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澄花と司 編
司は危機を迎える
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「澄花、お前はここに残れ」
「え?」
父さんの一言を受け、他の使用人らと共にその場を後にしようとしていた澄花は驚きの声を出す。
獅童家の食卓はいつも家族三人で囲むのが常であり、食事の給仕を終えた使用人たちは足早に退席するのが規則となっている。
が、今日は例外的にもう一人加わることになるらしい。
「な、なんでしょうか?」
俺の座っている席の隣で佇む澄花はそう尋ねると、緊張した面持ちで父さんの言葉を待っていた。
尊大な装飾品が並ぶ室内で隣り合う俺と澄花、そしてテーブルの対極に腰かける父さんと母さん。
まるで三者面談のような重圧感がひしひしと押し迫ってくる。
「父さん、澄花は給仕で忙しいんだから時間がある時にゆっくり聞けばいいだろ? あまり澄花を困らせるなよ……」
「司、お前は黙ってろ。俺は澄花と話をしているんだ」
助け舟を出すが、父さんに律せられてしまう。
真剣な目でこちらを貫いてくる父さんに、俺はたじろいでしまった。
「澄花、お前にひとつだけ尋ねたいことがある。嘘偽りなく本心で答えてくれるか?」
視線を戻し、彼女に向かって了解を求める父さん。
澄花は息を呑んで頷く。すると突然、横から母さんがテーブルに手をついて立ち上がった。
「澄花っ! あなた本当に司と結婚するのねっ!?」
「え、結婚……?」
「イエスかノーで答えなさい! 澄花、どうなのっ!?」
「え、え……?」
父さん以上に血眼な形相で問いだたす母さんに対し、澄花は困惑ばかりになっていた。
身内でも初めて見る母さんの知らない一面、隣にいた俺も同様に驚いてしまう。
「お、おい佳代子、空気的に俺が訊く流れだったろ……」
「…………正嗣さん、あれが澄花にもバレてしまったら、面目潰れもいいところですよね?」
「そ―――! れ、は……」
昨日の晩、俺が部屋を訪ねた際に起こってしまった悲しい事件。
獅童家の偉大なる当主が膝枕されていたとなれば、澄花の信頼が一気に崩れてしまうことに。
一度目のトラウマを思い出したのか、父さんは黙り込んでしまった。
「―――ねえ、司」
その様子を眺めていると、隣から澄花が小さく囁いてきた。
「なんだよ? 今のうちに退出するなら止めた方がいいと思うけど?」
「違うって、そんなことはどうでもいいの。ただ……」
「ただ?」
途中で言葉を摘む彼女に疑問を抱くが、それはすぐに解消されることになる。
そして、それが自らの首を絞めることにも気がつくのだった。
「…………結婚するって報告したの? 私に相談もせずに? 勝手に?」
ジト目で睨んでくる澄花。
その瞬間、俺は激しい呵責に襲われることになってしまった。
以前に交わした約束、それはこの関係を二人だけの秘密にするということ。
必要だったとはいえ、それを自分で勝手に決めて行動してしまった。
―――お、俺、澄花に何も相談してない。
苦労してようやく築かれた信頼に今、亀裂が入ろうとしていた。
「え?」
父さんの一言を受け、他の使用人らと共にその場を後にしようとしていた澄花は驚きの声を出す。
獅童家の食卓はいつも家族三人で囲むのが常であり、食事の給仕を終えた使用人たちは足早に退席するのが規則となっている。
が、今日は例外的にもう一人加わることになるらしい。
「な、なんでしょうか?」
俺の座っている席の隣で佇む澄花はそう尋ねると、緊張した面持ちで父さんの言葉を待っていた。
尊大な装飾品が並ぶ室内で隣り合う俺と澄花、そしてテーブルの対極に腰かける父さんと母さん。
まるで三者面談のような重圧感がひしひしと押し迫ってくる。
「父さん、澄花は給仕で忙しいんだから時間がある時にゆっくり聞けばいいだろ? あまり澄花を困らせるなよ……」
「司、お前は黙ってろ。俺は澄花と話をしているんだ」
助け舟を出すが、父さんに律せられてしまう。
真剣な目でこちらを貫いてくる父さんに、俺はたじろいでしまった。
「澄花、お前にひとつだけ尋ねたいことがある。嘘偽りなく本心で答えてくれるか?」
視線を戻し、彼女に向かって了解を求める父さん。
澄花は息を呑んで頷く。すると突然、横から母さんがテーブルに手をついて立ち上がった。
「澄花っ! あなた本当に司と結婚するのねっ!?」
「え、結婚……?」
「イエスかノーで答えなさい! 澄花、どうなのっ!?」
「え、え……?」
父さん以上に血眼な形相で問いだたす母さんに対し、澄花は困惑ばかりになっていた。
身内でも初めて見る母さんの知らない一面、隣にいた俺も同様に驚いてしまう。
「お、おい佳代子、空気的に俺が訊く流れだったろ……」
「…………正嗣さん、あれが澄花にもバレてしまったら、面目潰れもいいところですよね?」
「そ―――! れ、は……」
昨日の晩、俺が部屋を訪ねた際に起こってしまった悲しい事件。
獅童家の偉大なる当主が膝枕されていたとなれば、澄花の信頼が一気に崩れてしまうことに。
一度目のトラウマを思い出したのか、父さんは黙り込んでしまった。
「―――ねえ、司」
その様子を眺めていると、隣から澄花が小さく囁いてきた。
「なんだよ? 今のうちに退出するなら止めた方がいいと思うけど?」
「違うって、そんなことはどうでもいいの。ただ……」
「ただ?」
途中で言葉を摘む彼女に疑問を抱くが、それはすぐに解消されることになる。
そして、それが自らの首を絞めることにも気がつくのだった。
「…………結婚するって報告したの? 私に相談もせずに? 勝手に?」
ジト目で睨んでくる澄花。
その瞬間、俺は激しい呵責に襲われることになってしまった。
以前に交わした約束、それはこの関係を二人だけの秘密にするということ。
必要だったとはいえ、それを自分で勝手に決めて行動してしまった。
―――お、俺、澄花に何も相談してない。
苦労してようやく築かれた信頼に今、亀裂が入ろうとしていた。
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