【連載版】片想い中の幼馴染メイドへ告白して振られた御曹司 1000回目のタイムリープで告白される

そらどり

文字の大きさ
4 / 23
メイド長と御曹司 編

メイド長は項垂れる

しおりを挟む
自室の扉を閉め、メイド長は静かにうずくまった。



「今回は特に疲れましたね……」



メイド長―――いや、仕事は終わったのだからもう戻そう―――改めて私はそうこぼした。

ちらりと時計を見ると、時刻は十時五十分。もうすぐタイムリープが始まる。



そう、タイムリープが始まるのだ。





最初に違和感を覚えたのは服装だ。

全業務を終え、パジャマ姿でベッドに横たわっていたはずの私が目を覚ます。すると突然メイド服を身に着けた状態で立っていたのだった。

それでも不可解だったが、なによりも目の前に突然現れた人物に驚いてしまった。



なんで司が私の部屋にいるの――――――?



そう叫びたい気持ちを抑え、私はなんとか状況把握に努めていた。

すると理解する。ここが司の部屋であり、今の状況が一時間前の出来事そのものであることを。

これはタイムリープ。そういった内容の小説を嗜んでいたこともあり理解が捗った。



そしてもう一つ気付いたこと、それは司も同じ現象に陥っているらしいということだ。

私だけがタイムリープしているならば、司はこの後に私の名前を唐突に呼ぶはず。

でもそれが起こらなかった。司は明らかに困惑していて、不可解な現状を把握するのに手一杯に見えた。



その瞬間、これはマズイと思った。

このままではきっと司は私に再び告白をしてくる。

淡く尊い初恋のリベンジに燃え、一途で純粋な気持ちが再び私に向けられるのだ。

そして案の定、司は告白をしてきた。後悔せずため、私の目を見て真っ直ぐに気持ちを伝えてきた。

こちらの気も知らずによくもまあ純粋に告白するのだから、本当に勘弁してほしい。



「…………断るこっちの身にもなってよ」



司は獅童財閥の御曹司だ。小さい頃はそんな世間体など特に気にしていなかったが、メイドとして給仕していると周りからとやかく言われるのだ。

やれメイド風情が司様と馴れ馴れしくするなとか、やれ使用人がこの私と司様のお見合いの邪魔をするなとか色々。

月日を重ねてだんだんと仕事に慣れてくれば、世間体というものを否が応でも意識せざるを得なかった。

私は末端の見習いメイドであり、司は日本有数財閥の御曹司。これが世間の常識だから。

その時、今までの私がどんなに愚かな行動だったかを身をもって知った。

もう司と話してはいけない、立場も身分も格も違う私が司と馴れ馴れしくしてはいけないのだと。



それからの私は彼と距離を取るようになった。

自らを殺し、心を殺し、いつからか私は冷徹なメイド長だと揶揄されるようになった。

それでも私は貫く。なにがあっても本音を晒すことだけはあってはならない。

鉄の仮面を纏い、メイドとしての立場を演じる。大勢の観客が固唾を飲んで見守るこの演目を私個人の感情でぶち壊してはいけない。

この気持ちを知ってしまった私への断罪なのだと言い聞かせて、私は今日も主役を引き立たせるのだ。



「私も好き……大好きだよ……司」



顔を埋め、弱みを見せる。もう仕事は終わったのだから、今だけは許してほしい。

明日からまた頑張るから、いつものメイド長に戻るから、この数分間だけは許してほしい。

止め処なく溢れる涙で袖を濡らす。

たくさんの想いを吐き出して、涙を枯らしてもまた溢れ出して、そんな繰り返し。

苦しみと喜びは紙一重。その狭間で明日も明後日も私は司様に仕え続けるメイドなのだと繰り返して。





―――そうだ、そのはずだったんだ。





目が覚めたら目の前に司がいて、また告白される。

振ったと思えば一時間後に再び告白される。

告白、告白、告白、告白、告白―――――――――――――――――――――



「な、なんなのこれ……!?」



混乱していると再び睡魔が襲ってきて、目が覚めたら再び司が告白してくる。

再び断っても、また同じように睡魔が襲ってきて、そして目が覚めたら再び司が告白してくる。

いつまでも告白され続ける世界にもう頭がどうかしそうだ。いや、もうどうかしている。

狂気じみた現実に頭がついていけない。



「いつになったら終わるの……!?」



もうこれで998回目のタイムリープ、ざっと計算して一か月半もの間永遠に告白され続けている。

真っ直ぐな眼差しで私を求める彼。その想いを受け続ける私。

隠してきた気持ちがもう抑えられない水準にまで来ていた。

こんなの心臓がもたない―――



「いや駄目、ここで折れたら今までの努力が水の泡に……」



そうだ、絶対に本心だけは晒してはいけない。

司には世間体もあるし御曹司の玉の輿を狙う多くの結婚候補者がいるのだから、まだ高校生である今のうちに初恋を断ち切ってもらわないといけないんだ。



私が折れなければ、きっと大丈夫。そう思っていた。





でも、駄目だった。

弱みを見せて懇願する司の姿を見て、私の中でなにか枷が外れてしまった。

司の気持ちを踏み躙る以上、初めからこうなることは分かっていたはずなのに。

私が断り続けているせいで司が傷ついてしまったのだと自覚すると、私は自分を抑えられなくなってしまった。

このタイムリープの中で、いや司を避け始めてから今に至る十年間で初めて、私は本音を晒したのだった。



一度溢れた想いに蓋をすることはできない。

好きという気持ちが思考を支配し、冷静な判断が出来なくなってしまう。

十年分の想いを全て余すことなく伝えたい、心がもうそちらに傾いていた。



「もう無理……好きって言いたいよ……」





次で1000回目のタイムリープ。司の初恋を踏み躙ろうとしたかつての私は、もういない。

面倒なもの全てを忘れ、ただ私の気持ちを伝えたいと、そう願っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

処理中です...