だったこと以上に、魔法学園入学年齢に達していないのに制服を着ていることに驚いた。
「なんだ? 入学年齢の話なら俺は優秀だから飛び級だ」とうんざりした顔をした。
「……」
「俺は有名なんだが、平民は知らないか」
大きくため息をした。
「私は……」
「いらない。君のことは知っている」
自己紹介をしようとしたら、ハエでも追い払うように手を動かした。彼の平民を軽んじる態度に腹が立った。
「本来は平民がくる学校ではないのが、君は魔力が非常に高いから入学を許された」
「要は監視ですよね」
きっぱりというとユウキは目を丸くした。
「高い魔力を持つ者が平民にいると反乱を起こされたとき面倒だから監視、管理したいですよね」
「ふーん」
ユウキはニヤリと笑って、椅子に座ると手を上げた。すると、乗っていた球体がガタリと動き始めた。
「俺に意見するとは面白いな」
「お貴族様に意見したから、入学権利剥奪ですか?」
嬉しそうに笑うミヅキにユウキは目を丸くした。
「なんだ? 入学したくないのか?」
「はい」
はっきりと答えた。
誰もが学園に入りたがっているという考え方が気に入らなかった。
できるならば今すぐに村に引き返したかった。村での生活に満足していたし幸せを感じていた。
この国の押しつけがましい考え方は好きにならないが、国の運営には不満はなかった。
「あははは」ユウキは大笑いした。すぐに真面目な顔になりミヅキをみた。
「さっき、君が言った理由で入学拒否はできない」
「そうですか」
拒否できないことは知っていたためここでごねるつもりはなかった。ただ、この厚かましいガキに物申したかった。
「それにしてもいつまで床に座っているつもりだ。椅子に座れ」
そう言われて椅子みた。フワフワなクッションの豪華な椅子があった。
立ち上がるのが面倒くさかった。
床のカーペットもふわふわであり気持ちよかったので「床でいい」と答えた。
「私は平民なので、椅子なんてお恐れ多いです」と嫌味をいうとユウキはフンと鼻をならした。
しばらくして、乗っていた球体が止まった。
「着いたようだな」
「コレ、乗り物だったですね」
「俺が開発した魔道具だ」聞かれたのが嬉しかったようでユウキはニヤリと笑った。「国に一つしかないんだ」
「そうですか」
魔道具と聞いて、幼い頃あった少年のことを思い出した。5,6年前くらいだった。色々な魔道具を丁寧に説明して見せてくれた。魔道具で姿を撮られた時は驚いた。
少年と自分が映った画像をみた時は感動した。それがほしかったがその時は、そんなわがまま言えなかった。
その時の少年と同じくらいの年齢であるユウキは彼に比べて、傲慢だ。貴族だからだろうなと思った。
鼻息を荒くして偉そうにしているユウキを見てため息をついた。
すごい魔道具なのだろうが、どうでも良かった。
そもそも歩いて行くつもりであったから入学式1週間前に出たというのに1日もかからずついてしまった。
入学式まで暇だ。
「興味ないのか? この俺が作ったものだぞ」
「あー、すごいですね」
構ってほしそうなユウキがめんどうくさくて、適当に手を叩いて、適当に褒めた。
「で、どうやって降りるのですか?」
「……」
不満そうな顔をしながらユウキは何もない壁を指さした。
「そうですか」そう言って、壁に触れるとすっと手がすり抜けた。
ミヅキは頷いて、球体からでた。後ろで、何やらユウキの文句を言う声が聞こえたが無視した。
俺様男とこれ以上会話したくなかった。
「おい、待て」
後から俺様男が降りてきた。
並んだ、彼は自分より頭1つ以上低いことに驚いた。そんな彼をマジマジと見ながら見下ろしていると睨まれた。
「言っておくけど、俺の身長は年齢相応だから」
そう言われて彼が10歳であることを思い出した。
村にいた10歳の子どもと言えば畑を手伝っていた。しかし、いたずらして怒られることが多かった。それでも、親に抱きしめられている姿もあった。
この魔法学園は全寮制だ。
2年ということは9歳の時から親元を離れて生活しているのだろう。
同情した。
怒って先に行ってしまったが、10歳の子どもだと思うと怒りも自然と収まった。
ミヅキは目の前の大きな門を見上げた。門の横にある守衛室でユウキが話していた。
門の奥には城みたいに大きな建物があった。
「おい」
気づくと、目の前にユウキが眉を寄せ居ていた。
「なんで、ついてこない」
「へ? 言われてないからですよ」
「案内役の俺について来るのは普通だろ」
彼が案内役であることを初めて知った。
やっていることは誘拐犯と変わらない。
魔法学園の制服を着ているから黙ってついてきたが、着ていなかったらあの球体で暴れていた。
「早く来い」
何も言わないミヅキにイライラしたらしく、手を掴み引っ張った。ミヅキにはそれが、幼い子どもが大人を遊びに誘っているように思えた。
よく見れば顔も可愛らしい。
わがままな弟を持つ姉の気分になった。
わがままな弟につれてこられたのは、『生徒会室』と書かれていた部屋の前だ。
「これから、アキヒト様や他の生徒会メンバーに挨拶する。全員貴族だ。失礼な態度とるなよ」
そう言いながらユウキは自分の制服を整え、深呼吸をした。
「生徒は全員、挨拶するのですか?」
「馬鹿か、君は。これから生徒会メンバーになるからに決まっているだろ。特待で入学するのだから当たり前だ」
そんな、当たり前は知らない。
入学証には、入学許可と入学時期しか書いてなかった。だから、それに間に合うように家をでようとしたら、この少年が現れた。
村人から色々な情報を聞いたが、噂も含まれているためどれが本当だか分からない。
呆然と扉を見ていると、ユウキは大きなため息をついた。
「まさか、生徒会メンバーを知らないとか言うか?」
「言います」
はっきりと返事をしてうなずいた。
平民の自分は貴族の名前なんて知らない。唯一知っているのは王様の名前はくらいだ。
ましてや、その子どもなんて知るわけがないし、知ろうとも思わない。
「はぁ」ユウキは頭を大きく振って額を抑えた。「君は魔力が高いだけで、無知なんだな。おろかな」
10歳のガキは世間を知らないらしい。
「貴方は平民の生活水準をしらない、無知なんですね」
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子どもだからと思ったが、平気で“無知”や“愚か”と言うのは少し躾が必要らしい。
「魔道具を作っていますが、それは誰がなんのために使うでのすか? お貴族様の娯楽ですか?」
「なにを言っている。俺の魔道具が世界を救い、豊かにするんだ」
売り言葉の買い言葉。
ユウキは感情をむき出しにして、反論した。
「その、“世界”とはお貴族様しかいないようですね」
「そんな訳ないだろう」
「では、なぜ平民の私が貴族の名前を知らないかご存じですか?」
「知るか。ただの無知だろ。勉強しなからだ。怠けている」
もう笑うしかなかった。
頭が良くても、魔力が強くても所詮はガキだ。
「私たち貴族とは財源が違う。働かない貴族の子は勉強する時間がある。しかし、平民は物心ついたころから働いているんだよ」
突然、後ろから穏やかな声がして驚いた。
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P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
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※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
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