No Thank you~殿方なんていりません。悪役令嬢一択~

黒夜須(くろやす)

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第18話 王妃側妃

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夏休みが終わり、一番最初に授業でテストを受けた。夏前は全てのテストを諦めていたが、レイージョやユウキに教えてもらったため今回は空欄が少なかった。
“できた”という自信があった。しかし、こういう時は大抵周りも出来ているため平均以上にはならないのかもしれない。

「休み明けのテストは大変よね。ノーヒロさんどうでした?」

テストが終わり、教師が教室から去った瞬間、数名の女子生徒に囲まれた。
見慣れた顔ぶれだ。

「ユウキ様に教えてもらっているのよね」
「アキヒト様だけではなく、ユウキ様もなんて羨ましいかぎりよ」
「本当に」
「でも、アキヒト様にはレイージョ様がいらっしゃるわ」
「あー、ノーヒロさん大丈夫? アキヒト様と仲良くしてレイージョ様に何か言われない?」
「それ、私も心配していたわ」

あいからず、ミヅキが言葉を発する隙はなく話が進んでいく。

「ここだけでの話、アキヒト様はレイージョ様に興味ないのよ」一人の女子生徒が小声で言った。
「そうなのよ」何人かの女子生徒が同意した。

全体的に、距離が近くなりその場にいた全員が小声になった。

「ノーヒロさん平民だから王妃は無理だけど、王の母にはなれるわよ」
「うん」
「私たち応援しているから」

下心丸出しの彼女たちが気持ち悪く感じた。

「レイージョ様なんかより、ノーヒロさんの方が魅力的よ」
「そうね。レイージョ様は能面だしね」

レイージョの悪口が始まり、ミヅキには耐え難かった。

「レイ……ジョ様はお優しい方ですよ。寮では様々なことを教えてくださいますし」

はっきり言うと、女子生徒たちは同情したような顔をした。

「ノーヒロさん優しいのね」
「本当に、レイージョ様にあんなことされて……」

彼女たちが言っていることが理解できなかった。レイージョにされた“あんなこと”なんて思い当たらなかった。

「本当よね。レイージョ様は、ノーヒロさんがアキヒト様といたことに怒ったのよね。それで生徒会室に連れ込まれたのよね?」
「それは、私も聞いた。噂になっているわよ」
「それに、その制服もレイージョ様のお古を叩きつけられたそうじゃないの」

心当たりある話であったが、真実と異なった内容であった。
訂正しようとしたその瞬間、彼女たちの視線は扉の方を向いていた。

王太子が立っていた。

彼女たちの頭は王太子のことでいっぱいになりミヅキの話を聞く余裕はなさそうであった。
毎日のことでため息さえもでなかった。

彼女たちに促されて、王太子のいる扉に連れていかれた。

逃げられない。

「テストはどうだった? ユウキに教えてもらったんだよね?」
「はい」

笑顔の王太子に最低限の返事をした。最初はもっと会話するように言われたが、それに従わないと彼も諦めたようで何も言わなくなった。

小さく息を吐いて、生徒会室に向かって足を動かすと、王太子はそれに合わせて歩いた。

「そうだ、今度私の別荘に来ないかな?」
「王家のですか? 国のですか?」
「父の私財だよ」
「“国王様”の別荘にはお恐れ多く、伺うごとはできません」

所有者を強調すると、王太子は困った顔をした。

「では、どこに行きたい?」
「私は平民特待です。国にお金で買われてここにいますので、ご存じの通り学園の敷地外に出ることはできません」
「私が同行すれば問題はないよ」
「同じ学生にそんな権利はないと思いますが……」
「……そうだね」自分が普段“同じ学生”をアピールしている事を思い出したようで王太子は小さく息を吐いた。「王族の権利だね」

しばらく、歩くと生徒会室の前にきた。王太子が扉を開け中に入ると、それに続いて入った。レイージョには扉を掛けるが、王太子には一切そういった行動はしなかった。

王太子の言う“同じ学生同士”という言葉を掲げて彼に対してクラスメイトと同じ態度をとっている。

室内に入ると、生徒会のメンバーが全員そろっていた。王太子が入室したことでユウキだけが立ち上がって挨拶をした。カナイはチラリと彼とミヅキをみた。レイージョにいたっては視線を動かすことがなかった。

いつもと変わらない。
王太子はユウキに挨拶すると自席について仕事を始めた。ミヅキも同じように、レイージョの隣の席座った。
すると、レイージョと目があった。彼女は口角を少し上げると、すぐに手元に視線を移した。

「レイージョ、ミヅキを無視しない優しくしてね」
「無視などしておりませんわ。お互い挨拶を交わさなかっただけですわ」

レイージョは顔をあげると目を細めて王太子を見た。

「仲良くしてほしいだよね」王太子はため息をついた。「これから、王妃と側妃としてやっていくんだよ」
「そのことですが、ノーヒロさんが側妃になることを国王陛下は承認されておりませんわ」
「必要ないよ。私が国王になってからの話だから」
「ずいぶん、気の長い話ですわね。国王様に慣れればの話ですけど」

レイージョの冷たい声に、王太子はため息をついた。

「君は、それで私を脅すようなことを言うが婚約解消は君の一存ではできないよ」
「存じておりますわ。御三家貴族の当主様の承諾が必須ですわね」

レイージョは王太子を凍らせるのではないかと思うほど、冷ややかな瞳を向けた。その圧に王太子は言葉が出ないようで口を固く結んで手元の書類に視線を落とした。

まだ、外は残暑が厳しいのに生徒会室は極寒の地であった。

この光景になれているのか、ユウキもカナイも黙々と自分の仕事をこなしていた。ミヅキは彼らを見習う必要があると思った。そうでないと、心臓がいくつあっても足りない。
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