勇者パーティーから追放される雰囲気だったに、勇者が豹変。動揺するしかない俺。

黒夜須(くろやす)

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立ち止まり、大男を見上げると睨まれた。
何が彼の気に障ったのかわからない。
女性が暴走化した原因がバレたとは思えないが全て知っているとでも言いたげな大男の無言の圧が怖かった。
逃げようにも肩をつかまれた手が外れない。
「ちょっと、何してんの?」
気味の悪い腕輪をした女が近づいてきた。「ごめんね」
大きな胸を揺さぶり、カズマに手を伸ばしたので払いのけた。
女は目を大きくすると同時に、黒いローブが彼女の側に寄り添った。
二人を繋ぐ黒いモヤが濃くなり気持ち悪さが増した。
大男の方を見たが、彼の身体には光る闘争心が見当たらない。あるのは微かな黒いモヤだ。
薄気味悪い女の身体にも闘争心ないが、異常な量の黒いモヤで埋め尽くされていた。その量は魔物に匹敵する。黒いローブに至っては何も見えない。まるで、壁でもあるようだ。
異様な3人から逃げたくて仕方なかったのに、掴まれた肩が離れない。
闘争心が見えず、能力も使えない状況に焦った。
腕を切る覚悟をし、腰ある短剣を抜こうとした時「カズー」と大きなマの抜けた声がした。
その大きな声に驚き、大男が手を離したためカズマは逃げるようにイズクの方を行った。

酒場から出ると気持ちが落ち着いた。
「アイツらと何してた?」イズクがいつになく低い声で言った。「なぜあの状況になったの?」
「あ……」
隠すことでも無いので、女性が泣き出した所から大男に肩を掴まれるまでの話をした。
「うーん……。意識しないと近くの者に入るんだね」
「まぁ……」
イズクが顎を抑えて黙り込んだ。その数秒の沈黙が気まずかったが言葉を発する事が出来なかった。
数軒の民家や店を過ぎた所でイズクは顔を上げた。
「そうだ、勇者試験は1ヶ月~2ヶ月かかる。その後、仲間協力する内容の物をやるらしいからよろしく」
その言葉にすぐに返事が出来なかった。
「……」
イズクに闘争心をうつし、守ってもらうだけの存在が勇者と共に戦う仲間になりえるとは思えない。イズクに誘われたからついてきたが、考えが甘かった。
「それまで、泊まるとこだけど」
「いらない」
カズマは立ち上がると、一目散に走った。イズクの声が聞こえたが、振り向く事なく走り続けた。
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